日本が南北に分断された世界線13
私と未来は茨城県のヘリポートへ、そしてそのまま警察のバスで東京都の桜田門・警察庁へ運ばれました。警察庁の入り口にはもう大量のマスコミが張り付いていました。そして警察官に連れられるとー
「お母さん!!」
「沙羅!!」
私はお母さんに抱きしめられました。
「大丈夫、怪我はない!?」
「私は大丈夫だよ、お母さん」
なんだかすごく安心して、また涙が出てきました。お母さんも泣きながら答えます。
「もー、本当に心配したんだから」
「ニャン・・・」とバッグからお母さんが出してきたのは猫さんのぬいぐるみ。そっと「ただいま」って言うと「おかえり」って返してくれた気がして嬉しくてぎゅっと抱きしめました。
未来の方を見るとお母さんお父さんに抱きしめられ、私と同じように泣きじゃくっていました。未来のお父さん優しそうな人だなー、未来のお母さんも綺麗な人です、私のお母さんには負けるけどね。
「2人とも無事で良かった!!」「未来も沙羅さんも、おかえりです!!」
私達とお母さんの様子をずっと見てたであろう涼子と楓が、涙の跡を残した笑顔で後ろからそっと出てきました。
「「おかえり!」」
「「ただいま!」」
何があったか聞くのは午後からにして(もう日をまたいでた)、涼子が予約したホテルで眠りました。窓から見える夜景はあの札幌と違って偽の、作り物じゃない本物の首都でした。ちなみにもう8月9日でした。夏休みを結構使っちゃったな。
「それで涼子さん凄かったんですよ~」
警察庁に向かう車の中で楓からあの事件の後の涼子の話を聞きました。
「二人とも遅いねー」
「本当ですね、どこ行ったんでしょうか~」
「もしかして告白とかしてるんじゃ、ついてけばよかったかなー!」
「あの2人がそんなすぐに告白するとは思えませんけど・・・」
そう言いながら二人のスマホのGPSを確認するとなぜか倉庫街にありました~。
「ここの倉庫は使ってなかったと思うんだけどな・・・」と涼子さん。
「それにしてもさっきからサイレンすごくないですか?」
外を見るとパトカーがまた1台走って行きます。
「とりあえず二人に電話やLINE通じないし、GPSのとこ行ってみようよ、スマホ落としちゃったのかもだし」
というわけで行ってみたのです、が・・・
「ここ・・だよね・・・!?」
「うん・・ここのはず・・!?」
その倉庫の前にはパトカーがたくさん集まっています。まさか、二人に何かあったんじゃ!?
「「ら、拉致!?」」警察に謎の無言電話が入ったそうなのです。しかしその電話からかすかに「助けて!!」という女性の悲鳴と男の声がしたそうなのです。スマホのGPSから場所を割り出して現場に来たらしいのですが・・・
1人の警察官が私たちの横でちょうど発見したようです。
「スマホが側溝の下に落ちてます!」
側溝を開けて確認したそれは・・・
未来のスマホでした。
すぐに私たち二人はそのことを警察官に話して警察署に行きそのまま事情聴取。そして未来ともう一人、いなくなった沙羅さんのことを話しました~。
清水警察署を出る頃には午後6時になっていました。
「二人とも大丈夫ですかね・・・」
「許せない、二人を、沙羅を拉致するなんて!!」涼子さんが見たこともないほど怒っています。
「りょ、涼子さん・・・」
「月夜グループのお膝元で拉致?舐められたものねー、敵に回すとどうなるか思い知らせてあげようじゃない!!」
そういう怒り方ですか?
