第5話~スルースキルを使って何が悪いっ!~
「神谷! アレはどういうことだ!」
「そうだ! 説明しろー!」
現在修は自分のクラスで席について…… クラスメート数十人(9割男子生徒)からの質問攻めにあっている。
「お前ら邪魔だ! それに何回も言ってるだろ!」
さっそく修はこう思っていた。
(どうしてこうなったっ……)
話は三十分程前にさかのぼる――――――
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修たち四人は電車を降り、学校へと向かっていた。
ちなみに今歩いている道は大通りではなく、路地だ。ここは登校時、大通りに比べて、あまり使う人はいない。とは言え大通りに比べればの話なので使う人はそこそこといったところだろうか。
いつもなら大通りから行くのだが、昨日の件も含めて百合奈には気付かれたくなかったので、修が三人に頼んで路地から行く事にした。これなら会う心配もないだろうと考えた修はとりあえずホッとしていた。すると隣にいた龍斗が唐突に話しかけてきた。
「それよりなんで今日はこっちの道が良かったんだ?」
「いやそれは昨日……なんでもない」
修は少し口篭ってしまった。昨日の事を話してもやっかいなことになるだけだと思ったからだ。
すると勇輝が何かに気付いたように、わざとらしく手を叩いてニヤッと笑った。
「そうか! なるほど・・・・・・ 察してあげなよ龍斗」
「へ?」
「何か分かったのかよ?」
拓人が疑問にたずねると、勇輝は掛けているメガネに手をかけ、フッと笑った。
「簡単さ。 昨日の修の行動を見れば」
「どういうことだ?」
拓人と龍斗は意味がさっぱり分からなかったが、修は違っていた。そして修は恐る恐る聞いてみた。
「……お前昨日のこと知っているのか?」
「ああ、分かるよ」
修はがっくりと項垂れた。とりあえず学校で広まらないように勇輝を口止めすることにした修は対策を考えたが、すぐにその考えも無駄になった。
「修もついにこちら(オタク)の世界に来たんだね」
「いや、違うから」
一体どうなったらその答えに行き着くのか? 修は呆れ果ててため息をついた。
「ん? 違うのかい? なんだ残念」
「ったく、このオタクめ」
「まぁまぁそれよりさ、聞いてく『黙れシスコン』おいっ!」
拓人がしゃべりだした瞬間、修と勇輝はほぼ同時に鋭いツッコミを放った。拓人が話す事といえば妹の自慢話が9割方なので二人はそれを悟ったのである。
拓人は妹の話を出来なかったからか、少し不機嫌な顔になっている。もっともそんな話をされても修達はどう反応すればいいか分からない。
「シスコンって何だ? 合コンの派生系か?」
「お前も黙ってろ」
龍斗のバカな質問に修は冷たく言い放った。それと同時に、どうして俺はこいつらと親友になったんだと今さらながら、悔いていた。
しばらくこんなやり取りをしながら歩いていると、修たちの通う学校が見えてきた。
このとき修は昨日のことなどすっかり忘れていた。そして修はこのとき唯一の過ちを犯してしまった。
どんなに違う道で来ようと、校門をくぐる際にはたくさんの生徒達と遭遇する事を。
「あの、、、昨日の人ですよね?」
校門をくぐる時不意に癒されるような声とともに肩を叩かれ、修は振り返った。そこには昨日助けた少女・姫河百合奈の姿と、親友らしき女子生徒の姿があった。
そして今修達一行は、かなりの視線を集めている。それは学内でもトップの言わば学校のアイドル二人に話しかけられているからである。
周囲からは「あの姫河さんが……」「姫河さんから声をかけられるなんて……」「なんて羨ましい……いや、憎い」などと言った声があふれている。
(ここはスルーだ、ここはスルーだ)
修は自身最大の秘密兵器(?)スルースキルを使う事にした。要するに無視をするだけだ。
「えっとその……昨日は……って……え?」
百合奈が言いかけると修は無言で走り出した。このときスルースキルを使っていた修は今すぐにでも項垂れたい気分だったが、今はこの状況を打破しなければならないと思い、勇輝ら三人を取り残しありえないスピードで昇降口へと走っていった。
その後三人は何が起こったのか分からず、少ししてハッとなり修を追っていった。
もちろんそれは百合奈も同じで、一緒にいた子と目を見合わせ、ぱちくりさせていた。
そして、この状況を大半の生徒は見ていたわけで、修は教室に入ってから後から来るクラスメート(9割男子)達に質問攻めにあっていたのだった。
次は百合奈SIDEです。