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CROWN or CLOWN

舞台は未来、ヒーローもののようなSFもののようななんだかわからない展開ながらもシリアスとコメディを織り交ぜて描こうと思うよ……とそんな感じです。

元々は三題噺から書き始めたら止まらなくなったものです……すみません。

2XXX年

ありとあらゆる科学、工学、情報技術は革新と発展をした。

その中でも人の身体的能力を一時的に驚異的に向上、補佐するスーツが普及していった。

建設、医療、防犯など、ありとあらゆる分野で利用されていたが一般人でも購入できる価格であったため、それ以上にこのスーツを利用した犯罪が拡大していく……。


JAPAN,HOKKAIDO,SAPPOROCITY某所

急速に発展し華やかな街。その街のとあるビルとビルの間に人一人が通れる薄暗い道。

私はたった一枚の薄っぺらい紙に行く先を任せる。

薄暗い、灰色の道。道を作るビルの壁にあるひびが異様に気になる。

大通りからこの道に入るだけで人々の往来の喧騒が小さくなった気がする。

その道を進んでいくと喧騒は聞こえなくなりそこにあったのは静寂と広い空間。そして時間が今まで止まっていたかのようにひび割れたコンクリート作りの三階建てのビルが日に当てられ存在を主張していた。

「ここでいいのかな?」

ここにある静寂に不安を感じた私は珍しく不安を口にしていた。

するとピピッピピッピピッと無機質な電子音が響く。ビルの中からだった。

今まで感じたことの無い緊張を胸に足を進めた。

「はい、こちら素行調査からボディーガードまで何でもやります万屋”そううん蔵雲”です」

ビルの上のほうから若いのかどうかわからない安定感の無い男の声が聞こえてくる。

私は階段を上りその声の方へと向かう。

「ペットの捜索?ペットじゃない家族?はい、……はい。わかりましたお引き受けします。それでは、名前は?……キャシーアントワネット……うわすごっ……。い、いえ、なんでもありません。それでは後ほど写真データとキャシーちゃんが行きそうな心あたりのある場所などのデータを送るということで、はい、はい。わかりました。捜索料金の方は……。

あっ、そんなに!い、いえ何でもありません。それでは前金はそのようによろしくお願いします。では失礼します。」

無機質なアルミの扉、横には万屋”蔵雲”と達筆な字で木の看板に書かれている。

扉の向こうから慌しくガタゴトと人の走る音。

私は期待や不安といった様々な感情を押さえつけるように強く手を握り締める。

くしゃりと手の中で紙がつぶれる音がした。

私は息を整え手をドアノブにかけようと伸ばす。

掴もうとしたその瞬間。


ガチャッガンッ!

私の生きてきた人生の中でもっとも痛かった……。


『CROWN & SLEEPING BEAUTY』


正義の味方なんて子供の頃に見た夢だった。

俺の親父の職業は万屋。俗に言う何でも屋で親父はとても優秀で何でも出来たらしい。

子供の頃の俺はずっと親父は探偵なんだと勘違いしていたもんだ。

母さんがいなかったため、何でも出来る俺の親父は俺にとってのヒーローだった。

ボディーガードで要人を身を挺して守ったり、銀行強盗を捕まえたり、大体俺は親父に連れられていた。どんな仕事であっても俺は連れられていた。

「俺の背中をずっと見ていろ。俺の背中を見られるのはお前だけだ」

この親父の口癖の意味を昔の俺は良くわかっていなかった。

いや、今でもわかっていないか。

そんなこんなでいつの頃からか俺は親父の跡を継ぐこと決めていた。

俺もある程度大人になり親父の仕事といっても簡単な屋根の修繕とか浮気調査とかの手伝いが出来るようになったある日のこと。

一言「ちょっくら母さん探してくるわ」と言って出て行き、それ以降行方知れずになった。

それから何ヶ月かはちょっとした仕事を引き受けて親父の帰りと連絡を待っていたがとうとうこの10年間連絡すら来ることはなかった。

そんなわけで今に至るわけだ。

「捜索料金の方は……。あっ、そんなに!い、いえ何でもありません。それでは前金はそのようによろしくお願いします。では失礼します。」

というわけで今日も今日とてお手軽なペット探しの仕事を引き受ける。愛好家からの仕事は失敗したらクレームやら何やらで後処理が面倒だが成功したときの報酬はおいしい。

親父がいつも着ていた黒いロングコート。少しほつれたり汚れたりしているが俺にとって大切なおまじないのようなものでこれ着ていた方が何かといいことがあるような気がする。

