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夢界交差のハルシオン~未だ彼は見知らぬ少女を追い求める~  作者: 坂木 涼夜
第一章 チーム結成
3/13

002 初めてのMMO~2

◇◇◇◇◇◇


 

 無道迷焦が目を開くとそこはもう自分の部屋では無かった。

 暗い。

 漆黒の闇がどこまでも広がっている。

 そこへ。


『クリエイト・オブ・ハルシオンをプレイして頂きありがとうございます。これからステータスの設定を軽く行います。初期スキルポイントは10。武器を含め、最大5つまでスキルを埋めてください』


 規定通りの電子的な声が闇に響き渡る。

 と、無道の右側にに空きスロットが5つ、その奥に膨大な数のスキル名が現れる。


 【武器スキル】とは取得することでその武器を操作することが可能になるスキル。

 ちなみに取得していないスキル武器を持っていると行動不可になってしまうらしい。

 後は幅広い種類の《スキル》

 能力上昇系から特技系まで様々だ。

 

 それをステータスポイントを消費して取得する。

 レベル1の無道に与えれたステータスポイントは10。

 レベルが上がれば更にポイントが貰え、スロットの数も増えるらしい。

 スキルのレベルは使用度、追加でステータスポイントを振る、相性などで上がり、派生するものも存在する。

 ちなみに魔法はまた別枠で【魔法】と呼ばれる特殊なスキルに分類、レベル5にならないと解放されないようだ。


 無道は詳しい解説のところをスキップ。

 じっくりとは考えずに割り振っていく。

 

「やるのは数時間だけだしこんなもんでいいか」

 

 

 と、名前を記入し、味気ない剣が腰に出現するのを確認し終え、完成したステータスを見る。



“ステータス”

メイジ

レベル1 夢界適性ランク?

HP5000/5000

【剣術】ーーアイアンソード

《武器制限解除》

《攻撃力アップ》


<残り3ポイント><空きスロット2>


 

 《武器制限解除》とは他の武器スキルを取得しなくても武器が操作可能になるスキルだ。

 デメリットは【武器スキル】を取得していない武器そのものの攻撃力が10分の1になるという一見使えないスキルである。

 ちなみにステータスポイント4の消費。


 お気づきだと思うが無道のステータスにはわかりやすい攻撃力やMPが無い、というか不可視。

 これが夢界の特徴である。

 補正なり、経験でステータスは上がるが、プレイヤースキルが大きく求められる仕様なのだ。

 更に一番重要なのが《夢界適性》

 またの名を感情指数と呼び、MPの代わりとなり、ステータスに大きく関わるもの。

 プレイヤー本人の精神力だ。

 これが強いほど不可視パラメータが上昇し、ランクは平均F~Aと右にいくにつれて良い。

 一度戦えばランクがわかる仕組みになっている。


 そして、それをかなり消費して武器の威力を大幅に上げる《ウェポンリリース》とステータスを大幅に強化させる《オーバーライト》が存在する。ちなみに強化の段階は5段階まであり、強化させるほど消費が激しい。

 《ウェポンリリース》の場合一撃に全てを込めるか、少し弱くして連撃を狙うかの選択も勝敗を分けるだろう。


 なぜなら感情指数が無くなると、精神疲労(マインドゼロ)になる。

 ようは気力を無くしてしまい、動けなくなってしまうのだ。

 プレイヤーのこういった駆け引きも戦いでは重要になる。

 

『終了しましたら次はオープニングムービーとなります。スキップされたい方はす


「スキップ」


 迷うことなく、次へと進む。

 すると、短い文章で『異種族たちが襲ってくるグランドクエストに向けて己を磨け』


 その文字を読み終えた末、無道の視界に光が差した。

 


 

◇◇◇◇◇◇


 浮かび出されたマップの一カ所に矢印が置かれている。そこを拡大すると、現在無道がいる闘技場を中心とした街の様子がデータ越しに伺える。

 人の夢によって作り出される夢界だが、ここは運営の技術で維持され続ける中央区。

 巨大なドームの中にあるこの都市には武器屋や料理店、宿泊施設など必要なのから必要なさそうな物まである。

 

 更に無道はマップの範囲を全域に広げる。

 

「ここが中央区。んで、このエリアの外はモンスターがいると。他のエリアはもうほとんど対戦始まってるし......ていうかこんなに夢界やってる人いるんだ」


 ドーム状の中央区を起点に、網目状にエリアが広がっているのがわかった。

 そして、モンスターが出現する所は黒くなっている。

 その数ざっと数千以上。

 対戦型ゲームである夢界だと一対一でも一つのエリアが展開される。チーム戦などもしかり。

 ならば同時刻に数千ものエリアがあるということは夢界はかなり人気と言うことだ。

 秘密裏なゲームのはずなのに。

 

 一通り地形を見終えた無道は石材の椅子から立ち上がる。

 その服装は青色の七分のチャックパーカーに膝までの短パン。腰にあるのは質素な剣。

 だが、異世界の住人と化しているのは無道だけでは無い。

 都市の至る所にいるプレイヤーもあるものは鎧、あるものは特殊繊維のスーツ。

 石造りと機械、中世と未来とが織りなす不思議な街並みに数多のプレイヤーとNPCが散りばめられている。

 

「凄いリアルさ。本当に異世界に来たみたいってのはこの事だね」


 驚きを通り越して感心しか無い無道。

 それもそのはず。

 設定などはゲーム方式だが、ここは夢なのだから。

 

