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終 師の墓前に花を
マスマロウの街にある共同墓地の片隅に、比較的あたらしい墓石が立っていた。墓石に刻まれた名前は「ヴァスクヴェイン・アルテリオ治療魔術師」。享年七十一才、そして命日である五年前の秋の日付が記されていた。
「長らく、来ることができなくてごめんなさい、師匠」
サーシャは、マスマロウの街の市場で買い集めた花束をそっと墓石に供えた。丁寧に墓石とその周囲を整えながら、故人を偲ぶ。
「わたしも十八になりました。師匠のおかげで、今はわたしも治療魔術師として生きていくことができます。……治療魔術は、ほんとうに難しいですね」
サーシャが治療魔術師になって二年と少し。その間に、簡単に治療ができる症例も、為す術もなく患者が亡くなる症例も、断腸の思いで多忙なパンクレアス老師に助けを求める症例も、それぞれ多く直面してきた。毎日、目の前の患者に真剣に対応するのが精一杯で、師匠やパンクレアス老師のように、不治の病と呼ばれる大病に関して研究を行うような余裕などとてもない。
「でも、師匠の教えのとおり、諦めずに道を模索し続けようと思います。わたし、治療魔術師をしていて幸せですから」
墓地の入り口から、サーシャを呼ぶ声がした。そのうちまた来ます、と墓石に声をかけると、サーシャはさらなる幸せに向かって歩き出した。




