日本が南北に分断された世界線3
月曜日です。
「ニャン・・・」朝、布団の上でこっそり猫さんのぬいぐるみで遊んでみます。可愛いってそっと頭をなでて抱きしめてると、「ワンワン」って声が。
・・・
「お、お母さんあの、今のは違うから!///」
まだ寝てると思ってたのに!!
お母さんは犬のぬいぐるみを私の方に歩いてるような動きをさせて近づけてきます。
「お母さんだってこの子と寝てるんだから隠さなくていいのに、小さい頃からそのぬいぐるみとずっと一緒だもんね」
「た、ただの気まぐれ・・・だから・・」
確かに小学生の時は学校以外お出かけするとこ全部に持ってってたけど!
猫さんがお母さんの顔をつんつんさせます。
「そう?ふふっ」
そう言いながらお母さんは犬のぬいぐるみで私の顔をつんつん。なんだかちょっと気持ちいい。お母さんお茶目で可愛い。私もお母さんみたいに可愛かったらいいのに。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
さあ、今日も一日頑張るぞい!
3人で集合時間20分前に着くと、誕生日の時の大きな赤いリボンをつけた涼子が待っていました。
私「あれ、そういえば未来髪ちょっと染めた?」
未来「そうなの!!夏休みの間だけね」
茶髪が少し明るくなっていました。可愛いのは当然ですが、更に可愛いです。
私と未来でイベント設営の準備班、涼子と楓は駐車場での車の誘導を他の人とともに手伝います。今日、7月22日は何やら保守車両脱線で新幹線が朝からずっと止まっていますが、県内のお客さん向けなのでとくに何事もありません。
ここ、清水FCプラザはシネコンつきのショッピングモールです。ゴジラの映画で破壊されたこともあるってウィキペデイアに載ってました。向かいには月夜グループの本社ビルも見えます。バカでかい高層ビル・・・というわけでもなく8階建てと結構こじんまりしていますね。「見よ!!この巨大な清水港を!!」と涼子は誇らしげ。
清水の港は昔から天然の良港で、江戸時代は駿府の港としてだけでなく山梨から米を富士川経由で運んできてたので、今でもこの近くに山梨県の土地があるらしいです。明治からはおなじみ月夜グループの元発展を続けコンテナ取扱量日本有数の港として、冷凍マグロ取り扱いの半分を占める港としてあり続けています。今でも周辺の大きな道路の流れは清水に向いてますからね。造船所のクレーンやら巨大なタンクやらがよく見えます。そして日本三大美港として富士山がよく望めるようにガントリークレーンを青白にするなど景観に配慮もしてくれます。
そういえばこの世界だと戦争が長引いた結果、静鉄三保線が桜橋から三保まで開通しているようです。
スマホや荷物はプラザの関係者用の部屋に置いておきましょう。スマホを使う時間は休憩時間くらいですかね。控え室は建物の中で安心。
今日はスポーツの交流イベントをするそうで、そのためにやってきた軽バンやトラックから荷物を運んで、設営の準備をしていきます。なかなか忙しくて未来とすれ違ってばかり、重そうな荷物をドンドン運んでいきます。机やら椅子を一生懸命私も運んでいきます。コードをまとめて音響の機械や電源やら、とにかくいろいろ必要で大変です。とやっているうちに時間は過ぎてイベントが始まります。
しかしまだまだ終わりません。迷子捜しに会場の見回り、誘導やらで忙しいです。
「こちらが清水港の名物である清水港テルファーです。このクレーンは1928年に設置されたもので現存しているのは日本でここだけなんですよ
このクレーンは木材を貨車に積み込むために設置されたものでー」などと涼子は観光客に説明していました。車の誘導は終わったのかな?と思ったらすぐに駐車場の方へ戻っていました。
11時半にやっと休憩です。
「疲れたー、差し入れのポカリおいしいな・・・」
未来はまだ別の仕事をしているようです。とりあえず先にお昼食べよう。一緒にご飯食べたかったなー。汗だくの未来も可愛いんだろなーて何考えてるんだろ。やっぱり変に考えちゃいますね。一回深呼吸して落ち着きましょう。
30分後ー
「さて、そろそろ仕事の続きしないと」とスマホをポケットにしまって、控え室のドアを閉め廊下を歩きます。
「あ、ちょうど良かった」
休憩スペースを出たところでずっと一緒に仕事をしていた女性のバイトの人とすれ違いざまに話しかけられました。
「この地図の倉庫裏に置いてある箱を持ってきて欲しいんだけど、お願いできます?」
「あ、はい」
「♪~」
後ろから未来が「おーい!!」と追いかけてきました。え、なんでここに!?・・・今歌ってたの聞こえてないよね。恥ずかしいし。
あとさっきの廊下から変な違和感がするけど・・・きっと気のせい。
「あ、あれもう終わったの?」
「お昼だから休憩に入ろうとしたんだけど沙羅がどっか行こうとしてるから」
「ちょ、ちょっと倉庫裏から荷物を取ってこないといけなくて」
「なんで倉庫裏?」
「さ、さあ?まあ行けば分かるよきっと・・・」
「暑いし買ってきたアイス二人で食べよっ!」
「え、アイス分け合うの?」
「そう、ほらおいしいよ!」
「・・・おいしい!!」
二人でアイスをペロペロなめながら10分かけて倉庫裏につきました。あれ、今さらだけどこれって間接キスじゃん!?・・・アイス食べてる未来可愛い!!私の心臓が持久走終わりくらい鳴ってる。
きゃあああああ!
