表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

<4>

<4>


休日だけあって、いつも以上に街は人で溢れていた。


ばったり知り合いにあったらどうしよう。明らかに普段着ではないこの姿を見られたら、あらぬ詮索をされるに決まっている。

そう思い戦々恐々としていた私。

だけど運良くそのようなこともなく、無事に目的地であるマグノリア・タワーへと到着できた。


よし、夢のお城へいざ一歩!

そう意気込み、ドアマンが開けてくれた扉をくぐり、憧れのマグノリア・タワーへ足を踏み入れる。


(うわぁ!)

夢のお城は、まさにお城だった。

まだ入り口だと言うのに、その贅を凝らした内装に驚かされる。床はふわっふわの絨毯が敷かれてあり、とても歩き易い。

すれ違う従業員ホテルマンたちは笑顔で、でもキビキビと働いているし、お客さまたちもやはりお洒落な人が多い。

雰囲気にのみ込まれてしまいそうになりながらも、私はそのままラウンジへと足を進めた。


「お待ち合わせでいらっしゃいますか?」


入口付近でメートル・ドテール(レストランマネジャー)に声を掛けられる。

15時に待ち合わせをしていることを伝えたところ「渡辺さまでいらっしゃいますね。本日はお越しいただきまして、ありがとうございます。お席までご案内いたします」と通された。


うーん!さすが一流ホテルのラウンジ。

時間を伝えただけで、名前まで言い当てられました!


メートル・ドテールの背を追いながら、ラウンジの様子を見やる。沢山のテーブルと椅子が並べられているけど、一卓一卓きちんとスペースが確保されていて、隣の席との空間を気にするなんてことは勿論なさそう。


座れるのであれば、窓際がいいなと思っていた私。だってマグノリア・“タワー”と言うだけあって、高層ビル。こんな機会、次があるかも分からない。どうせならそこからしか見れない景色を眺めたいじゃない?


そう考えていた私が通されたのは、都会が見渡せるまさに絶景が眺められる席だった。

しかも個室。

え?個室?


てっきりラウンジの一席で落ち合うのだろうと思っていたが、通されたそこは二人でお茶をするには躊躇してしまうくらいの広い個室だった。


落ち着いた色ではあるけれど、縁取りがとっても可愛いロココ調のチェアにソファ、テーブル。周りのチェストや壁にある鏡も、シンプルだけれどもロココ調のテーブル一式に合っていて、まさに優雅と言う言葉が似合っている。

ああ、本当に素敵!


そして既にテーブルには、ケーキスタンドがセッティングしてある。

下段はサンドイッチ!中段はスコーン!勿論たっぷりのクローデットクリームにイチゴジャム、おまけにブルーベリージャムも!

上段は大きないちごの載ったショートケーキ、粉砂糖でお化粧されたガトーショコラにふんわりとしたスフレチーズケーキ!


そう!コレコレ!これが私の求めてたもの!

これまでの憂鬱が嘘のように晴れる。


ジュルッ

いけないいけない。ヨダレが。


「失礼いたします」


部屋まで案内してくれたメートル・ドテールが笑顔で椅子チェアを引いてくれて、私はそれに腰かける。「寒くはございませんか?」と室温まで気に掛けてくれ、もう感動!


寒くございません。暑くもございません!むしろ快適でございます!

そう大きな声で言いたいくらいな気持ちだけれども、社会人として失礼のないよう、私も笑顔で「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」と応える。

これでも社会人歴5年。普段は某外資系企業の秘書課勤務。そこで鍛えられたこの笑顔。簡単には崩されません!


「それではご用がございましたら、あちらの内線ベルよりお呼びだて下さい」


そう言い、メートル・ドテールは退室していった。


ポツンと独り。

腕時計を見ると、約束の時間までは15分ほど早い。かなり余裕を持って家を出たつもりだったけど、日曜日を舐めていた。交通機関も混み合っており、想像よりも時間が掛ってしまった。


「15分か―――まあ、気持ちを落ち着かせるにはちょうどいい時間かも」


独りそう呟き、さらにスーハーと一つ深呼吸をした。


長くなったので、一旦ここで切ります。

ヒーロー登場は次話となりました…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