1 少女は呪われている
女神が輪廻転生を司り、真龍が破壊を執行するその世界に、エルフの国と呼ばれる場所があった。
そこに住むエルフ達は、女神を信仰し、真龍を崇める者を嫌悪していた。
しかし、同じく女神を信仰する人間や他の種族に対しても、国に入って来ないように結界を施し、エルフ達は閉鎖的な生活を、長く長く続けていた。
王位を継ぐのは女と決まっており、女王は先代から排他的な精神を脈々と受け継いでいた。
今代の女王には、三人の子供がいた。
長子であるオリスは、他の何よりも誇りを優先させる青年であり、短く揃えた太陽のような金髪、きりりとした眉に夕陽のような色の目を持っていた。
末子であるラバテラは、次の女王になることが決まっている。長くしなやかな緑の髪に、空の青の切れ長の目の彼女は、母親にそっくりだった。
そして、オリスの妹であり、ラバテラの姉である、ルカと名を付けられた少女がいた。
少女は真っ白な髪と、丸い紺青色の瞳を持ち、更には、左手の甲に生まれつきの痣があった。
その少女の容姿は、エルフ達にとって最も忌まわしいものだった。
大昔、非常に優秀な、女王になる筈だった姫が、閉鎖的な環境に耐えきれず、エルフ達を裏切り国を捨てた。その姫の容姿の特徴こそ、ルカと同じものだった。
姫は裏切り者として、最大の汚点として着実に後世に伝えられた。
姫と同じ容姿を持つ者は、それまでもこれまでも、存在することはなかった。
もし少女の髪が白でなかったら、目が暗い青でなかったら、痣がなかったら、少女は両親に慈しまれ、兄に可愛がられ、妹に慕われ、次の女王として国民に発表されたであろう。
だが少女は、白の髪と紺青色の目、加えて痣を生まれ持った。
少女を産み落とし目にした時、母親は我を忘れて叫び、父親は酷く顔を強張らせた。
既に教育されていた兄は妹を呪われた子と、忌み子と罵り、周りの者達も嫌悪の念を抱かずにはいられなかった。
ルカは、その姿を晒したその時から、全てを否定されながら生きてきた。
ルカを受け入れる者など、今まで誰一人としていなかった。
「やあ、ちょっと助けてくれんかーねえ」
その奇妙な男と、出会わなければ。




