17話:株投資研究会の初会合
1990年3月30日15時過ぎにケイトと本田が来ると佐野が既に来て長方形に20人まで座れるように長机を並べ長椅子を入れた。11時に11人が集まり11時10分に15人が集まり女性が7人、男性8人の顔ぶれだった。そして佐野が司会をして自分から自己紹介した。
ソニー株を数回売買して収益は1千万円位かなと言った。すると男性から挨拶をおねがしますと言い、次々と挨拶した。農家、商店をしながら株投資をして50万円位の投資で旅行代を稼いでると言う中高年が多かった。
女性に、かわり最初の派手な衣装の化粧の濃い40代と思しき女性が亡き夫から株投資を教えてもらい利益は5千万円程ですが損することも多いので負けない投資を教えていただきたいと言うと、みな驚いた様な顔をした。
その後、亭主の稼ぎだけでは良い暮らしできないので株で10万円位の利益を得てますという人奥様方も多かった。その他、投資信託で着実に増やしたけれど、もっと増やしたいので株を勉強したいとか女性の方がまともな投資経験者が多く、男性は博打の様な株取引が多い事がわかった。
するとケイトが立ち上がり、ホワイトボードにグラフを書いて株というものは、この要因、上がり下がりが多いと言い曲線の上部と下部近くに横の直線を書いて、こっから下で買い、こっから上で売れば儲かると、少し荒っぽいが、理論的なこと言うと、男子達が、なる程ねと、うなずいた。
投資というものは会社の仕事が何か、その会社が儲かっているかどうかをROE、自己資本利益率、計算式は当期純利益を、自己資本で割って100をかける、つまり自己資本で、どれだけ稼いだかという数字が高いほど効率的に儲けてる優良企業。
また株価が高いか安いのかを見るのがPER、株価収益率と言って株価を1株当たりの純利益で割ったもの。この数字が小さいと分母の株価が小さい、つまり割安株で買う対象になり大きいと高過ぎるから買っては駄目とわかる。
最後にPBR、株価純資産倍率、株価を一株当たりの純資産で割ったもの、これもPERと同じで分子の株価が小さいと割安、大きいと割高となると説明すると、大きな歓声と、ため息がでた。つまり、「すげーな」と「難しいな」と言う意思表示だった。
この説明を聞いて、男性達は、このボインのねーちゃん、よく知ってる、「もしかして儲けさせてくれるのと、ちゃう」と心をときめかせた。
女性達は、「何よ、あんたなんかに負けないわよファイトを燃やした様だ」。
どっちにしろ宣伝効果は絶大で男性陣が、ねーちゃん、また教えてくれよと言わんばかりだった。そして知り合いも知識がないから連れてきても良いかと言い、お茶、紅茶、珈琲とせんべい、団子があったら最高だけどなと言うと、人数が集まれば考えますと佐野が言った。
初回の会合としては、ケイトの説明は、上出来であった。その結果、メンバーの株投資へのやる気を十分に引き出してくれ、仲間も連れてきそうだと佐野は内心、感心した。最後に佐野が、私もケイトほど理論的ではありませんが、投資経験は長いと言った。
1973年、早稲田大学理工学部電子工学を出てソニー本社で営業部に配属され業績を上げて頑張りすぎて、身体を壊し1975年、秋に退社し、1974年にはじめてソニー株を買い、その後6回の売買で十分儲けさせてもらったと言った。
すると、ある男性から一番最近はと聞かれ1989年9400円で成り行きで売ったというと素晴らしいと言ってくれた。そのうちに1時間が経ち2時となり解散となったが帰り際、最後に口を開いた男性が彼は本物だよと、みんなに言うと驚いた様に、みんなが佐野の顔をじっと見つめた。