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2 サプライズメイドさん理論

2話目です!

「なんだろう?」


 アパート(焼失)に戻ると俺は変な人だかりができている事に気付いた。

 近くの電柱に隠れながら観察して一言。


「怪しい」


 もしも俺が三十代のおじさんだったら怪しいのはむしろ俺で、即通報案件だったけど、助かった。

 今は運よく、だれがどう見ても小学校高学年くらいの女児だから。

 おかげで通りかかった主婦が「あら可愛い~」「今日は学校は休みなのかな~?」と微笑ましく見守る程度で済んでいる。

 だが俺の見つめる先はそれ以上の異様さだった。


 アパート周辺には黒い服に黒いサングラスのあからさまに怪しい人が大勢いたのだ。


「カ●ジの撮影かな?」


 なろうで連載しているというのは聞いた事がないので多分無関係だろう。でも黒服ばかりが集まって何かしているというのは今時それ以外の作品で見たことがない、異質な光景だった。

 ちなみに黒服は皆男ではなく女性だった。


 なんだ、別作品か……。


 黒服達はお互いに連携を取りながら何か調査しているようだった。

 敷地内の足跡について話し合ったり、焼け残った部屋を頻繁に出入りしていた。更には重機をアパート前に着けて、衝突したトラックを回収しようともしていた。


「あの事故に関係がある人達なんだろうか。警察っぽい人はいないのになんで……?」


 あまりにも異様なので、近所の人も誰も近寄らず遠巻きに見守るだけ。おかげで謎の集団は黒一色だった、一人を除いて。


 二十代後半。美人で、華やかなスーツを着た女社長っぽい人だった。

 あとめっちゃ胸がでかい。

 遠目に見る限りではどの黒服よりもでかかった。俺の知る限り、多分この世界に存在するキャラクター設定で一番の大きさなのでは……?

 しばらく見た限り、どうやら黒服を動かしているのはその女性らしかった。


「いったい何者なんだ……あのThe女社長は……」


 見たことがないお胸、いや顔だ……。あんな綺麗な人だったら、一度見てれば覚えていてもおかしくないと思うけど、全く記憶にない。いやそれにしても大きいな……。


「おい、そこのツンとした目の可愛い女の子! 何を見ている!」

「しまった!」


 黒服と女社長があまりにも怪しすぎて夢中で見ていたら、いつのまにか電柱からかなり身を乗り出していたようだ。子供っぽくてポイントが高いけど、今はできれば抑えておきたかった。


「くっ……!」

「待ちなさい、少年探偵団!」


 確かに子供化してるけども!


 俺は咄嗟に振り返って走り出した。

 後ろから乱暴な声が追ってくる。

 俺はこの町で生まれ育った訳じゃないので土地勘はないけど、それでもまだアパート周辺は道が分かる方だ。見失いやすいようできるだけ広い道に出ず、視界を切るように道を選ぶ。


 時には子供の小ささを生かして隠れ、時には看板になりきる。ある時にはご近所さんの庭にお邪魔し、またある時には優しいお婆ちゃんからおやつをごちそうになって世間話に花を咲かせた。

 しかし、そんな抵抗がいつまでも続くはずもなく……。


「くっ……ここまでか」


 元居た住宅街から随分離れた、商店街の路地裏で俺は圧倒的人数の黒服に追い詰められた。


「貴女、あのアパートで起きたことについて何か知っていそうね」

「も、黙秘権を行使します……」

「子供がそんなませた言葉を使うか! 観念して、捕まりなさいッ!!!!」


 行け、という号令と同時、飛び掛かった。

 前後左右上下――四方八方だけでなく空からも、黒服達が俺を捕まえんと強襲する。

 忍者かな?


 ありえない。

 あまりの身体能力に驚愕。

 こんな奴らに幼女おれが対抗できるはずがない。対抗できるのはそれこそ本当に忍者くらいだ。

 俺は抵抗する事すら忘れて、迫りくる黒服をただ無防備に見ている事しかできなかった。


 刹那。

 響く鈍い音。

 同時、一陣の風が目の前から吹き荒れる。

 紙吹雪のように一瞬で飛ばされる黒服。


 誰かが叫ぶ。


「何が起きた……!?」


 俺だけを視認していた黒服には分らなかったらしいが、俺は偶然にも見えていた。

 突如として現れた九つの残像。

 それらが空中で黒服達を弾き飛ばし、目の前に収束したのを。


 まさか、本当に、ニンジャが来たのか!?

 ニンジャナンデ!?

 サプライズニンジャ理論でも起きたとでも!?!?!?!?!?


 否!


 俺は刮目した。

 遅れてふわりと長い衣装を揺らして一礼した彼女を。

 俺と黒服の間に、白と黒を身にまとった女性が恭しく現れたのだ。


「私はただの、通りすがりのメイドです」


 サプライズメイドさん理論の爆誕である。

もう一話いきましょう

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