 無道は他の観客同様、闘技場で行われている新人たちの戦いを見る。

 まだ稚拙ながらも激しくぶつかり、火花を散らしあう両者の身体は幾度となく切りつけられている。

 が、もちろん切れるわけでも血が出るわけでも無く、上空に表示されるHPバーが減少するだけだった。

 ここでなら血が嫌いな無道でも思う存分戦える。


「えーと確かここはレベル5以下限定の勝ち残り方式の場所だっけ。初心者はここで腕を磨き、上級者やチーム、ギルド所属の者は素質のある奴をスカウトしていく。なるほど、上手いシステムだ。戦うならここにするか」


 受付の人にエントリーをしてもらい、例に則って順番まで待合室に座る。

 呼ばれるまで何もしていない時間となるが、無道はどこか楽しげだった。

 涼波にはんば押し付けられ、試しプレイをする羽目になった無道だが、今は僅かな期待感を瞳に宿している。


(とは言ってもこれやってるのレナにばれたら即没収&説教じゃすまないだろうから今回だけなんだけどね)


 無道は質素だが初めての剣、《アイアンソード》を手元に持って行き、鞘から引き抜く。

 銀の刀身には灰髪となった無道の顔が覗いた。

 身元がバレるのを防ぐために渋々変えた髪。

 そこから覗く不機嫌そうな瞳の奥に眠る好奇心。

 無道は基本冷静だ。

 そう押さえつけている。

 だが、ここはファンタジー。

 胸が躍らないわけない。


 順番が来た無道は大きく息を吐き出し、ふと言葉を呟く。


「一歩前に、踏み出さなきゃ始まらない......ん? これってなんの奴だっけ? まあいいや。目指せ初勝利、だな」


 剣をしまい、歓声の響く方へと無道は歩む。



 

 そして、唐突に言おう。

 無道迷焦は足がすくんでいた。

 闘技場で対戦相手を前にして。

 

 第1に対戦相手がいかつい顔の不良だったから。

 第2に周りの歓声が予想以上。

 第3に相手の曲刀を見て、とっさに血のビジョンが浮かんでしまったからだ。

 

 現代で剣などを使い、他人と戦った事のある人は何人いるのだろうか?

 多くは無いだろう。

 だから、びびってもおかしくは無い。


(ヤバい。怖い。さっきの落ち着きはどうしたんだよ僕ーッ!)


 内心泣き叫ぶ無道の額を撫でるのは温もりでは無く冷や汗だ。



 乱れる呼吸、動かない手足。

 

 唐突に始まる試合の合図。

 

 それにつられて動き出す相手。


 瞬く間に消える距離。


 ちらりと光る曲刀の軌跡が無道の視界に写り、


 そして、


 そして............

 


 

◇◇◇◇◇◇


 胴体を切り裂く《ウェポンリリース》による青の一閃。

 それはあまりにも滑らかに、見る人によれば舞いのように華やかな一撃だっただろう。

 切られた者は粒子となって散って行く。

 HPが尽きたのだ。

 そして、それすらも一つの剣舞の彩りとなる。

 卓越した技と体運びはこの世界の住人とは思えないほどであった。

 拍手喝采。

 舞いを終えた勝者は無言で剣をしまう。

 上空には勝利者の無傷のHPバーと名前が刻まれていた。


『メイジ』と。


 勝利した無道の表情は怯えなどみじんも感じさせないくらいに冷静だった。

 怖いほどに。

 相手の一撃を受ける寸前、目を色を変えた無道が初心者とは思えぬ洗礼された一太刀を相手に浴びせたのだ。

 それが防衛本能なのかは分からないが、周りの目にはこう映るだろう。


『戦いの才能を持つ者だと』


 それは無道が連勝するにつれて大きくなっていった。

 1人、また1人。

 剣舞のように攻撃をかわし、時に捌き、衰えることの無い青の軌跡が宙に描かれ様を皆、息を飲み込んで見つめていた。

 《ウェポンリリース》とは普通、レベル1でも連続で5回いけるか、ましてや対戦相手全員にぶつけるにはどれくらいの精神が必要なのだろうか。

 それを行える無道は本当に戦った事が無いのだろうか。

 才能で片づけられない熟練した何かが後押しするように無道を奮い立てたようにも見える。

 

 10連勝をしたところで無道の体は動かなくなった。

 さすがの無道も精神疲労(マインドゼロ)からは逃れられない。

 が、無道の口元には確かな満足感が浮かんでいる。


「君は......ここにいるんだね。やっと、手がかりを掴んだ」


 左手に持っていたのは剣では無く一枚の栞だった。

 押し花にされた紫苑がくっついた栞。

 それが無道の袖から出てきたのだ。

 それを見て無道は頬に涙の線を作る。


 無道の頭の中に再び銀髪の少女の姿が現れる。


『メイメイが忘れてもわかるようにヒントを入れたよ。行き先は......なんとか探してね』


 悲しそうに笑う少女の姿だ。

 崩れ行く場所がどこなのか無道には分からない。

 ほんの一瞬の光景。

 それが終わるや無道は立つ力も失せたのか、その場に倒れる。

 精神疲労とはまた違う疲れ。

 それをシステムが異常事態と見なしたらしく、無道の体は強制ログアウトとなる。

 それでも尚離さない栞。

 消え行く中、無道は己が歩む道を決めていた。

 

 この世界で戦い抜き、銀髪の少女を見つけ出す。

 きっと少女もそれを望んでいるはずだと。


 紫苑の花言葉は『追憶』『君を忘れない』「遠方にある人を思う」なのだから。

 

 

ーー10連勝の末


“ステータス”

メイジ

レベル3 夢界適性ランクS

HP5020/5020

【剣術+2】ーーアイアンソード

《武器制限解除》

《攻撃力アップ》


<残り3ポイント><空きスロット2>


 


ここまで読んで頂きありがとうございます。

ぶっちゃけここまでがプロローグな気もしますが、悪しからず。


作者の好き勝手書く話ですが、感想や評価によってやる気が上がります。


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