第7話~厄介事が多くて何が悪いっ!~
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時に教室にいた生徒のうち半分が教室のドアを勢いよく開けて廊下へと出て行った。
そう、今のチャイムは授業の終わりを知らせるチャイムだ。しかも今は昼休みだ。
そんな中チャイムとほぼ同時に机に寝そべったのは修だった。
「ふぃ~疲れた~」
あの後も、授業終わりの休み時間ごとにクラスメート達が修の机の周りにやってきて、ろくに休めていない。昼休みこそはのんびりしたいと思っている修はどこか別の場所で昼食を取ることにした。
教室を出て行った生徒たちは皆、購買へと向かい帰ってきた時にまた質問攻めに遭うからだ。
ちなみに、クラスメートたちも購買へ行く前に修に百合奈の事を聞こうと思っていたが、ここの購買は時間との勝負みたいなものですぐに売切れてしまう。(修も経験済み)なので昼食を買って教室に戻ってから修に質問を浴びせようとクラスメートたちは個々そう思っていた。
(屋上にでも避難するか)
そう思ってカバンから取り出した二段弁当を手に立ち上がろうとしたとき、
「どこへ行くんだ?」
そう言って修のほうに近づいてきたのは勇輝と拓人だった。ちなみに龍斗は出遅れて購買へと向かっていた。
「いや、なんだ普通に飯が食いたいからな。屋上にでも行こうかと思ってたんだ」
修は小さくあくびをしながら不機嫌そうに答えた。その様子に勇輝と拓人は笑いをこらえるようにしていた。
「そういえば休み時間ごとにお前の席に人だかりが出来ていたからな」
「ハハハ、その通りだな」
拓人と勇輝は特に気にもせず、楽しんでるようだった。それが気に食わなかったのか修はますます不機嫌になり、深くため息をついた。
「あー じゃあ俺屋上行ってくるからな。誰にも言うなよ」
そうして歩こうとしたとき、拓人に呼び止められた。
「まぁ待て」
「なんだ?」
「まずはアレをどうにかしたほうがいいと思うぞ」
「アレ?」
そう言って拓人が指差した方向、つまり教室のドアのほうに振り向いてみるとよく見知った人物がすごい形相でこちらをにらんでいる。七海だ。
修は七海の姿を見たとたんに身の危険を感じた。七海はすごい殺気を放出している。それでも教室内に残っていた男子は皆、顔を赤くしてだらしのない顔になっていた。
「な、なんで七海がここに!」
「修ぅ~!」
念のこもった声で七海はずんずん教室へと入ってきた。
「拓人! 何とかし『無理だな』……薄情者!」
拓人に助けを求めたがあえなく失敗した。そして今度は勇輝の方に振り返り、
「勇輝! 頼むこの通りだ!」
そう言いながら顔の前で手を合わせながら勇輝に頭を下げる。こうしている間にも後ろから殺気はどんどん近づいてくる。
「俺にも無理だ諦めてくれ」
だが、諦めないのが修。普通を守る為ならどんな手段も選ばない。そうして最後の手段を使うことにした。
「この状況何とかしてくれたら、お前に代わって限定店舗特典付ギャルゲーを深夜に並んで買ってきてやる!」
一見どこが最後の手段か分からないが、勇輝にとってこれは効果絶大の説得だった。
「ほ、本当か!?」
「男に二言はない! (この状況を打破できると考えたら安いもんだ)」
それほど怒っている七海は修にとって危険人物なのだ。
「いいだろう! 少し足止めしていればいいんだろ! なら任せろ!」
「任せた!」
そう言ってわざとらしく親指を立てる。その後修は後ろのドアからすばやい動きで出て行った。
「あっ待ちなさい修!」
すぐさま後を追いかけようとするが、それを勇輝が引き止めた。
「待ってくれ!」
「何? 邪魔するつもり?」
鋭い目つきで勇輝を睨む。
「そう怒るなって夏川」
一応、修の親友なので七海と面識があるむしろ仲がいい。だが七海が切れているこの状況ではまったくそうは見えない。
「それより修はどこへ行ったの」
「それは言えない」
「どうしても?」
「男同士の約束だからな」
「ふ~ん……そっかそっかぁ」
不気味な笑みを浮かべる七海に勇輝はビクッと肩を震わした。少し後ろで傍観していた拓人でさえ少し驚いた顔をしていた。
勇輝は何をされるかビクビクしていたが、意外にも七海は拓人のほうに向いた。今度は拓人がビクッと肩を震わした。勇輝は七海の殺気から開放されてホッとしていた。
「……柊君」
「な、なんでしょうか」
「あのバカがどこに行ったか教えてくれない? というより教えないと留美ちゃんにあのこと言うから」
「屋上だ!修は屋上に行った!」
ものすごい勢いで拓人は屋上、屋上と連呼した。それを聞いた七海は「屋上ね……」とつぶやいて教室を後にした。ちなみに留美は拓人がものすごく溺愛している妹のことだ。
「というより何言ってんだ」
「へ?」
「修よ、俺は頑張ったが拓人が裏切ったからな……」
「おい、俺のせいかよ!」
拓人が大げさに驚く。
「他に誰がいるんだ、大体妹にどうこう言われたところでだろう?」
「何を言う! もし俺が留美の部屋にこっそり入って物色している事がばれたらどうするんだ!」
「いや、たぶん夏川はカマかけてたと思うし……ってお前そんな事してるのか」
「あ」
あわてて口を手で押さえる拓人だったがもうすでに遅かった。そんな様子を見て勇輝は
「イケメンなのに残念なやつだ」
その言葉はがっくりと肩を落とす拓人には届いていない。
「妹といえば二次元だろう! 三次元の何がいいんだ」
今度は勇輝が残念な発言をした。きっと修がこの場にいればこういうだろう「おまえも大概だがな」と
最近雨が多くて、よく憂鬱になります(笑)