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魔法学園物語~サー・トールの恋愛事情~  作者: ゆめあき千路
 (二)魔の風に吹き閉ざされし奥津城で二人の乙女は宴にとどまる

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38/60

 第一間奏曲

 魔法のオルゴールは鳴り続けている。


 サー・トールとアイルズが入城した後も、曲想が次へ移っても、美しい音色に変調はない。


「さて、この間に、魔法のオルゴールを診るか」


 トイズマスターは魔法の王城の後ろへ回った。


 魔法の王城は、どうして動き出したのか?


 その理由が判明しないまま、稼働中の魔法プログラムを(いじ)ることは危険だ。魔法で構築された仮想世界にうかつな刺激を与えれば、中に居る人間にどんな影響が出るかわからない。


 だが、オルゴールの音を出す機械の部分は別だ。そのメカニズムの、魔法のプログラムを司る基盤のネジをいくつか手動で回せば、次の曲が演奏されないようにセッティングをし直せる。


「こんな事態は初めてだからなあ。しばらく()ったらかしにしていたから、ホコリでも入ってどこかが詰まったのかな?」


 トイズマスターはぼやきながら、台座のカバーを手前に引っ張った。


 魔法の王城の台座は高さ30センチほど。パカッと開いた中は、キラキラ、虹色の光で満ちている。金色の歯車や大小の水晶の棒。天秤みたいなもの、何本もの鎖。それらが精妙にして精緻(せいち)に組み上げられ、真ん中には、細い金属板が並んでいる。櫛状(コームじよう)になったその金属板の向こう側で長い円筒(シリンダー)が回転している。


 魔法のオルゴールの楽器部分、シリンダー・ムーブメントだ。


 シリンダー表面には突起があり、金属の櫛歯(コームティース)を弾いて音を出す。シリンダー表面の突起は、プログラムされた曲の譜面に合わせて変化していく。魔法で調律された金属の櫛歯は、あたかもクリスタルガラスのベルを鳴らすような、澄みきった音色だ。こうして奏でられるオルゴールのメロディーは、魔法の仮想世界を支える重要な役割を担っている。


 トイズマスターは首を傾げながら、魔法のオルゴールを検分した。


「ふむ、ネジも歯車の噛み合わせも、異常は見られない……と。どこかにネジの緩みでもあるかと思ったのに……。ん? この石は……」


 魔法のオルゴールの近くに()め込まれた丸い水晶石が、白く光っている。部品のすべてが魔法を帯びているから、光るのは不思議ではない。だが、これは設計した光り方ではない。よく見れば、水晶石の白い光は、光の筋をあちこちへ伸ばしている。その光は、台座に組み込まれた部品すべてに影響を与えている!


「なぜ、こんなふうに……?」


 トイズマスターは、光る水晶石へ目を凝らした。


 部品の材料に、何か変なモノが混じっていたのだろうか。いや、魔法玩具は安全第一、小さなネジの1本まで、念を入れて確認してから使っている。魔法の王城は特に高価な材料ばかりだから、途中で変質するようなおかしな素材は使っていなかったはずだ。


 これではネジを多少回した程度では調整できそうにない……。


 トイズマスターは、作業台に並べた工具のひとつを手に取った。先端の細い精密ドライバーに似た魔法玩具専用の工具だ。


 稼働している魔法のオルゴールは分解できない。魔法で構築された仮想世界が、中に居る人間もろとも四散する危険がある。だが、魔法のプログラムに直接影響しない機械構造部分なら、時間によっては稼働していない箇所もある。そこの石を1つずつ取り外し、別の魔法プログラムを帯びさせてから戻していけば、手動での調整が効くはずだ。


 トイズマスターは工具の先端で、石を固定している留め具へ慎重に触れた。

 とたん、右手に、ビリッ! と、鋭い痛みが走った。


「うわあッ!?」


 トイズマスターは手を引っ込め、工具を落とした。指先がビリビリと痺れている。まるでひどい静電気が起こったようだ。涙で滲む視界を凝らせば、外そうとしていた石の周囲で、オレンジ色の光がチカチカしている。魔法の火花だ。


「バカな!? こんなふうになるものなんて、使っていないぞ!」


 その石を中心に台座の中に満ちていた7色の光がグルグルと渦巻き始めた。光の色が入り混じっていく。


 突起に弾かれて音を出す櫛歯の近くで、小さな稲妻がいくつも閃いた。まるで『触るな!』と威嚇(いかく)しているように。


「たいへんだ、すぐ子供たちを出さないと!」


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