清水警察署の前にいつの間にか待機していたタクシーに乗り込み草薙駅に向かいます。涼子はお父さんと電話し始めました~。
「楓、着いてきて!!」
タクシーを降りると、涼子さんは駅ではなくいつも学校から見える4階建てのビルに入ります。
「こっち!!」
「え、どこですかここ!?」警備員さんの後ろにとりあえずついて行きます~。
そして厳重な扉を3回くぐって地下への暗い階段を降りしばらく進むとー
「な、なんですかここ!?」暗い部屋の中には人がパソコンを何か操作して作業しています。そして壁には何台もの画面があり、道路やビルの入り口、商業施設の中の映像が流れています。時計はどれも事件のあった昼の12時頃です~。
「ここは、月夜警備の超重要機密であり心臓部・・・らしいよ初めて入ったけど」涼子さんは宣言します~。絶対この楓のような部外者が来てはいけない場所ですね~。
「ふー、『お天道様』試験運用といこうじゃないの」そう言った涼子さんは恥ずかしそうに映る沙羅さんの写真を写しながら自分のスマホを機械にかざします。『お天道様』・・・確かこの会社が開発した最新の防犯システムで、連携した防犯カメラやドラレコやスマホから人物を探せるっていうあのシステム!?通称名以外はすごいシステムですよね・・・あれ、楓どこでこのシステムの話聞いたんでしたっけ・・・?
「この子を探して欲しいの・・・お願い!!」
一つの画面がクルクルした後、最新の検索結果は今日のお昼頃倉庫近くに駐車していたトラックのドライブレコーダーでした。
「うーん、じゃあこの映像が撮られた後にこの地区で不審な動きをするクルマとかはいない?」
2,3分かけてでてきたのはこの倉庫地区に入ってわずか2分で元来た方向に戻る黒いクルマ。
「よし、じゃあこのクルマはどこに行ったのかな?」
そして何度も探すことを繰り返してー、クルマを乗り換えていたり中部横断道ですぐに静岡県を出ていたので対応したカメラやドラレコ搭載車両が少なかったことも相まって時間がかかりました。(なおいつの間にか日を跨いでいて朝6時くらいでした)
最後に出てきたのは那須町の役場付近を走っていたトラックのドラレコに映っていたすれ違うクルマでした。
「こっちって・・・まさか」
こんな感じで北日本への拉致だと分かったんですね~。
「私が凄いんじゃなくてお父さんが凄いの!お父さんが関係するとこに電話して用意してくれたおかげで」と謙遜する涼子。
「涼子・・・ありがとう!!」
「いや別に友達のためだしこれくらい当然、そもそもお父さんがやったことだし」
(でもこんなことになるならこっそり二人の後をついてけば良かったな、そしたら警察が速攻来て捕まえられたのに)と思う涼子。
外の電光掲示板には、「拉致された女子高生二人 自力で脱出」の文字が。
「でも凄いよね、二週間で二人とも帰ってくるなんて」と涼子。
「あれは勝子さんのおかげだよ、あの人がいなければ今頃・・・」
そう、未来の言うとおり全部勝子のおかげです。勝子がいなければ私たちはあの独裁国家で一生を終えたのでしょうから。
「それって船に乗ってたもう一人の事ですか~?どういう流れでそうなったのか、教えて欲しいです~!!」
「そうだよ!!二人にも会わせてあげたいな、経緯はかくかくしかじかで・・・」
「へえ、そうだったんだ!!」「二人の命の恩人、会ってみたいですね~」
警察庁での長い事情説明の後、ようやく静岡に帰還することが出来ました。私を連れ去った二人は、日本に戻ってきたところを逮捕されたようです。そういえば新幹線で静岡駅へ移動する道中、この3週間の出来事を見たのですが私と未来がアイスをなめながら歩く防犯カメラ映像が全国に流れたらしく、それを見てすごく恥ずかしくなりました。当然私と未来の顔写真も全国に流れた様です。
ネットの(帰還したニュースの)コメント→「二人ともすごく可愛い」「かわいい」
ですよね!!未来は本当にすっごく可愛いです!!やっぱりみんなそう思ってくれるよね。未来の可愛さは世界一、いや宇宙一!
でも未来の可愛さは知られず、「幻の秘湯」のような風にした方が良かった気もする自分がいます。どっちがよかったのかな?