うん、気がする程度だ。

まぁそんな感じで仕事だ。と親父の代から懇意にしてもらっている情報屋に行こうとドアへと向かう。

「-You got mail-」

「ん?メールか……誰だ?」

メールの音に気をとられ左手を出そうとしたとき、事務所のドアを開ける。


ガンッ。と小気味のいい音がビルの廊下に響く。


「あうっ。つつつ……」

何事かと思い声のする方へと目線を向ける。

一点の汚れも無くかすかな光を反射させ、ほんわりと淡く光る白いロングコート。

その白さとは対極に艶やかで流れるようにまっすぐ伸びたロングの黒髪。

西洋人形のような顔立ちの少女が目に涙をためて何かを握り閉めた手を使い頭を抑えてうずくまっていた。

「だ、大丈夫か?」

顔を上げた少女は目の端に涙をためてにらんでくる。

頭を抑えてふらふらと立ち上がる少女。

心配になってふらふらとさ迷う俺の手が宙で固まる。

かすかに震える少女の唇が開き、

「だ、だいじょう……グハッ!」

俺の目の前が真っ赤に染まった。

「目がぁ!目がぁああっ!」

俺が目の突然の異変で騒いでる近くでバタリと何かが地面に落ちる音がした。

それから約10分後……万屋2階客室にて。

「う~……」

目を洗い戻ってくると地面を真っ赤に染め青い顔をした少女が倒れていたときはあせった。

「だいじょうぶ……だから……救急車は呼ばないで」の一言に俺は慌てて取り出した携帯をしまい埃をかぶっていた応接用のソファの上をきちんと払う。

その上に少女を寝かせ比較的綺麗にしていたタオルをぬらして額に当て、反対側の向かい合ったソファに座る。

「なにやってるんだ俺は……」

普段の俺なら有無を言わずさっさと面倒なことは適材適所に任せるだろうに今回に限ってなぜそうしなかったのか。

それは目の前にある紙が原因。くしゃくしゃになって血みどろで読めなくなったところは多いが所々と読める字は記憶が正しければ親父の字。

「未熟な王子か……」

唯一読めた文章を見て俺は感慨にひたっていた。

蔵雲、読み方を変えるとクラウン。

CLOWN、道化師……この万屋の名前から来た親父の所謂コードネームのようなもので

曲芸よりも冗談やジョークといったものを中心に芸風とする宮廷付きの道化師のこと。

それに対して俺はCROWN、王冠という意味から王子。

いつも親父の後ろに守られるようにいたことから身の回りから、親父から呼ばれていた。

今まで片鱗すら見えなかった親父の手がかりがここにある。

そう考えるとこの少女を誰かに任せることなど出来なかった。

「ん……んん……」

少女が目覚めたようだ。身体を軽くよじらせて寝返りを打つようにこちらを向くが

「あっ」「ほえっ?」

ドンッ!と綺麗にソファから落ちていった。

「て、敵襲っ!?」

「んなわけねぇよ」

と冷静に突っ込みを入れた俺のほうを訝<いぶか>しげに睨むこと何秒か。きょろきょろとあたりを小動物のように見回したかと思うと俺のほうを再び見て

「誰?」

「それは俺が聞きたいわっ!」

それが俺と彼女の出会いだった。

少女は自分の手を見て慌ててまた周囲を見渡す。

「手に持ってた紙ならそこにある」

「あっ……」

多少くしゃくしゃになっていたが綺麗に広げられ、向かい合った俺たちの間を隔てるように存在するガラスのテーブルの上にあの紙が置かれているのに気づく。

軽い安堵の表情を見せた少女は俺の顔をまじまじと改めて見返してくる。

「あなたがあの人の息子さん?」

少女の顔色はまだ良くは無かったが徐々に赤みを取り戻してきている。

