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番外編 キャンプ

 あれ、私は今何してるんだろう。そう思うと急に周りの景色がみえてくる。

 

目の前には線路。横から貨物列車の轟音がどんどん近づいてくる気配がする。あ、そっか私駅のホームから落ちてるんだ。不思議と納得しました。落ちていく景色はあんまりにもゆっくりで、スローモーションのよう。私、これから死ぬのか。まだ奨学金返し終わってないし、残業を今日もあんなにしたのに私が遅いから仕事もまだため込んでる。せめて水くらいは飲むんだったな。きっとこれから運転見合わせで大勢の人に迷惑かけちゃうんだろうな。まあ、私がすごく疲れてて駅のホームでよろけたのが悪いんだから、何もかも自分が悪いよね。お母さん、最後まで迷惑かけて親不孝でごめんなさい。





 私が貨物列車に引かれるのと、目覚ましがなるのは同時でした。

「また、この夢だ・・・」縁起でも無い、私が死ぬ夢。

これで何回目だろう、妙に現実感があるんだよね。まだ心臓はドキドキしています。



 まあ、そんなことは置いといて気を取り直しましょう。今日は楽しいことが待ってるんですから!!


 今日、8月11日は涼子の誘いにのって皆でキャンプです。やっと夏休みっぽいことが出来ますね。

昼11時、JR東静岡駅北口に集合です。東静岡駅は雰囲気的に静岡版のさいたま新都心駅だと勝手に思っています。それはともかくテントなんかの大きな道具は涼子の家が出してくれるそうで、本当にありがとうございます。

着替えとかをつめて重いバッグを持ち、電車を降りると後ろの方に未来が。同じ電車だったんですね。


「おはよー★!!」

 向こうも気づいたのか、手を振って大きな声で言ってくれます。可愛いけど!!周りの視線がすごい!

「おはよう!」

 未来と並んでエスカレーターに乗ります。未来は麦わら帽子に黒のスニーカー、水色のトップスです。


 ちなみに私は帽子と黒い服に青いズボン(インターネットで調べた結果こうなった)です。靴は水色のスニーカーです。誕生日に貰った扇風機も持っています。

 改札を出て横の動く歩道を使います。

「沙羅の服、可愛い♥」

えええええええええ!?そ、そういうことさらっという未来はずるい!

「み、未来も可愛いよ!」



 下に降りてロータリーに出ると日陰に楓が。

「「おはよう!」」

「おはようございます~、今日も暑いですね~」

 今日の最高気温は34度、当然熱中症警戒アラートが発令されているのでこまめに水分補給しています。


「あ、おーい!」

 ちょうどやってきた白いアルファードの窓から涼子が顔を出しました。運転は涼子のお母さんです。

「「「今日はお世話になります」」」涼子のお母さんは送迎担当ですね。わざわざありがとうございます。

 「まずは買い出しだよ」

 私と未来は一番後ろ、涼子と楓は真ん中に座って出発です。車は国1を東に入ってすぐの大きな交差点で左折、静鉄の踏切を渡って流通通りを走って行きます。そしてスーパーの静鉄ストアに入りました。

「ハンバーグとパプリカと・・・」食材のレシピと睨めっこしながら買い物。

「マシュマロも買おう」と涼子。

「これとあれ、あれも♪・・・」と片っ端からお菓子をとる未来。

「未来、お菓子買いすぎですよ~」といさめる楓。

 食材費は当然、私達3人が出しました。キャンプ代は基本涼子のお家ですからね。さすがにこれくらいは出さないと。


 車は再び流通通りを北に進み、サイゼに入りました。

涼子は「おーサイゼって初めて入った」と感動しています。ちなみに涼子のお母さんは別会計でカウンター席で食べるようです。

「マルゲリータピザとプリンにしよっ♪」と未来。

「私はスパゲッティとサラダにしましょう~」と楓。

私は時間かかると迷惑なのでさくっと決めました。

「定番のミラノ風ドリアとコーンスープにしようかな」

「じゃあイタリアンハンバーグとご飯にしよう」と涼子が最後に決めました。


「み、皆決まったみたいだからボタン押していい?」と私は皆に聞きました。

「まって沙羅、問題です。三重県と友好州を締結しているスペインの州は?」

 なるほど、答えを言うためにボタンを押せといいたいのね。・・・分かんないよこんなの!!

