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お久しぶりなのです。

「やっぱり、おいしいですね、……いい宿にしてくれて、ありがとうございます」

「いや、礼はいい。……私だって楽しみにしてたからな」


 ほんのりと顔を赤らめているのがわかってしまうほどに、一緒に過ごしてきた時間は短くはない。初めて会ったときと同じであんまり表情を見せてくれないけれど、雰囲気は優しくなった。


「そうなんですね、……なんか嬉しいです、好きな人に、大事にしてもらえてるんだなって」

「それは、……私が言うことだから」

「もう……、邑さんって、私のこと大好きなんですね」

「当たり前だろ、それくらい」


 話してる私ですら、口の中の食べ物が全部砂糖になったんじゃないかってくらいに甘い。自然と顔がほころんでしまって、ほっぺが溶けていきそう。

 幸せな気持ちのままだと、何だっておいしく感じる。私自身人よりは食べるほうだとは思ってるけど、それでも箸が止まらなくなる。これまでも楽しくて、この後も楽しみで、こんなに幸せでいいのかなってくらい。普段あんまり食べない邑さんも、箸の進む手が止まらない。


「そういえば、医学部なんだろ?指輪あげたけど、まさか実習の時に着けるわけにはいかないよな?」

「あぁ……、正直考えてませんでした、もらえるなんて思ってなくて」

「それは悪かったな、正直私も浮かれてた」

「いえっ、私だって嬉しかったんですし、……これから二人で考えるのもきっといいですよ」


 いっつも完璧にこなしてるとこしか見たことがないのに、こんな風に抜けてるとこを見るのは初めてかもしれない。今まで知らなかったとこも見つけられるのは、恋人だけの特権みたい、なんて。

 

「二人で、か……それもいいな」

「じゃあ、邑さんが食べ終わったら、ですね。お酒飲んじゃったら、まともに話せないかもしれないですから」

「まあ、それもいいだろ、……もう食べ終わってるのか、早いな」

「邑さんだってもうそろそろじゃないですか、急がないでいいですけど、早く話したいな」


 そう言うと、すぐにご飯を片そうとしてしまう。急かすつもりもなかったのに、……私と話するの、楽しみにしてるからなのからだったらいいな。そしたら、罪悪感も減ってくれるんだけど。

 喉に詰まらせかけたのか水を慌ててのんで、大きく息をつく。


「待たせたな、それじゃあ、どうするか、だな」

「もう、急がなくていいって言ったじゃないですか……」

「だって、智恵の指輪のこと話しておきたいからさ、そうしないと落ち着かないし」


 相変わらず、優しすぎるよ、邑さんは。

 でも、そこがいいとこで、私もその度に好きになってしまうの。

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