声はかすかに震えていたが少女という見た目に、子供っぽい声質に反して落ち着きのある口調。

「あの人というのが誰のことかはわからない。……が、その紙を渡した人物がクラウンと名乗ったなら間違いないとは思う」

「CLOWN、……じゃあ間違いない。あなたが未熟な王子ね」

「その名で俺を呼ばないでくれ」

「ごめんなさい、あなたのことはおじさんからその通り名で聞かされてたから」

「何言ってんだ、あの親父……」

当然だというように来る静寂。少女は右手を左ひじの支えにして左手で口を押さえるように何か思案をしているようだ。何か考えるときの癖なのだろう。

俺は一人の静寂に離れているものの二人以上の向かい合った静寂に耐え切れなくなり右手でただでさえぼさぼさの髪をさらにかき混ぜるようにしてその静寂を断ち切ることにした。

「それで、え~っとなんだ。そのおそらく俺の親父であろう人物からもらった紙を持ってたってことは何か用があってここに来たんだろう?」

少女は軽くため息。

「私は誰かに……、いえ、どこかの組織に狙われているの」

「は?」

少女がいきなり本題に入った所為で俺の頭は一瞬、おいてかれる。

「そうね。狙われているのは私自身もそうなんだけど、どちらかというとこっちのほうね」

そういって少女は右腕を前に突き出す。

「これよ」

少女の腕についていたのは彼女には似合わない無骨で事務所の決していいとは言えない蛍光灯の弱い光の中でも、いやだからこそ……か。存在を主張するかのように黒く怪しい光を放つ金属の大きいデジタル式の腕時計。

俺はその腕時計に見覚えがあった。

「親父のオリジナルモデルか」

自分の左腕にあるおそらく同じものであろうと思われるそれをコートの袖をまくり確認。

「Forwards Wristwatch<フォアワーズ リストウォッチ>。あなたが付けているものと同型のもの。あなたのお父さんが私用にスペアで持っていたものを改造してくれたの」

Forwards Wristwatch、通称FW。決まった容量ではあるが様々なものを量子分解し保存、必要に応じて再構築する。簡単に言えば、登録したものを小さな腕時計の中に入れて好きなときに取り出すことが出来るという便利なもの。販売当初はかなり高値で富裕層にしか売れなかったが技術の発展や進歩により低コストで生産できるようになったため最近では一般にも特にビジネスマンなどには必須アイテムとなり広まる。まぁ当然これによる窃盗などといった犯罪も増加したため、脈拍や指紋といった生体認証による使用者の登録と中に入れられるものの制限がつけられた。

「そのFW自体が狙われてるというわけではないんだろう?」

「その通りよ。今はまだ詳しいことは言えないけれど、この中にその狙われているものが入ってるの」

親父のオリジナルモデルは様々な伝手を使い通常販売されているものよりも大幅に制限が解除されており、公的にその使用を認可されたものだ。基本的に公的認可を受けるのは警察や運送会社などで、それ以外で制限が解除されたものは非認可の違法改造品だ。

「そんなにやばいものなのか?」

「危険といえば危険よ。ただ、使用できるのは私だけ。だから私もついでに狙われてる」

「ありがちと言えばありがちか……」

使用できるという言葉の時点で何か機械的なイメージがある……余計なイメージはあとで邪魔になるかもしれないから捨てておくか……。

「まとめると私の現状は以下の二点。一つ、このFWの中に入っているものが主に狙われているということ。二つ、この中に入ってるものを使用するには私が必要、だから私も狙われてるということ。以上よ」