「正解はこのバレンシア州でした!!ここだね」

「確かに形が三重県そっくりだけど、・・・やるならもっと簡単な問題を出してよ」

 スペインバレンシア州、気になった人は調べてみて下さい。涼子はちょっと考えた後、何か問題を思いついたようです。


「さて問題です、今話題のハッピーグルメ弁当といったら?」

 ピンポーンとボタンを押します「ど ん ど ん?」

「おめでとー!!ハッピートゥゲザー、どんどん、お弁当どんどん!」

「なにこれ・・・」


 しばらくすると料理が来たので、皆でお昼ご飯です。

 「沙羅、口の横汚れてるよ」

 未来は私にハンカチを持った手を伸ばし、口元を拭きました。

「ありがとう・・・」

 食べた後口元が汚いって私の食べ方が汚いってことだよね。と少し気分が沈みながらお会計しました。



 皆で昼ご飯を食べた後、またまた車で流通通りを進み浄化センターの中を通ったら高架のバイパスが出てきます。信号を右折して千代田上土インターから国1の静清バイパスです。高架のこの道路は制限時速60kmですが、実際は100kmで走る車も多いですし、一見すると首都高のようです。

「あ、あれ学校じゃない?」

「ん~、ホントだ!」と未来も見つけました。


 バイパスからも学校見えるんですね。しばらく東に進むと渋滞スポットになります。ここから先はまだバイパスが工事中で信号があるからです。目の前には巨大な工事中の高架があります。

「うわーすごい!」

「確かにすごいね!この前の大阪以来、工事現場を見るのが面白くなったよ★」


 こういうでっかい工事現場は見てると面白いですよね。いつかはこの高架上をたくさんの車が走るようになって静岡を支える、私とは真逆のとっても役に立つ存在となるのです。庵原の交差点を左折して交通量少なめの大きな道を走り、新東名の清水いはらIC手前で右左折、大型の車はすれ違えなさそうな狭い県道を川沿いに進みます。そして右折して急な坂を昇ると狭いトンネルをくぐります。



「うわ、ここもすごい!!」と未来がつぶやきました。


 トンネルを抜けるとそこのはるか上、100mはありそうな高さに高架道路が幾重にも重なっています。新東名と中部横断自動車道、新東名清水連絡路の交点新清水JCTです。私たちが走る道も急に広くなりました。この高架は静岡だけでなく日本中の物流を、生活を支えているのです。すごいな・・・私みたいな役立たずと大違い。


 JCTの下を抜けてしばらく進んで左折、交通量が全くないのに片側1車線の広い道に入りました。妙に新しいトンネルを抜けて、ガードレールで塞がれ奥が途切れた新しそうな橋の手前で右折します。

「うわー、急に狭くなったし道もガタガタ!!」

 未来が叫びます。そしてこの道の違和感は・・・


 車は川沿いに降りていき、「月夜布沢川キャンプ場」と書かれた看板横に出て最近作られたであろう木造の管理事務所横の駐車場に車は止まりました。上の方に茶畑と小屋があるだけで、キャンプ場以外の施設は一切見当たりません。山の中って感じです。

「到着!!」

「おー」


 皆で荷物を降ろします。

「じゃあ明日迎えに来るねー」

 そう言って涼子のお母さんは帰宅しました。


「ここも月夜グループなの?」と未来が聞くと、

「私の会社の山だよ」さも当然のように涼子はいいます。いやいや山を持ってるのおかしいでしょ。

「なんでキャンプ場?月夜って物流でしょ?」

「それはほら、山林を持続可能にするとかSDGsがどうとか・・・」


「それはともかく薪とかはあそこの建物にあるし、中にトイレもあるしWi-Fiも通じるよ、人も(私としては残念だけど)あんまいないし」と涼子。

楓「便利ですね~」

「今回のキャンプは私がバイトしてお金貯めたの」

「そうなの!?」衝撃の事実。

「去年から夏休みはこういうことするようになったの、月夜グループのいろんな仕事させてもらったけど・・・猛暑の中のガソリンスタンド、真夜中のあのバイパス工事現場の車両誘導とか倉庫の荷物運びとかしたけど、すっごい疲れた・・・」

「そっか、ありがとうね!!」


 とりあえず受付で説明を受けた後はテント二つの設営です。木から少し離れた場所に立てるのが鉄則なのでその通りにして私と未来、涼子と楓に分かれてやっていきます。まずテントを広げて丸いところにポールを通します。

