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日本が南北に分断された世界線11

 作者は兵器に無頓着です。

「さあ、突入するわよ・・静かにしててね」

 勝子は無線を繋ぎました。この先の海域には普段から北の軍艦がいるそうですが、私たちの拉致事件発覚や南北連絡道路破壊、度重なる弾道ミサイル発射により南の日本政府が激怒。軍事境界線付近に大規模な空母機動部隊や潜水艦隊を派遣したため、北も軍事境界線付近に軍を派遣しているそうです。そのため普段から海岸警備局がうろうろしているこの海域は超厳重警戒の状態。というか戦争状態になってもおかしくありません。


 ちなみに北日本海軍の本拠地は択捉島と青森県の大湊です。





「こちら工作船 第二大栄丸 これから南に極秘任務で潜入するためこの海域を通過したい どうぞ」

「こちら太平洋艦隊631番 そのような報告は聞いていない」

「これは緊急の極秘任務である 通してもらいたい」



 しばらく無線が途切れた後、「了解した」との連絡がありました。そして窓からこっそり見ていると、私たちの船は大きな軍艦に近づいていきました。あれは1970年代に建造された釧路級フリゲート631番艦なんだそうです。砲が2つあるようですが、雨で視界が悪くてあまり見えません。

「ふー、意外とあっさりだね」

「大丈夫かな、でも良かった・・」



 ふー、と安心して下を向くとそこにはコンセントが。あれ、このコンセントどこかで見たような変な形をして・・・


「勝子!!あのコンセントってもしかして」

「え?・・・ーまさか!?」

「え?なに?」と未来。

「あれはコンセント型の盗聴器よ、迂闊だったわ」


 そう、あの招待所にあったものと同じ盗聴器だったのです!


「盗聴・・・てことは今までの会話全部」と未来は顔を真っ青にしていいます。

「逃げるわよ!!」


 勝子がそう言って盗聴器を踏んづけて破壊したのと600mくらい前の軍艦がいきなり火を噴いたのはほぼ同じでした。轟音とほぼ同時にいきなり周りにものすごい水しぶきが上がります。


「たぶん今のは威嚇射撃ね、次は当てるぞと言いたいのね」


勝子は船のスピードを一気に上げました。軍艦は私たちの進路を塞ぐような形になっています。

「でもどうして今になって私たちを?」と未来。


「あの軍艦が問い合わせたときに、連絡を受けてこの船が盗まれたことに気づいたんじゃない?それで盗聴器を聞いてみたら・・・」

「まさかの越南だったと」


 もう二発、続けて発砲しました。船は猛スピードで逃げていきます。

「ちょっとだけ船の舵をしてくれない?」

「「え」」

「じゃああたしが目になるから沙羅は舵して!あの東京のアトラクションの時とかマリカの時みたいに!」

 未来は覚悟を決めたようです。・・・私もやらなきゃ、だよね・・・?失敗して転覆して全員死んだらどうしよう、あともうちょっとなのに・・・


 「大丈夫!!沙羅ならできるよ!!」


「・・・自信ないけど、が、頑張ってみる!!」


 私が言われるがままに半ばやけになってどうにかして舵をきる間に、勝子は後ろで隠されていた戦闘機に使う対空機関銃や、戦車に使うロケットランチャーを発射。1発が軍艦の速射砲に直撃し爆発音が響きます。船はフリゲートに突っ込むようにみるみる近づいていきます。照明弾が打たれまるで昼のように明るくなります。


「姿勢を低くして窓ガラスから離れて!!」


バババババババババババ!!!


 船は軍艦の上の軍人達から激しい銃撃を受けます。軍艦の乗組員の軽機関銃や機関砲か何かでしょう。窓ガラスは幸い防弾なので割れませんが、とても怖いとかそんなレベルでないですし何かが飛んだり割れる音がします。しかしそれも船から離れるうちに静かになってきました。届かないところまで来たようです。波が荒く高速走行で船はぎしぎしと鳴っています。風が割れた窓ガラスに打ち付けて寒いです。そして焦げた匂いとかが燃料タンクから流れてきます。


「このまま一気に・・・魚雷!」


 レーダーにはその魚雷の影が1発。かなり後ろですが少しずつ近づいてきます。


 勝子は船を急旋回させます。軍で学んだ回避行動でしょうか。船のエンジンのうなりが限界に達して私達は悲鳴をあげます。


 魚雷の白い航跡が迫り、ぎりぎりのところで魚雷が爆発する音が響き水しぶきがあがります。船も大きく揺れて海水が船に雨のようにかかります。

「よ、良かったぁ・・・」

「まだよ、あともう少しで境界線なのに」




 今度は軍艦が再び速射砲を撃ち始めました。しかし1つが使用不能なので避けやすいです。周りを水しぶきが覆います。船はそのたびに大きく揺れます。すると勝子は機械を使って電波妨害を始めました。

