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そして訪れた、運命の日曜日。


「髪型よし!服よし!化粧よーし!」


まるで号令のように声を出し、鏡に映った自分の姿をチェックする。

肩まである髪をアップにして、あまり派手にならないようにメイクを施して。服はシックな黒のワンピース。アクセントとして腰には細目の赤いベルト。白薔薇をモチーフにしたコサージュは胸元に。


カジュアルな服装を好む普段の私からはかけ離れた格好だけど、流石にあの超高級ホテルにジーンズにTシャツでは向かえない。多分、そんな格好で出向いたらドレスコードで門前払いだ。


「…まあこんなモンでしょ!」


もう一度鏡に自分の姿を映し、仕上がりを確認する。

よし!あまり大きめではないハンドバッグに、ヒール低めなパンプスを引っ掛ければ完成!


部屋の壁に立てかけてある時計を見る。

約束の時間は、お茶の時間にはぴったりの15時。その時間までには大分余裕があるけれど、早めに着く分には問題ない。

一般的なマナーとしても、遅れるよりはずっといいでしょ!よしっもう出掛けよう!

私は気合いを入れ、二階の自分の部屋から階段をおり、玄関に向かった。リビング前を通るとガチャッとその扉が開き、父がひょっこり顔を見せた。そして私を上から下までじっと見てから口を開いた。


「は~る~か~!僕の可愛い娘!これまでに無いくらいに輝いてるよ!」


チッ

思わず心の中で舌打ちをした私。

父は朝から私以上にソワソワしていた。だから余計に、これから会うであろう男の為に気合いを入れてた格好をしていると思われるのが癪で、こっそりと出かけようと思っていたが見つかってしまった。


「ハイハイ。アリガトウゴザイマス」


素直に褒め言葉を受けとれず、思わず棒読みになってしまう。


「ふふ、本当に可愛いわよ。自信を持って」


おっと。父さんに続き、母さん登場。

母上さま、そんな援護射撃は要りませんよ?


「うんうん。ホント可愛いよ~楽しんでくるんだよぉ」

「そうよ。折角の機会なんだし楽しんできてね」


身内にベタ褒めされてもなぁ。やはり素直に言葉を受け取れない私。


と、そこで改めて母さんたちの格好に違和感を覚える。

ん?今日の私に劣らず、明らかに余所行きの服を着ている母の姿が目に入る。


「あれ?父さんたちも出掛けるの?」

「そうなの~。悠斗さんと久々にお出かけ」


悠斗さんとは、言わずがな父のこと。

我が家の大黒柱、渡辺悠斗わたなべゆうとはそこそこ売れている作家。大ヒット作があるかと言われたら、返答に困ってしまうけど、まあ多少の贅沢も出来るし、食べるのには困らない。その程度ではある。会社勤めではないから、締め切りに追われている時はあれど、その分比較的時間には融通がきく。


ちなみに母は陽子ようこ。父の元担当編集者。現在は専業主婦。

おっとりした性格で、あまり怒った姿はみたことがない。だけど父曰く「その笑顔が恐い」らしい。現役時代もそれはそれはやり手の編集だったそうで、埋もれていた父をここまで導き出したのも母だとか。勿論そんな母に、父は頭が上がらない。


個人的には仕事仲間に手を出した父に同調は出来ないけど、こちらが呆れるくらいに仲が良い夫婦だし、手前味噌だけど、将来はこんな夫婦になれれば幸せだろうな。そう思う。

何だか恥ずかしくて、本人たちには絶対言わないけどね!


「そっか。母さんたちは楽しんで来てね。気をつけて」


母さんたち“は”、と強調してしまう私。自分でも往生際が悪いなぁと思いマス。


「遙ちゃんも気をつけて行くのよ。ふふふ、笑顔笑顔。きっと良いことあるから」

「そうだよ、遙!良いことがあるよ!」


………父さんが根拠なく断言できるのは何故なのか。

時々思う。父さんと私は別の次元を生きているんじゃないかと。


まあ毒づいても仕方ない!

母さんも言うように、笑顔で前向きに行きましょう!



「じゃあ、行ってきまーす」


ヒーロー登場は次話でしょうか。

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