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普通で何が悪いっ!  作者: 鳳タクマ
普通の少年
7/20

第6話~終わる普通~

今回は百合奈SIDEです。

昨日の出来事から丸一日たった翌朝


「じゃあお母さん行ってくるね」


そう言って大きな門のある家から元気よく出てきたのは姫河百合奈だ。

昨日は助けてもらった少年の事を考えていたのだが、翌日友人に相談しようと考えて眠りについた。そうして今、その友人との待ち合わせ場所に向かっている途中だ。


待ち合わせ場所というのは駅前で、毎朝そこで待ち合わせをしている。

並木道を歩き、駅の近くまで来る頃になるとたくさんの学生が行き来しているのが分かる。その中でも百合奈は目立っていた。


ほとんどの学生達や中年男性達は百合奈に熱い視線を送っていた。学校でもトップの美貌を誇る百合奈は他の人達からすれば、どこかのアイドルかと思ってしまうほどだ。

そんな百合奈を目当てに一日頑張ろうと、時間を計って来る者さえいる始末だ。


本人も視線には薄々気付いているが、最初の頃とは違い今は慣れてしまった。

しかし、いくら慣れているとは言えあまりいい気はしない。何より学校のある日は毎日だからだ。


視線(主に男性からの)を浴びながら駅前の待ち合わせ場所に着くと、すでに彼女は来ていた。

百合奈に気付くと、彼女はにっこりとした笑みを浮かべた。


「おはよー百合奈」


そう言って手を振りながら笑顔で挨拶をしてきたのは百合奈の親友である如月(きさらぎ) 美希(みき)だ。


女子にしては高い身長に加えて、長く見とれてしまいそうな足。そしてバランスの良い体躯。腰ほどまである長くて美しい黒髪は整った顔をさらに引き立てていて気品すら感じさせる。

百合奈が『可愛い』ならば美希は『美人』に分類される美少女だ。


彼女もまた、百合奈と同じく学校で一位二位を争う美少女であり、生徒会副会長でもある。


「おはよう、美希」


二人は挨拶を交わすと二人並んで駅の中に入っていった。


二人が並んで歩くと周囲のテンションはさらに上昇し、頬を赤くする者や本気で喜んでいる者がたくさんいたが、二人がそれに気付く事はなかった。


改札を抜け、プラットホームまで来ると電車はその後すぐに着て、電車の女性専用車両に二人は乗り込んだ。(理由は分かると思うが)


と、ここで百合奈は昨日の事を相談するため、話をきりだした。


「そういえば美希に相談があるんだけど」


「相談? 何かなそれは……ってもしかしてついに百合奈に好きな人でも出来たの!?」


いきなりものすごい表情になって百合奈に顔をぐいっと近づける。百合奈はそれに対して少しビクッとなり、後ろに身を引いた。二人は座ってはいない。


「ち、違うよ! ただちょっと気になる子って言うか――――――」


「百合奈、人はそれを恋と呼ぶんだよ!」


「だから違うよ!話聞いてよ!もう」


電車の中なので小さめの声で、それでも一語一語はっきりと答えた。それを聞いても茶化そうとする

親友に対して百合奈は呆れた声で言った。


「はぁもういいよ。美希に相談しようとした私がいけなかったんだ」


「あ、待って待ってちゃんと話し聞くから! 相談乗るから!」


……必死だ。


「まったくちゃんと聞いてよね」


「はいはい分かったよ」


こうして百合奈は美希に、昨日の一連の事を全て話した。不良に絡まれた事(単にナンパ) そして助けてくれた少年の事を。そして逃げられた事も。

その話を神妙に聞いていた美希は話が終わると複雑な表情になって考え始めた。

少し考えた後美希はスッと息を吐いた。


「百合奈、やっぱりそれはこ「恋なんて言ったら本気で怒るよ?」……うぅ、睨まないでよ」


百合奈もやれやれといった感じだ。美希は百合奈に睨まれて怯えている。


「とりあえず、直接会って聞いてみたら?」


「名前もクラスも聞いてないよ。というより聞く前に逃げられたってさっき言ったじゃない」


「あ、そうだった。でも百合奈を前にして逃げるなんてよっぽどの子だね」


「……それどういう意味なの」


「べっつにー特に意味はないかなー」


「ちょっと!」


「というかさ校門の付近で待ってたら嫌でも会うでしょ。だからそうしたらいいんじゃない?」


「またそうやってはぐらかすんだから……分かった。そうしよう」


そこでため息をつく百合奈。それをニヤニヤと意味ありげな表情で見つめる美希。なんとも奇妙な光景だ。



少しして電車が目的の駅に着いたので二人は電車から降りて、そのまま駅から出た。

駅前の方はたくさんの学生が行き来していて、百合奈と美希の事を見るとまたしてもほとんどの人達が目を奪われていた。それほどこの二人の美貌はすごいという事だ。


学校に着くまで二人は歩きながら少年の話をしていた。今歩いている道は大通りで、かなりの生徒達がいるのだが、ほとんどの割合で二人に視線が釘付けだ。


「その男子生徒に何か言われたりしなかった?」


「ん~ 特に何も言われてないかなぁ」


「その様子だと本当に逃げられたみたいだね」


思わず美希から苦笑いがこぼれてしまう。

そんな話をしている間にもどんどん学校へと進んで行き、いつの間にか学校付近まで来ていた。ここまで来ると生徒達の数も多い。登校ラッシュ状態だ。


二人は校門の前で待つことにした。


「ここで待ってたら絶対見つかるよ」


「大丈夫かな」


「そういえば見た目どんな子だったの?」


「うーん身長高いかな」


「それだけ!?」


美希が驚いた声をあげた。校門を通過する生徒達は二人の事を見ては、「姫河さんと如月さんだ!」「誰か待ってるみたいだぜ?」「おいおいあの女神二人に待ってもらえるなんて羨ましい事を……」「まさか男か!?」 など、不思議そうに様子を(うかが)う者や二人の美貌にバカになっている者など様々だ。


「なんかもっと、こう何かないのかい?」


「何かって……見る限りでは普通の子だったし……あ、あの子だよ!あの四人組のいちばん右端の子!」


そう言って百合奈が美希の肩をゆさゆさと揺する。美希はされるがままに揺すられ頭が縦にぶんぶんと振られている。


「ゆ、百合奈、とりあえず話しかけなきゃ……」


「あ……ご、ごめんね」


こうして二人は少年の方に近づいていった。


そしてこの瞬間から「普通」は徐々に崩れていくのだった。







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