「出来た!!」

「うー全然出来ない・・・」

「私がやるよ★!!」


 次に「ペグ」を使って固定します。

「やっぱり全然出来ない・・・」


でも今度は自分がやらなきゃ!自分の力でやらないと、迷惑かけないようにしないと、でもどうしたら出来るかな、頭使って考えなきゃ考えなきゃ・・・あ、ちょうちょだ。大きくて黒くて、なんだか未来みたいで可愛いな。名前なんて言うのかな?どこへ飛んでいくのかな、私もあのちょうちょみたいに可愛かったらいいのに。あ、向こうには小さいオレンジのちょうちょと水色のちょうちょがいる。白いお花で休憩中かな?可愛いなー。なんとなく楓と涼子みたい。私は・・・あの中に入れてるのかな・・・


「ーら、沙羅、おーい沙羅ってばー★!」

「!!あれ、え、えーと何だっけ」

 結局未来に全てやってもらいました。ごめんなさい私が不器用なばかりに・・・

楓「テントも出来ましたし~、川遊びしましょ~」


 そう、このキャンプ場のすぐ下には布沢川という川が流れているのです。さっそくテントの中で着替え。

「じゃーん!」

テントから未来が華麗に登場しました。水色のビキニです!!

 可愛さのハイパーインフレで可愛さ数値が観測可能な宇宙を遙かに超えていく!!

「未来の水着似合ってるよ!」

「あ、ありがとっ♪」

 涼子は黒のハイネック、楓はピンクのフレア・ビキニと呼ばれる水着です。みんな可愛いな。


「ご、ごめんね私だけこんなので」

 そして私は中学校で使っていた青いスクール水着です。いいのがなかったんです。

「いや、沙羅らしくてすっごく可愛いよ♥」と未来は私の写真を連写で撮りました。

は、恥ずかしいよ、連射してまで撮らないで///



 さっそく川に下ります。未来が一番乗り。

「うわっ、冷たい!」

「気持ちいいですね~」

 その後はとにかく楽しかったです。浅いので泳ぐことは出来ませんが、みんなで水をかけあったり水鉄砲を撃ち合ったり写真を撮ったり。私はどうせ泳げませんから都合いいですね。


 疲れたので休憩していると涼子もやってきました。

「沙羅もジュース飲む?これソーダじゃないから大丈夫」

「え、あ・・ありがと!!」

 オレンジジュースを飲みました。

「ねえ涼子」

「ん、何?」

「ここ、何か中止になった開発計画があるんじゃないの?」

「どうして?」

「ここに来るまでの道、JCTの下を過ぎてからおかしい。ここには茶畑とキャンプ場しかない行き止まりの道で周囲に人家なんて全く見えないのに明らかにオーバースペックすぎる、まるでたくさんの車が通ることが想定されていたかのように」

 涼子は熱心に私の話を聞いてくれます。


「次に、道が急に狭くなったとこがあったけど、その手前にあった通れない橋。橋は綺麗なのに、その先で工事をしているわけでもなく森になっていた。まるでこの先まで道を作ろうとしたけどやめたかのようにね」

 ふっと笑みを浮かべる涼子。なんかの犯人みたいな感じ。

「・・・さすが沙羅、そこまで考えられるなんてあなた推理小説家になれるわよ」

 犯人が自白する前のセリフだよそれ。何の犯人ですかあなたは。

「まあ正解、気づくと思ってたけど」

「別にそんな推理力が必要ってわけじゃないでしょ」ここの場合、かなり露骨でしたし。

「そう、実はここにはかつて・・・」そういいながらスマホを操作する涼子。そして答えを見せてくれました。


「あ、二人ともスイカ割りしましょう~!!」と楓がスイカを重そうに抱えて走ってきました。

「あ、私スイカ割りしたことない!」

「で、スイカを割るのは誰がやるの?」と未来。確かに。

「まあ・・・」

『ジャンケンポン!!』



 結果、私になってしまいました。

「右だよ!!」と未来。

「もう少し前に進んでくださ~い」と楓。

「上だよ!」と涼子はふざけます。上ってどこ。

「そこ!!」

「えいっ」棒を思いっきり下ろしました。

 ごんっ。当たりましたが全く割れませんでした。傷一つついていません。




「えいっ~」

 その後のじゃんけんの結果、楓がスイカを割りました。皆で食べるスイカ、おいしかったです。

「もう4時半だ!!」と涼子は言いました。暗くなると危ないし夕ご飯の準備もあるのでそろそろ川から出ましょう。


 着替え終わると夕食の準備です。外ご飯はキャンプの醍醐味ですからね。その前に火をおこさなきゃ。薪は管理棟で購入済み。手袋を付けてのこぎりを石など硬い物で叩いてやると割れやすいんですよね。