「まずいわね・・・もう一隻来たわ、しかも最新鋭のやつよ」



 北上級コルベット警備艇661号 これがその船の名前だそうで2018年頃就航の超最新型。

船はどうにかして避けていきます。しかし急に砲撃が止みました。


「661号が一発も砲を撃ってこないし砲撃が止んだ?怪しすぎるわ・・・まさか新型の対艦ミサイルの実験台にしようっていうんじゃ!?」


「ミサイル!?」

「さっきの銃撃で対空砲は使えないだろうからあの携帯式防空ミサイルで迎撃するしかないわね、もう一回操縦お願い!」

 これを使えば戦闘機だって撃墜できる優れものだそうです。

「よーし!なんとか逃げ切ってやる!」

「はい!」

 私は頑張って船を操縦します。砲撃を避ける必要がないから少し楽ですが大雨で視界は悪いです。



 その時、艦から煙が上がり光の尾を引きながらこちらに向かってきます。


大きな音が鳴り響き、勝子は迎撃するためにミサイルを発射します。

 しばらくするといきなり爆発の光がまぶしく輝き、数秒遅れて大きな爆発音がして、雨の中水しぶきがあがりました。ミサイルは消えたようでした。

「・・・成功・・した?」

「やった!」と未来。


 その時、相手が発射したであろう信号弾一発が偶然にも船首に命中して、そこにあった予備の燃料に引火しました。


「火事!!」と未来は叫びます。


 火事の煙で雨に加えて更に前が見ずらくなり、さらに船のスピードはみるみるうちに落ちていきます。燃料も漏れていたので底をつきかけています。

「そんな、このままじゃ追いつかれる」と勝子。

「え!?」

「そんな・・・」

 少しだけ陸地の明かりが見えます。もう、もうちょっとで自由が約束された民主主義国家である日本なのに!

 もう船はゆっくりとしか動きません。対空砲も壊れていたしあのミサイルも1発だけで使い果たしました。銃や無反動砲はありますがいくら勝子でもプロ数十人、いや数百人に勝てるわけがありません。私と未来は足を引っ張るだけでしょうし。


 そんな・・・ここまで来たのに、私たちはどうなっちゃうの?もう戻るのは無理?南に行けないからお母さんにも涼子にも楓にも会えないし、いやそもそも生きられるの?逃亡の罪で処刑?


勝子「そんな・・・嘘でしょ!?まだ対艦ミサイルを使う気!?」


 向こうでまた対艦ミサイルが発射されたようです。どうやら完全に私たちを沈める気のようです。さすがにミサイルなんかが当たればこの船はもう・・・


 勝子や未来は泳げるでしょう。でも私はそれこそビート板や浮輪がないとプールで泳げません。波の荒れた海でなんて無理!!そもそもミサイルなんか当たったら船は爆発して一瞬で炎に包まれるんですから泳げるとかもう関係ありません。もう、いややっと楽に死ねるんだね・・・でもやりたいこと言いたいこと謝りたいこといっぱいあるのに。それに私はともかく未来や勝子も死ぬの?そんなのやだよ。


「ねえ沙羅、言いたいことがあるの」

 未来はいつのまにか向き直り、真剣なまなざしでこちらを見据えています。

「・・・実は私も言いたいことがあるんだけど、せーので一緒にいおう?」

 最期なんだし、少しでも悔いの残らないようにしよう。やっぱり私はどうしようもなく未来が好きなのです。

「うん、いいよ」

「あたし、ずっと前から思ってたんだけど!・・・私、沙羅のことが恋愛的に好き!!!」

「私、あの・・未来のことが好きです!!短い間だったけど楽しかったよ!!」



 その言葉を言い終わるのとドーンと爆発音がしたのはほぼ同時でした。

あ、私たち、もう死ぬんだ。いろいろやり残したことばかりだけど、最期に未来に言えて良かった。

思えば私は駄目で馬鹿で無能で周りに迷惑かけてばかりだったな。役立たずなこんな私でも一緒にいてくれて、お母さん、未来、涼子、楓、本当にありがとう。そしてごめんなさい。生まれ変わったら神様、どうか自分をもっと普通の人間にしてください。未来や勝子にはもっとこんなじゃない楽しい人生を歩ませてくださいね。

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