「女子二人でアイスを舐め合ってるの・・・いい!!」「百合の花が咲いています 大切にしましょう」
周りから見たらそんな感じなの!?いや全然違うんだからね!そもそも私と未来とかどう考えてもつりあってないでしょ!
「俺もアイスになって舐められたい」
・・・見なかったことにしましょう。
それはともかく、パリ五輪がいろいろ大変だそうですが、南海トラフ地震臨時情報が発表されていたのには驚きましたね。ってか今も出ているので新幹線遅いんですけども。
<北日本側が誘拐の際使用したと思われる密かに建設していた工作用トンネルが発見されました。このトンネルは長さ3km、トロッコの走行が可能な程の大きさでー>
<茨城県沖の軍事境界線付近で発生した小規模な軍事衝突を受けてアメリカ国務省は状況が緊迫していることを懸念し、中国やロシア政府に対し『米政府は日本に自制を促しているので、北日本側の自制を求め、緊張を緩和する方向で努力してほしい』と異例の要請を行いました>
<NNNの行った世論調査では、大統領支持率が5%上昇しました。大統領の北日本への強硬姿勢と折からの裏金問題で批判が集まっていた自民党ですが、今回の事件は思わぬ追い風となったとみられます。この事件は今後の自民党総裁選にも大きく影響するとみられー>
静岡駅に着いたので涼子とお別れして、楓と一回少し離れてから未来と私の二人きりになりました。(お母さんは一本前の新幹線で帰りました、仕事ですからしょうがないですね)
「さて、このタブレットを使うときが来たね」と未来はタブレットを取り出しました。
「いろいろあったけど、ここが一番だね!!」資本主義、自由の空気は最高です。
「勝子、また会いたいな」
「そうだね」
「結局、社会主義なんてろくなもんじゃないってことだね」
「そんなことないよ!!世界で唯一成功した社会主義国家と呼ばれるとこだってあるんだから」
「へぇー、どこの国なの!?気になる!」
「その国は護送船団方式と呼ばれる方式で、国が産業を保護することで過度の競争を避けて、産業を育て安定的な経済成長をしたの」
「へー、すごいね!!」
「あとその国では小作人と地主の関係はなくて自由に農業ができて、企業でも労働組合と経営側が協力して会社を発展させたの!」
「おぉー」
「さらにずっと同じ政党が派閥争いをしながら交代してて、野党や関係団体とうまいこと利益配分をしてるの」
「癒着してるね、あれどっかで・・・」
「さらにさらに終身雇用で手厚い福利厚生、失業して仕事がどうしてもなくても税金からお金が支払われるの」
「ん?」
「なんと国全体に学校が整備されていて誰でもタダで義務教育を受けられるし、病院も国民皆保険で安く済ませられ、さらにインフラも全国に巡らされているの」
「・・・日本だよねこれ!!」
「うん、60年代から80年代の日本はだいたいこれだね」
官僚制社会主義国家とも呼ばれるこの国。
本当につくづく日本は社会主義が向いてる国ですね。そんな私もこっちを知ってるからそんなこといえるんでしょうね。産まれたときからああだったら私も未来もすっかりその洗脳に染まってたでしょう。もし勝子の話を聞いてもたぶん「なんであの素晴らしい書記長様のことを疑うんだろう・・・怖い人」と思って当局に通報してたんでしょうね。そう思えば勝子はよくその洗脳から抜け出せたモノです・・・すごいな。
「そういえばドイツも分割されたんでしょ?でもその後戻ったんだよね」と未来がまた調べたのか聞いてきました。
「西ドイツと東ドイツに分かれて、首都ベルリンもベルリンの中だけ分割されたんだけど1989年にベルリンの壁が崩壊して1990年に再統一されたの」と説明してみる。
「再び統一された、っていう世界も見てみたいな」
「確かに、じゃあやってみようかな」
もう少し続きます。




