番外編 未来の気持ち
今回は番外編です。IFの世界だけが見たい方は飛ばしてもかまいませんが、見てくれたら嬉しいです。
やっほー、鈴木未来です☆!今日7月18日(木)はなんと沙羅の誕生日!!沙羅と知り合って3ヶ月なのにすっごく仲良くなったなー。沙羅の誕生日なんて、いつもは目覚ましをキャンセルしちゃう寝起きが悪いあたしも目ぱっちりで起きちゃう。通常授業なのに学校行くのこんなに楽しみなんて初めて★!
洗面所で顔を洗って鏡を見ながら寝癖を溶いて髪をまとめる。背は女子の平均よりずっと高くて(あたしのコンプレックス・・・)、日焼けした肌にパパの遺伝の長い茶髪。あたしってどうなんだろう、美人なのかな。でも男子の視線はよく感じる気がするから、まあ美人ってことで♪
校則違反だけどこっそりリップ塗っちゃう。これくらいならばれないでしょ。制服のリボンを結んでからリビングに出るとママが作ってくれたパンのトーストとサラダが用意されてて、ささっと食べる。横では弟とパパがゆっくり食べててママに「早く食べなさい~!」って笑いながら怒ってる。ヨーグルトを食べて今日も元気いっぱい。いつもより早く「行ってきまーす!!」って玄関のドアを閉めてマンションのエレベーターで降りて、朝の人多いの道路を歩いて行く。
徒歩3分くらいで駅に着いたらエスカレーターの横の蹴鞠都市って書いてある階段を駆け上がって、広い改札口があるから定期ピッ。ちょうど来た電車に乗り込む。沙羅への誕生日プレゼントで今日はちょっと荷物多めだ。沙羅、喜んでくれるかな。
思えばあたしが沙羅のことを知ったのは1年は別のクラスだったから(そりゃすれ違ったことはあるんだろうけど)今年の4月、2年に上がってからだった。
「では今から自己紹介をしましょう!出席番号と名前、誕生日、趣味や好きなことと最後に皆に一言、お願いします」
「楓と今年も同じクラスで嬉しい!せっかく高校生になったんだから恋したいけど、いい男子はいないかなー」なんて思いながら一人ずつ見ていた。このクラス、可愛い女子はいっぱいいるんだけどな。
次は3番かー、初めて見る可愛い女子。猫背気味に立って恥ずかしそうに顔を赤らめ下を向き、両手を太ももあたりでこすり合わせ足を内股にしてる。丸いメガネと肩まで伸びた黒い髪の毛、校則の模範のような制服の着こなし。うーん、真面目そうだな~。
「あ、えっとえっと、さ、3番の内山沙羅です、誕生日は7月21日です」すごい緊張してるこの子。頑張れ★!!とつい心の中で応援。
「あ、あと何だっけ・・・・絵を描くのが好きです、
よよ、よろしくお願いします・・」ほっ。よかった。いたわりをこめて大きな拍手をしてあげた。
第一印象は、「真面目そうで可愛いけどすごい恥ずかしがりやさん」であまり意識もしなかった。
二日後
楓と話したいけど楓は・・・あ、いた。一番前の方か。でも前の通路は人がいるから遠回りしていかないと。今日は自分が死ぬ夢なんか見ちゃったから、テンション低め。窓際の方はあんま来たこと無かったな・・・!?机の上に置いてある描きかけの絵に夢のことなんかすっかり忘れて目を奪われた。すごい!!
ここの席は窓際だから外がよく見える。そして窓から見える景色がシャーペンと色鉛筆、消しゴムと線引という普通の文房具だけで表現されていた。手前に大学と国1のクルマ、新幹線、奥のビルやマンション、静岡県立大学から日本平までが。
誰この絵描いてるの!?この席は・・・内山沙羅さん・・・誰だっけ、あ!あの自己紹介で恥ずかしがってた子か。そういえば自己紹介でも絵描くの好きって言ってたな。あたしはこんな絵描けるかな・・・無理。本人はお手洗い行ったのかな?