そう言うと少女は右腕を引っ込めFWを左手で大事そうに胸元に抱える。

「狙ってるやつらはわからない……か」

「わからないというより多いのよ。人種は多種多様。個人であったり、組織であったり。その都度まちまち」

「はぁ……。やっかいというかなんというか。とりあえず今んとこの唯一の親父の手がかりがアンタになるわけだからどうすっかなぁ」

俺は一息つくように前の方に重心がいき猫背気味だった身体を軽く伸ばしてソファの背もたれに身体を預け天井を見る。

「そうそう、あなたのお父さんから伝言」

「先にそういうことは言ってくれ」

上に向けたばかりの顔だけを前に戻して目線を少女に送る。

「もう少ししたら連絡一本入れるから、とりあえず頼んだ。だそうよ」

「なんだそりゃ……。親父らしいったららしいけどな」

「それで依頼受けてくれるの?くれないの」

「受ける、受けるよ」

「ありがとう」

「じゃあ、これから護衛にするにあたっていくつかの質問に答えてくれ。プライベートな部分も多少するから答えられない部分には黙秘で。出来る限り答えてほしいが」

「わかったわ」

「まずは名前。なんだかんだで聞いてなかったからな」

「名前は……ベアトリス。たまにベアトリーチェとも呼ぶ人がいたわ。特に親しかった人、あなたのお父さんなんかはビーチェって愛称で呼んでたわね」

「FamilyName、苗字は?」

「……言えない」

「早速黙秘か。まぁ名前だけでもわかればいいか……」

そんな感じで他にもいろいろ聞いてみたものの基本「言えない」「わからない」のオンパレード。年齢も聞いてはみたものの「レディに年齢を聞くなんてなってないわ。何なの?年齢に何かあるの?ロリコンなの?」と言われたときは本気で怒りそうになった。

ということでわかったことは以下の点。

その一、名前がベアトリス。愛称はビーチェ。

その二、親父とは何週間か行動をともにしたときにここを頼れと言われたこと。

その三、本当かどうかは怪しいが他に身内は無く、何者かに狙われているということ。

以上この三点。

「OK、ベアトリス。それで俺はどうすればいい?」

「ここに置いてほしいの」

身内がいないという時点でなんとなくそんな回答は予想していたがどうしたものか。と考えているとベアトリスは言葉を続ける。

「私をここにおいて護衛してほしいの。そこで提案するのは以下の三点。一つ、ここに置いてもらうためにあなたの仕事の手伝いをする。二つ、手伝いの分の給料は依頼料にしてもらうわ。三つ、あなたの身の回りの世話をする。以上よ」

「依頼料はそうだな。親父からの部分もあるからベアトリス、君の生活費分を給料から引くことにするか、と言っても君の能力がどれほどのものなのか俺にはわからないんだが?」

「査定期間を頂戴」

「わかった、じゃあ行くかベアトリス。コートは洗ってそこに掛かってる」

そう言って俺は立ち上がり出入り口に向かって歩き出す。すると少女も掛けられていた白いコートをトテトテと軽い駆け足で取りに行き、ばっと広げるように着ると俺の横に付いて歩きだす。