「沙羅ってそんなことにも詳しいんだ!」と未来。

「全部有名キャンプアニメの受け売りだよ」この前電車が遅れたとき3人で見たやつです。


 これから作る料理も涼子と一緒に決めたそのアニメの再現料理ですし。4人で分担したら15分ほどで終わりました。私の分は時間がかかって皆に手伝って貰いました。ごめんなさい。その後松ぼっくりに火を付けて無事点火。


 さて、まず作るのはビーフシチューです。私と未来は野菜やお肉を切る係。涼子と楓は鍋をやる係です。まず野菜を洗って皮をむいて、にんじん、じゃがいも、タマネギ、お肉を切るだけです。明日の朝ご飯の準備も兼ねてたり。ところが私は料理がとことん苦手なのです。というより要領が悪いのです。


「涙が出て切れない・・・」「大丈夫そう?」

 なぜか私は野菜で最初にタマネギを切ったせいで涙が止まらないし。

「さ、沙羅、にんじんが全部繋がってるよ・・・」うまく切れないし。

「あ、お肉が!?」

 お肉を1パックまるごと地面に落としちゃうし失敗ばかり。やっぱり私は何も出来ない無能なんだから・・・ひっ、私が全部悪いんですごめんなさいごめんなさいごめんなさい!


 戻ってみると涼子はハンバーグを沸騰しないように慎重にたき火の火加減を操作していました。楓の方のビーフシチューはガスコンロを使っているので簡単、にんじんやじゃがいもなどを入れてもうすぐ完成のようです。

「何かお手伝いすることあるー?」と未来は二人に聞きました。


私も何かお手伝いー


(迷惑なんだよ!)(「余計なことすんな!)(お前役に立たねえな)

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!

 過去の記憶が急にフラッシュバックして、声が心の中で響きました。迷惑・・・私のせいで?私の・・・私は駄目な子だもんね。そうだよね。何思い上がってるんだろう、さっきから私何も出来てないじゃん。

・・・私が手伝ったらまた失敗しちゃうな。手伝いたいけど・・・皆に迷惑かけちゃうよね。



 私はバッグからパックご飯を出してきました。紙皿や紙コップも用意してテーブルに並べる、これが私に出来る精一杯のお手伝いです。

「あ、沙羅用意してくれたの!?ありがとう★」と未来。私と違って皆がちゃんと料理してくれたからだよ!!私なんてこんな誰でも出来るような簡単なことしかしてないし。                                                                                                                                                                                                                                                                            さて、もう全ての料理が揃いました。



 私はビーフシチューをダムカレーの様に盛り付けて頂きます。ハンバーグは別のお皿です。

「いただきます!」

「モグモグ、美味しい★!!」と写真を撮ってからハンバーグを食べた未来は食レポのようにいいます。

「やっぱ皆で作った料理は美味しい」とビーフシチューを食べながら言う涼子。

「そうですね~」とこちらもビーフシチューを食べる楓。ハンバーグの肉汁で出来たランプもいい感じです。

「なんか焼肉みたいな匂い♪」と未来はつぶやきました。まあそうなりますよね。



 もう7時半をまわって完全に夜になりました。空には綺麗な星空。たまに赤と緑に点滅して飛ぶ飛行機も見えて面白いです。

「やっぱりLEDライトとランプだけじゃ暗いな・・・今度来るときは投光器か照明車持ってこないと、いや今から照明車を手配しても・・・」とぼやく涼子。

「それは明るすぎるしムード台無しだからやめて」

 工事現場かな?そして涼子は冗談じゃなく照明車が来そうだから怖い。


 そして雑談の中で怪談が始まりました。

「皆さんご存じですか~?学校の1号館に中央階段ってあるじゃないですか~、あそこで楓~、幽霊見ちゃったんですよ~」

「ええ!!」皆で怖がります。ちなみに私は怖いのなんて大嫌いです。なので既に周りの暗さが怖いです。

「冬の夜6時前くらい、階段に動く真っ白い何かがー」

「「きゃああああああああああ!!」」そして未来も意外ですが怖がりです。


 続いては涼子。

「これは私が先輩に聞いた話なんだけどその先輩の通う大学ではとある怪談話があるの」

「大学を建てる前、そこはうなぎの養殖場だったの。だからたまに出るんだって」

「え、まさかそこで溺れちゃった人が・・・!?」と未来。ううう怖いよ。

「そう、うなぎの幽霊だよ!!」

「・・・」

「・・・」

「うなぎが飛んでても心霊現象じゃなくて珍現象だと思いますね~」うなぎが飛んでても驚くけどあんまり怖くないよね。

 沙羅のエピソードの9.5割は創作なのでご安心ください。


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