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いろいろとイベントが進みました

「次は化学実験室ですわね……」

「奥田先生、結構マッドサイエンティストっぽくない?」

 教室を涼子ちゃんと出て、階段を登りかけたところで――

「きゃあああああああっつ!」

「!?」


 ――ドン! グキ!


「っ!」

 あっと思う間もなく、私は階段下でしりもちをついていた。膝の上には……


「ご、ごめんなさい、あやめちゃん、大丈夫!?」

「紗都子さん?」

「急いでて、階段足踏み外しちゃったの!」


 紗都子さんは慌てて立ち上がり、私に手を伸ばしてくれた。その後ろで、「大丈夫かっ!!」と真っ青な顔で(私ではなく)紗都子さんに声をかけ、近藤くんが二段抜かしで階段を降りてきた。

「私は大丈夫、でもあやめちゃんが……」

 私は紗都子さんの手を握り、立ち上がろうとしたが……

「!!」

 右足首に激痛が走った。思わずまたしゃがみ込む。

「ちょっと、大丈夫、あやめ!」

 涼子ちゃんも心配そうに私の顔を覗きこんだ。ずきんずきん、と脈打つような痛み。

「……っ、右足くじいたみたい……」

 涼子ちゃんが、私の右靴下をずり下ろした。

「うわっ、腫れ上がってるわよ」

 右足首を見ると……くびれがなくなって、象足になっていた。

「保健室行かないと……」 と言った涼子ちゃんを、低い声が遮った。

「どうした、斎藤?」

「あ……」

 教室の方から来たのは、晴海くんだった。

「あやめ、怪我したの。保健室に連れて行かないと……」

 涼子ちゃんの言葉を聞いた晴海くんが、私の足首を見た。

「……結構、腫れてるな」

「!!」

 ――晴海くんが屈んだかと思うと、私をお姫様抱っこして立ち上がった。

「は、晴海くん!?」

「その足じゃ、支えながらじゃないと、歩けないだろ。こうやった方が、早い」

「ででで、でもっ!」

 怖ろしく恥ずかしいんですがっ!! 顔が赤くなるのが判った。

「怪我人は大人しくしてろ。川崎、奥田先生に連絡してくれ」

「りょーかい。あやめのこと、頼むわよ」

「お前らも、斎藤は俺が連れていくから。次の授業に行けよ」

「……ほら、紗都子」

「あ、後でお見舞にいくねっ!!」

 近藤くんに引きずられる様に連れて行かれた紗都子さんの後ろ姿が遠ざかっていく。

「ああああ、あの!」

 晴海くんが、さっさと歩く。ひ、人の目が気になるっ……!

「私、重たいしっ、歩けるから……っ!」

「は? 軽すぎるぐらいだぜ。もっと肉つけた方がいいんじゃないのか?」

 に、肉って。妙に生々しいんですけど!? 通りすがりの視線が痛いし!

 ……私は俯き加減に、赤くなった顔を周囲に晒さないようにした……。


*** 


 ――もう一生分の羞恥心を使ったかもしれない……

 保健室前に着いた時……私は、精神的に大ダメージを受けてぐったりしていた。


(目立つって! 目立つのよ、晴海くん!)

 背が高くて、体格のいい晴海くんが、女の子を抱き抱えて歩いてる図って……私だったら、とくと拝ませていただくわっ!!


 私の内心も知らない晴海くんが、保健室のドアを開けた。

「……田中先生。怪我人ですが」

 部屋に入ると……ころんとした体形の田中先生の傍にいる……のは。

(は、春木先生……!?)

 眼鏡をかけた、スーツ姿の年上の男性が、田中先生と共に、こちらを見た。

「まあ、どうしたの? 確か……1-Bの斎藤さんよね?」

「こいつ、足をくじいたみたいで。診てやって下さい」

「お、お願いします……」

 思わず小声になってしまう。だって、春木先生の瞳、どう見ても面白がってる!

