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エピローグ


お見合いをしてから6ヶ月─────


私と貴光さんは結婚式を挙げ、ようやく夫婦となれた。

今日はいわゆる結婚初夜と呼ばれるものだ。


つまり、今晩私は貴光さんと…………



ダメだっ……緊張して手の震えが止まらないっ。

どうしたらいいの?

これでもかってくらい体は洗ったし、下着は新品のにした。

あとなにかしとくことってある?



貴光さんは今お風呂に入っている。

ヒヨコはベッドで大人しく待っていろと言われたけれど、大人しくってどう待てばいいの?


座って待つの?

寝て待つの?

寝巻きは着てていいの?


いや、そもそも裸で待つとか出来るわけないし、着ておこう。


じゃあ貴光さんの目の前で自分で脱ぐの?

どの過程でっ?

それとも貴光さんが脱がせてくれるとか……?

それってちょっとヤラシ過ぎやしないっ?


ああもうっ、考えれば考えるほど大混乱だっ!!



「櫻子姉様に寝間での作法を聞いとくんだったあ!!」



頭の中でちっちゃい私がドタバタと走り回ってる~っ!!

やがて貴光さんがお風呂から上がってきた。





「……まあ、予想はしてたがな。」




貴光さんが呆れ顔で見下ろすベッドには、私がぐうぐうと寝息を立てている姿があった。

そう、私…貴光さんを待ってる間に寝ちゃったようで……

だって今日は神社で神前式をしたり、親族も交えての披露宴があったりと気を張って大変だったんだもん!

疲れてたんだよ───っ!




「……幸せそうな顔して寝てやがる。」




貴光さんはベッドの縁に腰を下ろすと、寝ている私にそっと接吻くちづけをした。



















大正時代と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?



明治の後、昭和の前……

これしか思い浮かばない人も多いと思います。


今からおよそ百年前。

大正時代はたった15年しかありませんでしたが、様々な変化や出来事が起こった時代でした。




まず着るもの。

明治時代では和装である着物が主流でした。

それが大正時代になると動きやすいようにと警察官、貴族、学生を始めとした男性の服装が和装の着物から洋服へと変わっていきます。

女学生のセーラー服も、この時代に生まれました。




次に食べ物。

今では大人気のビーフシチューやカレーライス、オムライス、パスタなどは、この時代から広く庶民にも食べられるようになりました。



食べ物以外でもカタカナで明記する外来語が爆発的に増加し、車などの乗り物も公共の場で多く見られるようになりました。

自転車が作り出されて人々が乗るようになったのも、この時代からです。


とにかく、西洋文化が日常生活に入り混じり始める時代でした。




それに激動の歴史と呼ばれるほどさまざまな出来事が発生しました。


人類最初の世界大戦である『第1次世界大戦』

関東地方を襲った『関東大震災』


民主主義の発展を目指した『大正デモクラシー』

女性の権利獲得も声高に叫ばれました。




このように短くも濃密な時代だったのですが、恋愛の方となると多くの方がまだまだかなりの奥手だったようで……


今のような恋愛結婚は一部のみで、自由恋愛という考え方が出てきたものの…その多くは憧れだけで終わるものでした。

親が決めた相手とのお見合い結婚が主流だったのです。




女学生の間では『Love is best.』~愛より大事なものはなし~なんて言葉がまことしやかに流行っていたとか……






明治、大正、昭和、平成…そして令和─────




今では恋愛結婚が当たり前ですが、大正時代の人から見たらそれはとても羨ましい限り……なんですよ?





でも……



この時代だからこそ見えてくる愛のカタチが、あったのかも知れません─────

















やってしまった……

なんてこった。大失態だ!!


一階に降りるとすっかり身支度を整えた貴光さんが、新聞を読みながら優雅に珈琲を飲んでいた。


「昨日は寝てしまい申し訳ありませんでしたっ!」

「謝らなくて良い。ヒヨコも疲れていたのだろう。」


……怒っている様子はない。ホッ……

ルーシーさんがヒヨコちゃんも食べなさいと言って朝食を持ってきてくれた。



「あのっ…朝起きたら首元に虫刺されの跡が沢山ありまして……貴光さんは大丈夫でしたか?」

「それは俺が吸い付いて出来た内出血の跡だから大丈夫だ。」


「あっ、そうなん…で……」





………はい?


………今、なんと?






つまりそれは貴光さんの唇が直接私の肌に触れたということで合ってますでしょうか……?


それって……

全然っ、大丈夫じゃな────いっ!!



「あのっ胸元の方まで跡があったのですが?」

「少し脱がしたからな。」


「ぬぬっぬ、脱がしたあ?!」

「無防備に寝るやつが悪い。」



えっ、見られた…どこまで?

どこまで私、見られちゃったのっ?!

貴光さんは私の動揺など知らんぷりでゆっくりと珈琲を飲み終わると、新聞を棒のように丸めて私の頭をポカっと叩いた。



「今日は寝るなよ。寝たら素っ裸にしてやるからな。」



なななっ!!

その人を馬鹿にしたような笑い方……

久しぶりに見たっ!





「行ってくる。」









貴光さんについて分かったこと。其ノ五。


やっぱり、意地悪っ!!









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