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魔法学園物語~サー・トールの恋愛事情~  作者: ゆめあき千路
 (一)栄光の記念の品に比べれば君無くしては思い知るべき

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   魔法のドールハウスとは……

 魔法玩具店カラクリの店主、魔法玩具師(トイズマスター)ニザエモンさんは、店の奥にある工房へ案内してくれた。


「ただし、超高額な特注のオーダーメイド品はさすがに対象外だよ。引き換え券の対象は、あくまでも表の店内にある展示品が基準だからね」


 と、ニザエモンさんは先制して釘を刺してきた。


 この工房には、『現実のお城よりも高額な特注オーダーメイド品』が、あるのだそうだ。


 境海世界の大富豪には魔法玩具のコレクターがいて、金や銀や本物の宝石を使った玩具を特別注文する。そういった魔法玩具は、必要な部品がたくさんある。


 ニザエモンさんはたいがい自分で何でも細工するが、ダイヤなど硬度の高い宝石類の加工には専門職人の手を借りることもある。

 そうするとニザエモンさん個人の技術料や制作費より、材料費の方が割高になってしまうそうだ。


 ウィザードアスレチック競技会の優勝賞品『魔法玩具引き換え券』は、ニザエモンさんがリリィーナ教官達と相談して決めたという。


 えらく太っ腹だなー、と尊敬したが、多次元管理局から必要経費がキチンともらえるから損はしないのだとか。


 価格交渉は重要なことだから、ニザエモンさんは念入りに打ち合わせをした。


 なのに、出来上がってきた引き換え券は『特注オーダーメイド品は除く』という文言(もんごん)(はぶ)かれていた。


「じつは、『金額に上限額無し』を書こうと提案してきたのは、リリィーナだったんだよね……」


 溜め息と共にニザエモンさんは語った。どうやらウィザードアスレチックの運営に携わっていたリリィーナ教官の悪戯(いたずら)だったらしい。


 またリリィーナ教官か。そんなことをして何か得をする事があるのだろうか、じつに不思議な人だな……。


 だから不思議探偵ってわけでは、ないだろうに。




 ローズマリーは、カラクリを訪れるのが好きだ。


 もっと詳しく言えば、カラクリのショーウィンドに飾ってあるドールハウスを眺めるのが大好きだ。


 しかも、カラクリのドールハウスは、人間が小さくなって中へ入れるという『魔法のドールハウス』だ。子ども用のオモチャだから親が見守れるよう、ドールハウスの中で小さくなって遊んでいる様子を外から眺めることもできる。


 魔法の効果時間は、内蔵されている魔法のオルゴールが鳴り終わるまで。メロディーが聞こえる間、小さくなった持ち主は精巧なミニチュアの世界を実際に使用できる。子どもの頃にはそんな空想を誰でも一度はしたことがあるだろう、その夢が叶う。まさしく夢の玩具だ。


 カラクリのショーウィンドに飾ってあるドールハウスは3つ。


『カントリーキッチン』は、キッチンシンクの蛇口をひねれば本物の水が出るし、オーブンの火も付けられる。タイルの壁に飾ってあるナベやフライパンは、火に掛けられる本物の鉄や銅製だ。


 全長1センチの包丁の刃は本当に切れるし、泡立て器やボールや、ケーキ型まで揃っている。キャビネットのガラス棚には陶器の食器が並べられ、引き出しにはピンセットでなければ摘まめない銀製のフォークやスプーンなど、カトラリー一式が入っている。


 食材を持ち込めば、調理も可能だ。


 自分が小さくなる前に、魔法のドールハウスの中へ必要な食材を並べておけばいい。バターや小麦粉、お砂糖は、大スプーン1杯分で(つぼ)がいっぱいになる。岩塩やコショウは2~3粒以上はビンに入らない。

 たとえば、普通のリンゴが1個あれば、ドールハウスのキッチンでならアップルパイ100人分の材料になる。


 しかし、わざわざミニチュアサイズになってまで、小さなお菓子を作って食べる意味があるのかな。僕にはよくわからない……。


『ドレッサールーム』には大きな白い鏡台と、彫刻の施されたビクトリアンスタイルのチェスト、人形用のドレスが詰まったクローゼットがある。


 宝石箱のネックレスやイヤリングは細かすぎて、ピンセットでしか扱えない。それが指輪となると、極小サイズのビーズ1個に等しい。どんな細工か見るためには虫眼鏡が必要だ。


 万が一、床に落としでもしたら、二度と拾えないだろう。


 人形やドレス、アクセサリーなどの備品は別売りがたくさんあり、好きなデザインをコレクションできる。


 ローズマリーによると、こういう乙女チックな部屋は女子の夢だとか。


 ミニチュアのドレスやアクセサリーの方が本当に僕らが使える実用的な物よりも高価だなんて、変な感覚だ……。


『午後のティールーム』は、飾り棚にテーブルとチェア、いかにも女の子が欲しがりそうなミニチュア陶器のティーセットが揃っている。


 ローズマリーもエリカも、ミニチュア食器が大好きだという。

 だったら、本物の茶器一式を贈ろうかと打診してみたが、ミニチュア食器と本物の茶器は女子にとって好きな感覚が別物だそうだ。でも、魔法のドールハウスなら実際に使用もできるから本物と同じじゃないのかな?


 どうも僕には、ローズマリーが言う本物とミニチュアの感覚の違いとやらが、理解できないや……。


 ローズマリーの欲しい魔法のドールハウスは、この3点のどれかだと僕は考えている。

 じつは、まだ本命を聞いていない。


 あるいは、最初から空のドールハウス用ルームを買い、中身のルームインテリアから選べば、自分好みのドールハウスを作れる。ただ、それだとセットではなくバラ売りの小物を揃えることになるから、ドールハウスの箱以外は別売りだ。


 魔法玩具引き換え券は1枚で玩具1点と引き換えだ。外側の箱だけと引き換えるのなんて、バカバカしいものね。


 ローズマリーは(つつ)ましい。


 普段から何かを欲しがるということをほとんどしない。


 ローズマリーの親友であるエリカは、アイルズと一緒に買い物に出る度、アクセサリーや小さなルームインテリアや、こまごました品をしょっちゅう買っているのに、ローズマリーがそんなふうに買い物をしているところは見たことが無い。


 ゆっくり選んでもらえばいい、その方がローズマリーも楽しいだろうと、この時の僕は、非常に楽観的に考えていた。




「カタログもあるけど、注文すると時間がかかるよ」


 ニザエモンさんによると、魔法玩具の種類でも違うが、完成までの期間は最短で3ヵ月~半年だ。現在作業中の仕事が優先だから、僕らの注文品は順番通りの後回しになる。


 そんなに待てるほど、僕らは気長じゃない。


 だから、この場で購入可能な、完成品から選ぶことにした。


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