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箱庭の小人たち  作者: アッキー
プロローグ
1/19

0話 見知らぬ世界にて

何か足りないなと、思い付け加えました。

時系列としては1話の前の話で、海岸の世界とは違う世界にいた頃のお話です。

 暗闇の空。

 森の木々を揺らす風が、小枝によって燃え盛っている火を揺らしていく。

 揺れる火を目にしていた者は口を開いた。


「パルパってさ、神様って信じてる?」


 その声音は、大人のように冷淡ではありながら、少女のように高い声である。

 それは夜の環境と内容が相まって静謐な趣きを漂わせた。


「唐突になんなのさ」


 反してパルパと呼ばれた者は、静謐とは違い笑みを含んだ、畏まってはいない声で返答した。

 そんなパルパには、顔を向けず、第一声を発した者は火を見続けている。


「……ふと思ってね」

「それは俺たちをこんな、人里知れぬ森の中で野宿させる運命を与えてくださっているからかい?」

「話をずらさないでよ」

「話す相手が悪いからさ。人に作られた身である俺からしたら、人様の議論ゲームに過ぎない神なんて存在に、てんで興味はないからね」


 パルパは、皮肉混じりにそう語ると、体から生えている四足を用いて、首ならぬ体を振って見せた。


「リリは、神を信じているのかい?」

「どうだろう……ただ、もしいるんだといしたら、憎まずにはいられないかな」


 リリと呼ばれた者はショートボブの髪を耳にかける。

 リリの髪は輝く金髪であり、火に照らされた今、絵のモデルとなるほど、神秘的な雰囲気を纏っていた。


「それは、故郷を離れるきっかけを作ったから?」

「きっかけじゃなくて、原因そのものよ」


 憎々しげに、リリは言葉を発する。

 彼女の紅色の瞳は、前の火を映し出し、赤々と燃えているようであった。


「世界を繋ぐ()()()なんて作るから、私みたいな人が生まれる」

「でも、トビラがあるからこそ、俺たちは()()に囲まれた世界を渡り歩く事ができるだろ」

「トビラが無ければ、そもそも私は故郷に居続ける事が出来たわ。こんな見知らぬ世界の見知らぬ森の中で野宿することもね」


 はぁと、深いため息をリリはつくと、体育座りとなっている自身の腕の中に、顔を埋めた。


「故郷に帰りたい……」


 呟くように出た声は、火によって炙られている小枝が弾ける音に紛れ込む。

 パチパチと、夜の森の中、静かに鳴り響く焚き火の音。その音を一身に浴びるリリとパルパ。

 パルパは、その小さな体と四足を用いて、頭を埋めているリリの肩に乗った。


「……弱気になったって仕方ないさ。やるべき事をやる。それだけだろ」

「……そうね、やるべき事……故郷に帰るために歩み続けなきゃね」


 顔を上げたリリは、肩にいるパルパに目を合わせる。

 彼の小さな体を瞳に映した後、前にある光源となる焚き火に、目を移した。


「絶対に、故郷に帰ってみせるんだから」


 彼女の力強い声は、小枝の弾ける音を上書きするかのように、辺りに響き渡った。

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