やっぱり私は・・・未来のこと・・・好きなのかな。もしそうだったら・・・
いやいやあり得ない絶対ない!!私が恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!
・・・これ言うと恋人になるフラグなのでは?とも一瞬思ったけどそんなわけないよね。
「沙羅、これ終わったらゲーセン行かない?クレーンゲームとかやろ!!」
「いや・・・あの私ゲームセンターってうるさくて苦手で・・・耳当てとかで塞がなきゃいけないから・・・」
私はうるさい空間にものすごくストレスを感じます。広い空間であればいいのですが、密閉された狭い空間でうるさいと嫌で嫌でしょうがないのです。
「そっか・・・」
ちょっと悲しそうな未来。せっかく未来が楽しいこと提案してくれたのに・・・私もうるさい空間が平気な普通の人だったらよかったのに。
「ご、ごめんね」
「謝んなくていいのに!」とにっこり笑う未来。
何をうぬぼれてたんだろう。鏡を見なさい、こんなダメな人間が未来と釣り合うはずないじゃん。
目的地に到着。そこは古い倉庫で、「怪しい人を見たらすぐ110番」の張り紙があるだけでした。
「あれ、どこにもないよ?」
「ホントにここ?」
「地図の場所通りのはずなんだけど・・・」おかしいな、私が地図を見間違えるはずないとは思うんだけど万が一ってことも・・・
「連絡すれば?」
「そうだね・・・あれ、ない!ポケットに入れたと思うのに」
またこれだよ・・・なんで私すぐ忘れちゃうのかな・・・違和感っていうのはスマホの忘れ物だったんだ・・・
「あれ、あたしに電話だ、もしもし」
<えーっと鈴木さん、すぐ戻ってきてもらえます?>
「あ、分かりましたすぐ戻ります」
「やばっ、戻らなきゃごめんね」
「うん、また後で」
未来行っちゃった。二人っきりだったのに残念だな。後ろ姿も可愛いかったな。さて、荷物は結局どこにあるのかな?そして私のスマホは休憩場所にあるのかな。
あ、後ろから誰か来る気配。未来とは反対だから、係の人が私に荷物を届けに来たのかな。
「あ、お疲れ様です」
そんなにすぐ戻らなきゃ行けない用って何?なんかあたしやっちゃったかな。せっかく沙羅と二人っきりだったのに残念。元来た方へ走っていると、沙羅が荷物のことで困っていたことを思い出す。
とりあえず沙羅が持って来る荷物がどこにあるか聞いても遅くないよね。だけど誰から指示されたかわかんないし、沙羅のところに戻って聞こう。
まだ200メートル位しか来てないし、ちょっとくらい戻っても急げば大丈夫でしょ多分。あたしの足の速さを舐めて貰っちゃ困るよー。
あれ、そういえばなんで電話の相手はあたしのスマホの番号知ってたんだろ。声が女の人だったけどあのバイト先であたしの電話番号を知ってるのは、3人以外に男性の・・・何だっけ偉い人くらいしかいないのに。
「沙羅ー、運ぶ」
そこまで言ったところで何も言えなくなった。目の前でサングラスをかけた男と女が沙羅を黒い袋に押し込めている。あたしは恐怖でただ呆然とするしかない。
「ん?」
男が沙羅の入った袋を車に入れようとした時あたしに気づいた。
逃げなきゃ、とっさに体を動かすがなかなかいつものようには思うように動かない。なんとか走るが、男二人はどんどん近づいてくる。どうにかして逃げて沙羅を助けなきゃ!!
「クソ、おい電話したんじゃなかったのかよ!」
「したよ!」
二人が言い争いながら追いかけてくる。なるほどさっきの電話はあたしから沙羅を引き離す嘘だったのね、と妙に頭が冴えた。もしかして沙羅のスマホも廊下で声かけたとき盗んだ?いや今はそんなことどうでもいい!
まずは警察、110番。そう思いながらスマホの緊急通報で110を押す。
早く、早く!!
電話のコール音が鳴り始めたとき、スマホに気を取られていたせいで、足下の台に足が引っかかって転んでしまった。弾みで手を離したスマホは回転し、隙間から側溝に落下した。え、そんな・・・
「た、助けて!!」
そこまで大声で叫んだところで私は二人に強い力で取り押さえられ口をふさがれた。抵抗しようと男の腕にかみついたとき、タオルでもう一人の女が口を覆う。早く、早く逃げないと。
抱きかかえられて無理矢理黒い袋に私はゆっくり入れられた。なんで誘拐されてるの!?
怖い怖い怖い・・・
暴れれば暴れるほどこの袋はゆっくりと締め付けてくる。
沙羅を誘拐するなんて酷い奴ら、沙羅はいろんな事に詳しくて絵うまくて、小っちゃくて優しくて真面目で、世界中に可愛さを知って貰えば世界平和の実現も可能なくらいなのに!!
あれ、眠くなってきたな あたしはいいからせめて沙羅だけでも・・・
あたしはここで意識を失った。




