あるキャラの独白
『バッドエンドになっちゃったからねえ……もう一度やり直しになったんだよ~』
金の光はそう言った。
バッドエンド? 冗談じゃない。俺にとっては、極上のハッピーエンド以外の何物でもなかった。
気高く美しいお姫様。ヒロインとの争いに敗れ、学園を追われた彼女の行き先は……俺の元しかなかった。やっと手に入れた。綺麗な瞳も白い肌も、みな俺だけのモノ。頬を赤らめ、涙を浮かべながら睨みつける顔も、羞恥に悶える様も、いやいやと可愛い首を振る様も、全てが愛おしかった。俺以外の誰にも見せず、閉ざされた世界の中で二人きり、存分に愛でようとしていたのに。この変な光が邪魔をしやがって。俺は不機嫌さを隠すことなく、目の前の光を見た。
(……他のキャラと入れ替わる、だと?)
ということは、彼女もまた別人になっているということか。前世の記憶もないかもしれない、と聞いて、俺は考えた。
もし彼女が前世を覚えていたら……『俺』を警戒するだろう。だが、その『俺』は俺でなく、実際の俺は別人だったら……もう一度彼女に近づけるかもしれない。彼女の姿形も変わっているかもしれないが……俺が『彼女の魂』を見間違えるわけはない。あのお姫様の魂を。
俺は光に、ある名前を告げた。これから俺は、そいつになる。そして……彼女ともう一度出会うのだ。再び、彼女を手に入れるために。
俺は笑みを浮かべ、光が転生の準備を始めるのを見守った。期待に胸が高まる。
俺と彼女の間には、ハッピーエンド以外あり得ない。誰になっていようとも、必ずまた捕らえてみせる。
「待ってろよ……紗都子」
お前は……未来永劫、俺のモノだ。