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巡り香る小瓶

陽菜はきれい好きな女の子。

掃除だけでなく、棚の上や引き出しの中の整理整頓も大好きだ。


ある日、冬に向けてクローゼットの掃除と整理をしていると、奥から昔の宝物ボックスが出てきて、中に小さな小瓶を見つけた。

小瓶には乾燥したラベンダーが詰められているが、香りはほとんど飛んでしまっていた。

「……懐かしいな……」

陽菜はそうつぶやき、小瓶を手に取り、目を細める。

弱くなった香りを残念に思いつつ、ふと、胸の奥で何かが引っかかる。


これ、どうしたんだっけ……?


いつどこで手に入れたのか、まったく何も思い出せない。

キッチンで夕食の支度をしている母親に聞きに行くも、母親は見覚えがないという。

「お父さん、何か知ってるかな」

「あの無骨なお父さんが知ってるとは思えないわねぇ。そういう、いかにも女の子っぽいもの」

夜、帰宅した父親に聞いてみたらやはり知っているはずもなく、陽菜はもやもやしながら眠りについた。



翌日。

陽菜はダメ元で、隣のおばあさんのところに小瓶について聞きに行ってみた。

陽菜のことを、実の孫のようにかわいがってくれているおばあさんだ。

「あらあら、いらっしゃい、陽菜ちゃん。その小瓶? そうねぇ……私が買ってきたものかどうか、旅行のアルバムとか探してみるから、しばらく貸してもらえる?」

「うん、じゃあ、はい」

何か手がかりがあればと思い、陽菜はおばあさんに小瓶を渡した。



小瓶を預けて三日後、陽菜は学校から帰って自宅に入ろうとしたところを、隣のおばあさんに呼び止められた。

「陽菜ちゃん。これ、使ってもらえると嬉しいんだけど……。あ、いけない。お鍋に火をかけたままだったわ。それじゃ、またね、陽菜ちゃん。ずっと、ずうっと……ありがとう」

おばあさんは陽菜に袋を手渡して微笑むと、そそくさと家の中に戻ってしまった。


北風の中、ひとりぽつんと立ち尽くす陽菜。

小瓶について尋ねる間もない一瞬の出来事に、首をかしげた。


私、何かお礼を言われるようなこと、したっけ……?


家に入り階段を上がって、自分の部屋で袋を開けると、暖かそうな手袋が見えると同時に、ふわりと懐かしい香りが広がった。

「!! この香り……!!」

手袋を取り出し、袋の底にあの小瓶を見つけて手に取った瞬間、

「ああ、そうだ。なんで忘れてたんだろう……!」

陽菜はすべてを思い出し、小瓶を胸に抱きしめた。


その日の夜は、

「あした……おばあさんに……おれい…………」

枕元に小瓶と手袋を丁寧に置き、陽菜は安堵の眠りについた。



翌日。

休日なのに、朝から外が少し騒がしい。

いつもより早く目が覚めた陽菜は、階段を下りてリビングに向かい、母親に尋ねる。

「おはよう、お母さん。外、何かあったの?」

「あら、早いわね、陽菜。今日はお隣で引っ越し作業みたいよ。さて、ちょっと早いけど、朝食にしましょうね。着替えてらっしゃい」


母親に促され、陽菜は着替えに部屋へと戻った。

着替えて、ドレッサーで髪のチェックもする。

鏡には、ベッドと、枕元の小瓶と手袋が映り込んでいる。

「……あの手袋と小瓶……?」

少し気になったものの、今はそれより気になることがある。


お隣さんか……私たちがこの町に引っ越してきてから、ずっと空き家だったもんね。お友だちできるといいな。



丁寧に部屋のドアを閉め、期待に胸を弾ませながら、陽菜は階段を下りていった。

おとめ座はきれい好き

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