「ビーチェ」

「え?」

「これから一緒に仕事したりするのだからビーチェでいい」

「了解」

親父が俺によこした少女。

現在の親父の詳しい情報はわからなかったがそれでもこの子をそばに置いていれば連絡が必ず来る。そうだな、連絡がきたらどうしようか、とりあえず怒鳴っておこう、うん。

無機質なアルミのドアを開き一歩前に足を踏み出す。

後ろから続くようにコツコツと響く軽い足音。

自分以外の足音をこんなにも近くに聞いたのは久しぶりだった。

「で、どこに行くの?」

「おいおい、聞くの遅いだろう」

「それだけ信用してるってことにしておいて」

「了解、とりあえずペット探しの依頼だよ。依頼主のとこに行ってから情報屋に行く」

「そう。……ところであなたの名前なに?」

「そういや、自己紹介すらしてなかったか」

「うん」

「看板見りゃ苗字がわかると思うが名前はまもる守だ」

「守……ね。これからよろしく」

横目で左隣を歩く少女を見ると透き通った宝石のような蒼い瞳はまっすぐと前を見ていた。

「よろしくするのはこれからの働き次第だ」

「まかせなさい」

自信に満ちたその声に俺はどこか不安を拭いきれなかった。

と、今更ながらFWにメールが来ていたことを思い出し、ビルの入り口で足を止める。

「どうかしたの?」

俺は左腕のFWを操作してメールを読む。

「届け物があるらしい、俺とビーチェに。ということで情報屋の方から行くわ」

「守と私に?」

「親父からだってよ」

俺はきびすを返してビルの地下へ向かう階段へと足を進める。

「外に出るんじゃないの?」

後ろからビーチェは戸惑いながらも付いてくる。

「まぁすぐにわかる」

俺はそういってボイラー室とかかれた扉を開き、電気もつけずにさらに奥へと足を進めた。

ビーチェはとうとう不安になったのかちょこんと俺のコートの端を掴んで暗闇の中、おぼつかない足取りでけれど、しっかり付いてきている。

ガチャンという重いドアの閉まる音の後、完全な静寂と暗闇が俺たちを覆う。

ビーチェはさらに怖くなったのだろうか、コート越しにだがぎゅっと掴む手を強くした感じがした。

「さてと……じゃあやるか」

俺は左腕のFWの画面の外枠のギアをカチカチと音を響かせながら回す。

メールのときもそうだがギアをまわすことで様々な機能を利用することが出来る。

FWには簡易的なホログラムが内蔵されており、画面を基点にホログラムが展開されてそのホログラムを直接触ることで複雑な操作を行うことが出来る。

「何するの?」

「まぁ見てろ」

俺は不安そうなビーチェが驚く顔を想像……出来なかった。が、とりあえず映し出されたコード入力画面に宙に絵を描くように、どこかの指揮者のように右手の人差し指を躍らせる。

「『UnderGround Main User:CROWN GuestUser:』……あ~ビーチェ」

「何?」

「ビーチェの名前のスペルって何?」

「B・E・A・T・R・I・C・Eだけどそれがどうしたの?」

「いや、扉開けるのにネームがいるんだよ」

「それってログ残るの?」

「ああ、そうだが」

ホログラムの光でおぼろげに見えるビーチェはまた何か考えているのか左手で口を隠すように、けれど右手はしっかり俺のコートを掴んでいる。

「……ん」

軽く俺のコートをちょんちょんと引っ張る。

「どうかしたか?」

「ネーム適当につけて、ただ本名は使わないで」

「了解」

といったもののどうしたものか……。まぁそうだな。

「『GuestUser:Sleeping Beauty』」

「それ、何かのあてつけ?」

「特に思いつかなかったんだよ、送信っと」

『登録済みForwardsWristwatchからのログインを確認しました。これよりゲートを開きます』

俺のFWから無機質な棒読みの機械音声のアナウンスの後、目の前の暗闇が光によって分断され、徐々に光が広がる。

「おぉ~」

ビーチェは興奮したのか冷静ないつもの表情を忘れ、無邪気な年相応な子供の好奇心の溢れた目でその光景を見ている。俺のコートを放すのを忘れ、引っ張っていることすら気づかず胸元へ右手を持っていっている。

