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てぃてぃーのかね

いつもありがとうございます!

ユーリ視点ラストです。説明っぽい展開続きでスミマセン……。次回から恐らく日常パートに戻りますヾ(●´∇`●)ノヤッター





「なんなのかしら、ドレイク。度々呼び出して。この前も来てやったのに今度は一体なんの用なの」

「ティティー様。お言葉ですが以前お呼び立てしたのは20年前。ダミアンとアリエルの婚姻の際です」

「嘘!あれからもう20年も経っていたの?怖いわ〜」




鐘を鳴らした途端現れたのは一人の少女。

新緑色の床まで届く髪と、同じ色の澄んだ瞳。透けるような白い肌。……え、待ってくれ、今どこから現れた??


まるでそれは精霊かなにかかのような……

いや、そんな、馬鹿な。精霊とかいうとんでも生物がそんなにひょこひょこ居てたまるか。

ただでさえ、僕の婚約者は得体の知れない謎の生きも……精霊のハーフだと言うのに。


そもそもこの20年間生きてきて一度も遭遇したことがないんだぞ?



「あら? そこにいるのはダミアン!! 隣はアリエルの娘かしら! まるでアリエルの生き写しのようだわ!」

「ティティー様、お久しぶりです。あの、もしアリエルに会ったら帰ってくるよう言ってくれません?」

「……」



公爵の話はティティー様とやらに綺麗に無視された。先程まで再会を喜んでいた風だったのに何故そんな突然そっぽを向くんだ。もしかして実は嫌いなのだろうか。そして公爵はまたもや泣いていた。



「あの陛下、その方は……?」


おずおず、と口を出した僕にティティー様とやらが丸い宝石のような瞳を向ける。

それから僕の婚約者(仮)とも目が合った。彼女も訳が分かってないらしく、顔を床に押し付けられ頬が潰れたまま、理解が追いつかないと顔に書いてある。



「この方はティティー様。王城の裏にある千年樹の精霊だ」

「お前はドレイクの息子かしら。陰湿そうなところがそっくりだわ」

「え、」

「これは三男のユーリウスです。そしてあっちが次男のイレネー」

「まあ、イレネー??女の子のような名前だわ。お前はあまりドレイクに似ていないのね」

「ははは、よく言われます」



い、陰湿……?

この人……いや、精霊さらっとキツくないだろうか。そしてイレネー様が似てない??そうかな。見た目的にはかなり陛下に似てると思うんだけど。というか僕ら兄弟割と似てると評判なんだけど。



「それから、あれが長男のジェラルドです。私の次に貴方様と契約することになります」

「ふん、じゃああれが次期国王なのかしら。腹黒そうなところがお前にそっくりだわ」

「お褒めに預かり光栄です。ティティー様」



ジェラルド様はそう言って、膝をついた。……は、腹黒……。というか褒めていない、ような……。

……ん? 契約?? ということはティティー様というのは代々時期国王と契約しているという事なのか? だからあんなに偉そ……いや、偉いんだろうけど。

………え、待ってくれ。千年樹って言ったか? 千年樹ってあの千年は生きてるって言うあの国宝の木の事だろうか? ということは、千年は、生きてる、ということだろうか。だから国王をお前呼ばわりで……。いやいや、そんな訳が……。



「ジェラルド様」

「ん?なんだい、ユーリ」

「ジェラルド様はティティー様のことをご存知で……?」

「まあ、話だけはね。お目にかかるのは初めてだけど……。精霊とトルヴァン王家を繋ぐ存在でなんでも建国当時から生きておられるとか」

「け、建国当時!?」


そんな、じゃあ本当に千年近くは生きているのかもしれない。

だ、だとしたら、フェリル・マーデリックも……。


チラリ、とフェリル・マーデリックの方を見てみると彼女はもはや訳が分からなすぎて魂が抜けたみたいな間抜けな顔をしていた。見なかったことにしよう。


あんなのが、そんなに神秘的な生態をしているわけが無いし。



「それで? お前はティティーとアリエルの娘を会わせるために呼んでくれたのかしら。たまには気が利くことをするものね」

「いいえ、そうでは無く。……この国の加護は減っているのでしょうか」



陛下の言葉に丸い瞳が細められ眉が上がる。ティティー様は緩慢な動作で腕を組み、テーブルの上に腰を下ろした。



「さあ、どうかしら。別に精霊はお前たちのためにこの国を守っているわけじゃないのよ。精霊は自由な存在。精霊はこの国を守り自然を豊かにする。その代わり人間は精霊の自由と自然を守る。そういう約束でしょう」

「それは、重々承知しております。しかし、他国の侵略を許せば我々はもとより、貴女方だって都合が悪いでしょう。数ヶ月前他国の者が無断で一人、迷い込んでしまいました」



小首を傾げたティティー様に陛下が緊迫した声音で静かに告げる。

その途中どこかでくしゃみの音がすると思ったら、やはりフェリル・マーデリックだった。僕はなぜだか恥ずかしすぎて見なかった振りをした。



「数ヶ月前? ああ、それはあれね。風の精霊が二人、お休みしていたのよ。あら、たまたまその時期に入り込んだのね。運がいい人間だわ」

「お、お休み……」

「ティティーはこの国中に根を張っているから色々なことを知ってるわ。だからそれを教えてあげるけど、ティティー達はお前達に従うわけじゃないわ。そうでしょドレイク。お前達人間のようにお仕事じゃないのよ。あくまで精霊は自分の生きたいように生きているだけ。その中で自分達の居場所を守ることを少しだけしているの」

「はい、その通りです。我々人間は貴女方の守る土地に住まわせていただいているだけですから」

「分かっていればいいの。まあ、彼女達にはそれとなく伝えておくわ。それで、話はそれだけかしら?」

「はい、わざわざありがとうございました」



膝をついた陛下に倣い、僕も慌てて膝をつき頭を下げる。

周りを見ると全ての人間がそうしていた。


まさか、本当にこの目で精霊を見る日が来ようとは……。

わがままそうな少女だけどたしかに神秘的で、とても人間には見えない。

フェリル・マーデリックもある意味僕と同じ生き物とは思えないけど(話が通じないし)。


……というか、この国はそんな不安定で曖昧なものに頼って今までこの平和を享受してきたのか。

恐ろしく平和ボケして恐ろしく危うい国じゃないか……。そんな気まぐれめいたことに頼っているだなんて。しかし精霊の力の強大さを証明したのも確かだ。もし、その力を無くしてしまったら、もしその力が敵に回ったとしたら…?



これは、ザイオンとの同盟を前向きに考えた方が余程建設的で安全なのではないだろうか。



どこか薄ら寒さを感じ生唾を飲み込む。




「ねえ、それより、この城とても臭いわ。まるで精霊が腐ったような匂いね。前はそんなこと無かったのに」

「え??」


不思議そうにティティー様が呟きこちらを向く。


初めに、フェリル・マーデリックの方に視線を向け、それから僕の方へ……。



「わ、私、ですか?」

「……? 気のせいかしら」



ティティー様はもう一度小首を傾げてそれから欠伸を噛み殺すと空気のようにサッと消えていなくなった。




……く、臭…?? くんくんと自分を嗅いでみた僕にフェリル・マーデリックが「まさか手洗ってないのか」と言ってきた。ふざけるな、僕は割と頻繁に手を洗う方だ。しょっちゅう泥だらけのボロボロになっている君にだけは言われたくない。


「精霊って腐るのか……」

「フェリル様はもう頭が腐っ、溶けていらっしゃるのでご心配なさらなくとも大丈夫ですよ」

「……シーフー、お前本当は私の事嫌いだろ」












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