その後楓と喋っていると、沙羅は戻ってきていて自主的に一生懸命授業終わりの黒板を消していた。とっても優しくて気配りできる子だなって思った。
それからあたしはなんとなく沙羅のことをこっそり見るようになった。沙羅はちょっとの空き時間を涼子と喋るか絵を描くかで過ごしていた。でも意識してみているとそれだけじゃなかった。
沙羅は誰に言われるわけでも無く係というわけでもないのに仕事をしていた。プリントは配ってくれるし、黒板も消してくれる。窓を開けて換気したり、机を綺麗に並べたり床のゴミを捨てたり。授業もあたしと違ってすごい一生懸命うけていた。頑張ってて偉いなー。この子とも話してみたいな。
あの月曜日もそうだった。また自分が死ぬ夢みてテンション低かったけど、体育の授業で沙羅が一生懸命やってるのに、ボールうまくとれなくて外野に行ってるのを見ると申し訳なくなった。だから、その次の試合では沙羅の顔に迫り来るボールを受け止めたのだ。わざわざ「ありがとう」って照れた笑顔でいってくれて嬉しかった。その笑顔はどこかで見たことある気がちょっとして、とっても可愛かった。
お昼になってご飯を食べ終わると、向こうでいつものように一人で沙羅は絵を描いていた。真剣に描いてる横顔も後ろ姿も可愛いな。絵を描いている目は優しくて、とってもキラキラしてる。今日はキャラクター描いてるんだ、やっぱりうまいんだね。気づけば思わず声が出ていた。
「うわー内山さんの絵、やっぱりうまーい!!」
まさか初日から、変なタブレットを入手することになり秘密を共有することになるとは思わなかったけど。沙羅と一緒にいるとなんとなく心地よかったし、あたしも学校に行くことが楽しくなった。
沙羅は物知りでいろんなことを知ってて面白かった。思いやりの心をすごく持ってる優しい子で責任感が強くて、でも沙羅自身も気づいてないような気がするけど大分うっかり屋さんで、たまに何も考えず足をバタバタさせながらボーッとしてたりする。手は冷たいのに手汗が凄くて、花粉症だからくしゃみをよくしてて。運動が全然出来なくて力もなくてふと死にそうなほど弱くって、でもいっつも一生懸命頑張っててすごい優しくて。そんな沙羅が可愛くて、守ってあげたくてしょうがなかった。
沙羅を一言で言えば、「しっかりしてるけど、どこか抜けてる」そんな感じの子だ。明日の持ち物がパソコンだと言われたらちゃんと持ってくるけどなぜか筆箱を忘れちゃう、そんな感じの子。
そんな中のゴールデンウイーク、東京に行ったとき。渋谷109でのショッピング中、楓にこう言われた。その時沙羅は試着室の中だったから聞こえてないと思うんだけど。
「未来って~沙羅ちゃんと一緒にいる時すごい楽しそうですよね~、まるで恋したみたいですね~」
「・・・いやないない」
楓にはそう言ったけど意識したらドキドキしてしょうがない。なんだろうこれ、まるで中学の時のかっこいい先輩へ向けていた胸の温かさというか感情と同じだ。帰りの山手線の中で沙羅のリュックについた黒猫のキーホルダーが小っちゃく揺れているのと、街を見るのが好きだって言ってる沙羅の輝いた笑顔は可愛くて、体が熱くなった。
そして「あの日」のことを沙羅の笑顔から思い出した。この子は昔から変わってないんだなって。
ここではっきり宣言します。
「あたしは沙羅が好き!!」
もう否定しようがなかった。この気持ちを止めるのはたぶん無理だ。だから旅行の帰りに聞いたのだ。「沙羅ってさ、好きな人とかいるの?」
「いないよ」と、答えてくれた。ならば「あたしは沙羅の恋人に絶対なってやる!」そう決意した。
でも沙羅はあたしの思いに全然気づかない。しかも沙羅とだんだん距離が近くなってるからもう逆に落とされてばっか。
?みたいなその顔やめて!!可愛いから♥!私の汚れた心を浄化してください沙羅様!!!
スマホ覗き込んでくるの可愛い!近いよー♥
鼻歌歌ってるの可愛い!他の人にばれてないと思ってそうなのもまた、可愛い♥
ボーッとしてあたしの呼びかけに気づいてないなー★でもそれが可愛いな♥
ペットボトルの蓋が開けられてないけど、それが可愛い♥!
可愛いって言うとすごい照れちゃう沙羅、可愛い♥
蚊に「ごめんなさい」言う沙羅、命大切にしてて可愛い♥
保育士さんみたいに子どもと関わる沙羅、可愛い♥!
あたしの後ろに隠れて恥ずかしがる沙羅可愛い♥!!
まあこんな感じ。可愛いからしょうがない。
でも沙羅、急に何かに怯えて震えたりするの・・・一体、どうしてなの?
そういうときの沙羅はあまりにも悲しそうで、突然どこか遠くへ消えてしまいそうな不安な感じ。そんな沙羅は見ていられないから、ずっと笑顔で、楽しそうにいてほしい!!ふとしたときの笑顔こそ、一番可愛いんだから♥
こうなったら無理にでも意識させてやる!と勇気を出して告白したら「ずっと友達でいようね!」と言われたあのときのショックは言葉ではとても表せない。まああの沙羅に悪気はないのだけど。沙羅はたぶんあたしの気持ちに気づいてない。あたしは「好き」とかそういう意識では見られてないんだな。でも、いつかは沙羅を絶対落としてみせる!!
・・・って最初は思ってたんだけどね、なんだか今のあたしでは言えない・・・
それはともかく思ってたけど沙羅は自己肯定感低すぎ!!アルバイトで働きづめなのにテストでは平均点くらいは取ってるの凄いし、教室を綺麗に保ってくれるし、いろんなことに詳しいし、子どもと関わるのすごいうまいし、何よりすごい純粋だし胸大きいしめちゃくちゃ可愛いし♥!!絶対男子の間でも『あの子の魅力に気づいてるのは俺だけだろうな~』みたいな人気が絶対あるよ!!
愛おしさ世界一!全人類全生物宇宙全体にその可愛さを知らしめたい!でも誰にもとられたくない!
本人は気づいてないけどこのクラスの男子による「クラス女子人気投票」で同率1位なんだからもっと自分に自信を持って欲しい!(あたしや楓、涼子も1位なんだって、やった★)
てか男子はなんでそんなもん作ってるんだろ、ということは置いといて涼子や楓とともに沙羅の誕生日を祝うことにした。サプライズとかじゃなく、事前に祝うことだけはその日バイトがあったりしたら困るので通知済み。というか沙羅は誕生日くらいは・・・と毎年バイトを休むことに決めてるらしい。でも具体的に何をやるのか沙羅は知らない。
そして放課後になった。