「伸びるからあんまり引っ張るなよ~」

俺の声に我に返ったのか。

「あっごめん」と顔を少し赤くしてコートから手を放した。

「ほら、行くぞ」

目の前に開けた白い通路。俺はいつもどおりに足を進める。ビーチェが俺の後を追って駆け足で左横に付き、歩き始める。

もはや定型になりつつあるなぁと考えながら横で不思議そうにきょろきょろしながら歩くビーチェは俺のコートを無意識で掴んでるあたりまだ不安なんだろう。

白いとさっきは言ったが白塗りの壁や床ではなく、スモークガラスのようなパネルの裏に光源があり、その光が淡く光る白い通路を作り出している。

俺とビーチェはその通路をただまっすぐに歩き続け、やがてさらに下に向かう階段が見えてくる。

階段の前にたどり着いたところで一時停止。

「まだ、下に向かうの?」

「ああ、ここを降りたら面白いかどうかはわからないが興味深いものが見れるんじゃないか?」

「そう……」

「疲れたか?」

俺がそう聞くとビーチェは首を左右に振り、俺の顔を、目をしっかり見て

「全然」

その顔は強がって言っているようでも、興奮で自分の疲れを忘れ、はしゃぐ子供が言っているようでもある感じでなんかかわいい……って俺は別にロリコンじゃない、うん。

左手を自分の胸の高さまで軽く上げビーチェの頭のほうへと向ける。ビーチェは何かされるのかと少し驚き、怯えるように目をぎゅっと瞑って少し震えている。

つい流れで頭を撫でようとしただけなのだが、手を止めてこれまでビーチェがいた環境を少し考えてしまう。

「ふぅ」

俺は軽く息をついてそのまま頭を撫でやる。

「……あっ」

わなわなとした震えがすぅと消えるかのように止まり、ぎゅっと瞑っていた目がそっと開らかれる。

俺はやっぱり『子供は子供か……』と考えながらどこか暖かい気持ちが広がる。自分の子供ころ親父はこんな気持ちで俺の頭撫でてたのかな……。

ビーチェは不思議そうに俺のほうを見ながら今度は安らぐように目を瞑りうつむき気味になって大人しく頭を撫でられている。

少しの間でこうしてやるかと頭を優しく撫でているとビーチェの目の端からすっと頬を流れる。

何が?

涙。

「おっと、わりぃどこか痛かったか」

「ううん、そうじゃない。そうじゃないけど……」

突然のことで慌てる俺。

ひとつ、またひとつと流れる涙を拭ったビーチェはその様子を見て

「ぷっ……な、何してるの守?くっくく……」

慌てて何とかしようと右往左往する俺を見たビーチェは笑いをこらえながら言う。

「あ~っ。その、なんだ」

そう言って俺はビーチェの髪を掻き乱すように少し乱暴に撫でる。

「わっわわっ」

強すぎたのか手を放した後、ビーチェは軽くふらついている。

俺は軽くしゃがんでビーチェに背中を向け、肩を軽く叩く「ほら、乗れ」

「へ?」

「肩車だよ。さっきは全然とか言ってたけど実際結構、キてんじゃないのか?」

「全然、大丈夫だよ!」

「いいから乗れ!」

と少し強く言ってみると小さくしぶしぶといった感じに俺の肩に足をかけて頭に腕を乗せる。

「ちょっと揺れるぞ」俺は軽くビーチェの足を押さえて立ち上がる。本当に乗っているのだろうかと思うくらいビーチェは軽かった。

「わ、高い高いよ」

「そうか、じゃあ行くぞ」

「う、うん」

俺の上に乗ったビーチェのどこか弾んだ声を聞きながらゆっくりと階段を下りていく。地下への階段は長いと思っていたが視点の位置が変わって、楽しいのかビーチェは気分がいいというように良く俺に喋りかけてきては俺が適当に返事をしての繰り返しでいつもは長く感じていた階段があっという間に終わり少し広い広間に出ると新たな扉が見える。

「G-3?」

「そう、G-3がUGでのうちの住所だ。覚えておくといい」

「わかった」

「じゃあ行くぞ」

ビーチェの「うん」という返事を聞いた後、俺はG-3と赤字で大きく書かれた両開きの鉄製のシェルターのような扉の前に立ちFWの機能をまた起動させる。

『認証確認しました。それではお入りください』

鈍い音を立てながら扉が横に開いていく。開ききった後、俺はビーチェを肩車したまま一歩踏み出す。


まだまだ?続くと思います。

気力が続く限り、または好評だった場合がんばって書きますね(*・ω・)*_ _))ペコ

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