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しゅうえん





あああ、もういやだ。

わたしが何か悪いことをしたのか? なんでこんな恐ろしい事態になっているのだろう。


……あ、全部自業自得か。


簡単に思い至った自分にもう自分でがっかりした。


なぜ、なにがどうしたらユーリウス殿下の腕に抱かれている状況になってしまうのだろう。


それに“私の愛する婚約者です”って一体誰のことだ。誰が誰を愛したって言うんだ。


……いや全部自分のせいだわ。

この後のことが恐ろしくて仕方ない。ザイオンの王太子に多分わたしは会ってはいけなかったし、ペラペラと話していたこと全てが良くないことだ。

なんで未だにザイオンの王太子がわたしに気づいていないのかは分からないが、そういえば赤毛に茶色の目。ザイオン人でしかも貴族以上の身分の人間。

……なぜわたしは気が付かなかったのだ。

というかなぜ王太子があんなところにいるんだ!


クロウじゃなかったのか。なんで従者をクロウって呼ぶんだ……。まあ普通に考えてそこら辺の娘に王太子が本名名乗る訳もない! はい、分かってます。わたしがばかでした!


これから先が恐ろしすぎる……。一体どんな顔をしてわたしは公にザイオンの王太子に会ってどんな顔をして結婚をお断りすればいいのだ。

想い人のいるユーリウス殿下にこうまで言わせてしまって、この目の笑ってない笑顔を貼り付けっぱなしの男にこれからどうやって接すれば……?

そしてなにより、恐ろしいのは……我が公爵家の執事兼お世話係のシーフーだ……。


顔面蒼白、気分最悪を通り越して涙まで出てきそうだ。

ぷるぷる震えながら涙目になるわたしに何を思ったのか、クロウ……改め王太子が悲痛そうな顔をした。


いや……なんていうか、本当にすみません。数ヶ月前のことも、さっきまでのことも本当にすみません。貴方を災難にあわせたのはこのわたしです。

わたしは貴方の恋を応援できません。全くもって1ミリたりとも。

ネリーと本当にどうこうなりたいのだったらそれはもう、あの、全力で応援するから……。


更に罪悪感から目を逸らしたわたしに何を思ったのか王太子は吊り気味の茶色の瞳を細くして笑顔を作り、特徴的な犬歯をのぞかせた。



「ユーリウス殿下。彼女を愛しているって?」

「はい、なによりも」

「……ふうーん。じゃあフェリル嬢が鈍いだけなのか、……まあ鈍そうだけど。それとも君の愛っていうのがお門違いなものなのか」

「……どういう意味ですか?」


何故だか笑顔を張りつけた王族同士が笑ってない瞳で冷気を噴出している気がする。

どうでもいいけどさっさと離してくれないか。引き剥がしてしまってもいいのだろうか。イルならともかくユーリウス殿下の腕の中とか多分容易に脱出できるだろう。



「いいや、何も無いんだ。ただザイオンでいう愛というものはなによりも大切でねー。ザイオン人は懐に入れた人間をそれはそれは大切にする」

「存じ上げております」

「婚約者にきちんと愛されているって実感を与えてあげられていないのなら、それは愛じゃないかもしれないねー」

「……いったいなんの話しでしょう」

「政略結婚は重要だから仕方がない。我が国でもそう。けれど一生共に支え合うパートナーとして互いを尊重し合うことはなによりも重要だと思うなあ。王族であればなおさら、ね」



にやりと口の端を持ち上げた王太子にわたしの顔色は多分もう土と同じくらいにまでなっていたのでは無いだろうか。


多分……あれだ。なんか勘違いをしていらっしゃる……。わたしが愛し愛され結ばれたいだのペラペラ話してしまったから、本意ではない結婚を迫られているとかなんとか、多分彼は思っていたりするのかも、しれない……。

ああ、すみません。本当に、ごめんなさい。そうじゃないんです……いろいろと。


対してユーリウス殿下はわたしに触れている手を強ばらせ、しかもふるふる震えていらっしゃる。おこっ、怒っている……というかもう、多分、激怒している……。

怖すぎて顔が見れないが多分凍てつくような目をして笑っているんだろう。ヒィ……。巻き込んでしまって本当にすみません……。


「ありがとうございます。でもご心配には及びません」

「そう? それならいいんだけどー」

「王太子殿下の方こそ今回の訪問には大切な意味があるとか……。きちんと真実を見極めて、笑顔で帰国できることを願っております」

「……ありがとう、と言っておくべきか? まあ、その子はオレの将来の親族になる予定だから大切にしてあげてねー」

「言われずとも」



………………いや、あの、親族、なりません。絶対。




二人はニコニコとそれからも数回会話を続けたが、内容はイマイチ入ってこなかった。

最終的には可哀想なほど狼狽えた真っ青の宰相に、どうにか連れていかれて終焉を迎えた。






「……フェリル・マーデリック」

「っ!」



あと、ついでに言えば……



「詳しく話を聞かせてもらいましょうか」

「…………よ、ヨロコンデ」




わたしも、終わるかもしれない……。


素晴らしい笑顔のユーリウス殿下のまったく笑わない冷たい瞳を見て至極冷静にそう思ったのだった。









いつもありがとうございます!

なんかいろいろ面ど……大変なことになってますね! 色んな意味で作者的には王太子がかわいそうです。

たくさんの評価、ブクマ、ご感想ありがとうございます(´;ω;`)

にやにやしながら感想読ませていただいております!

イル人気が凄いですがまだ出せなくて申し訳ないです……もうちょっとしたら多分出てくるかと……。

アホな連中ばっかりですが、これからもどうぞよろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] >ネリーと本当にどうこうなりたいのだったらそれはもう、あの、全力で応援するから……。 ネリーの意思ーーーーー!!!w 初回のザイオン王太子vsユーリウス殿下の冷戦対決は引き分けっぽいです…
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