「じゃあ、こちらに座って?」

 勧められた椅子の傍に、晴海くんが私を降ろしてくれた。

「あ、りがとう、晴海くん……もう大丈夫だから、授業に行って、ね?」

 晴海くんは少し目を細めたけれど、田中先生に「よろしくお願いします」と一礼して、保健室を出て行った。


「あら~、ひどく腫れてるわねえ。これは痛い?」

「……っ! は、はい……」

「足先は動く?」

 そーっと動かしてみる。痛いけど……動くみたい。

「ひどい捻挫だとは思うけれど……念のため、レントゲン取っておいた方がいいでしょうね。じゃあ、車を……」

「……俺が連れて行きましょうか?」

 は、い!? 私は目が点になった。春木先生を呆然と見上げる。

「あ、斎藤さん、こちらはね、私の後任で来週から勤務される、春木先生よ」

「よろしく、……斎藤さん」

「い、いえ、こちらこそよろしくお願いいたします……」

 うわ~大人の男性の色気、と言いますか、余裕と言いますか……晴海くんも背が高いけれど、春木先生も高いわよね。

「……春木先生、よろしいんですの?」

「……ええ。引き継ぎは先程終わりましたし……車で来ていますから。病院まで連れて行きますよ。歩けないようだから、男の俺が連れて行った方がいいでしょう」

「まあ、良かったわねえ、斎藤さん」

 田中先生がほっとしたように言った。

「私じゃ支えられないし……では、お願いしますね、春木先生?」

「はい、承知しました」

 ふわっと身体が浮く。ま、また抱き抱えられてますわ、私っ!!

「じゃあ、行くぞ」

「は、はい……」

 もう一生分の羞恥心が必要、かも……

「気をつけてね~」

 田中先生がにっこりと笑って、見送ってくれた。私は居心地の悪さを感じながら、春木先生の腕の中で、縮こまっていた……。



***


「骨に異常がなくてよかったな」

「は、はい……」

 結局捻挫ということで、鎮痛剤入りの湿布にサポーターで固定、松葉杖も借りることに。

「あ、あの、付き添って下さってありがとうございました」

 頭を下げた私に、春木先生は「怪我をした生徒に付き添うのは当たり前」だと笑った。


  ……なぜかしら。春木先生の笑顔って……


(真っ黒に見えるんですけれど……)

 含み笑いといいますか……キケンな匂いがしますわ。

 スマートに車を運転する先生の横顔をちら、と見る。端整な顔立ち。眼鏡が理性的な印象を与えている。正に『大人の男性』よねえ……。


「……斎藤」

「はい」

「……しばらくは、運動を控えろ。痛みが酷くなるようだったら、受診しろよ?」

「はい、春木先生」

 私の返事を聞いて……春木先生の口元がにやり、と上がった、気がした。

「……さっきは、なかなか面白かったな? 抱き抱えられて、真っ赤になってるお前の顔」

「~~~っ!!」

 な、なんですの、この先生っ! 私は口をぱくぱくさせた。

「まあ、女冥利に尽きるとでも思っておけ。……おそらく、校内中で噂になってるとは思うがな」

「~~~先生っ!」

「なんだ?」

 しれっとした顔で、春木先生が言った。

(は、春木先生って……!)

「……先生はSですの?」

 ちらとこちらに投げた視線が……何とも言えない威圧感を漂わせていた。

「……Mに見えるか?」

「……いいえ、全然、全く」

「三重否定、か」

 どう見ても、「S」ですわね。と言いますか……

(春木先生って、「S」って設定だったかしら?)

 温和で優しい印象しかないのだけれど。まあ、春木先生ルートを知らなかっただけなのかも……。

「まあ、これからよろしく頼むな? ……あやめチャン」

「!!!!」

 ますます赤くなった私をちら見して、春木先生はくくくっと(いかにも『Sっぽく』)笑った。


***


 本日のあやめメモ:

・春木 圭一先生(=?)

 前世の穏やかな印象はなく、どう見ても『ドS』。もしかすると前世では隠していたのかも?


 <高校1年生。入学直後 発生済みイベント>

・保健室イベント(あやめ×晴海くん)の発生

 クリア ただし変更有(前世では、貧血を起こして運ばれた)

・保健室担当医の春木先生が転入してくるのは夏休み前

 クリア ただし変更有(前世よりも登場が早い。先生が『S』)


 <発生予定イベント>

・生徒会から声を掛けられる?

・紗都子さん+近藤くんと学外で会うのも一学期だった。もうすぐ?


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