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モータリゼーションがない世界線1(文化祭準備編)          

 テスト期間も過ぎ去ってすっかり暑くなり、6月28日金曜日、今日は年に1度の聖葉祭(文化祭)1日前です。この学校の文化祭は秋ではないんですよね。この後は7月に球技祭、さらに夏休みですからイベントが目白押しです。そして文化祭は明日1日だけです。コロナで短縮になっちゃったんですよね、残念。


<生徒会からのお知らせです。構内での作業は6時までとなっています。時間を過ぎての作業は・・・>


「で、私達のクラスは何を売るんだっけ?免罪符?」

「また涼子はとぼけちゃって、バインミーでしょベトナム料理の、近所のお店から許可とって販売するんじゃない」

「にしても文化祭のルール何なの?なんで文化祭にSDGsを紐付けなきゃいけないのー」


「しょうがないでしょ、社会全体が今はとりあえずSDGsって言ってた方がアピールになるんだから。その練習と思うしかないよね、それでお金まわってSDGsを達成できるような技術や投資ができるなら別にいいんじゃないかな、そもそも月夜グループだってSDGsさんざんやってるでしょ」

「それ言われると何も言えないじゃん!」


 ちなみにバインミーの販売は、『できるだけ家の使わない物をもってくる、ゴミを出さない、バインミーという異国文化を知る国際交流』です。でも世の中には文化祭といっておきながらただの研究発表会みたいなとこもあるらしいですから、まあいい方でしょう。


 今、放課後を使って教室の最後の飾り付けをしています。美術部の方は絵を職員室前の廊下に飾るだけですぐ終わりましたからね。


「ここ持ってくれない?そっち切っちゃうから」

「先にそっちから切った方がいいんじゃないですか~っ?」

「でも後の作業を考えると先にそっちの方が楽かなって」

「確かにそうですね~、じゃあそっちからやりましょっか~」

 と未来と楓が共同で段ボールを切っています。楓は生徒会とテニス部の出し物もあるのですごく忙しそうです。未来も文化祭実行委員会として忙しい楓の代わりにここまで頑張ってきてました。


「楓、ちょっとあれ!」と指さす未来。楓もその方を向き、

「ちょっと~、変な物作ってないで手伝って下さいね~っ!」

 見るといつものサッカー部3人が段ボールでえっと・・・浅草のビルの屋上にある金色を作っていました。しかし鳩山君を中心とした彼らはそんな楓のことなんて無視したのか気づいてないのかふざけ続けていました。楓は静かにその男子達に近づきます。


「こそこそ・・・」

 楓は男子3人に耳打ちすると、途端に従い始めました。何言ったんだろう?



 私と涼子は美術部コンビとして看板に貼るための絵を描いています。

「やっぱり二人とも絵うまいよねー」と未来。

「そ、そうかな」照れちゃうよ。

「ほらほら、すごいでしょ」

 と言いながら涼子が楓の方に絵を貼りにいきました。私もちょうど最後の絵を描き終わりました。


「そういえば大学の学園祭と中高の文化祭ってなんで一緒にやらないんですか?」

 一度も活かされたことのない設定ですがこの学校大学から幼稚園まであるんですよね。未来と作業してる楓に聞いてみました。


「昔一度だけやったことがあるらしいんですけど~・・・国1を跨ぐ歩道橋や駅の大混雑と、周辺道路や商業施設での路上駐車がたくさん発生しまして~苦情が・・・(オープンキャンパスはやってますよ!)」

「あぁ・・・」

なるほど納得です。

「ところでさっきのサッカー部3人に何言ったの?」

「え~、別に楓はあの人達が好きな女子の名前を出しただけですよ~、楓このクラスの恋愛事情はだいたい把握してるのであんな姿○○さんの前で見せてたら嫌われますよ~って~♥」

「そ、そうなんだ・・・例えばどんな恋愛事情があるの?」

「例えば鈴木くんは星井さんのこと好きだとか~」

 なんで男子の恋愛事情全部知ってるの?怖い。



「あ、沙羅さん周りの恋愛事情も教えてあげましょうか~?」

「い、いいよいいよ私のこと好きな人なんていないから」

「・・・そうですか~(いっぱいいますのに・・・例えば楓の隣にも♥)沙羅さん可愛いのに・・・」


「あれ、飾り付けのマスキングテープ足りなくない?」

「あ、本当ですね~あとちょっとなのに・・・」

「あ、えっとちょうど描き終わったので私が行きましょうか・・・?」

「ありがとう~!!助かります~!」

「じゃ、あたしもー☆」となぜか未来も。


 というわけで国1を500m進んだ小さなショッピングセンターに向かいます。

「マスキングテープを一つ買うだけだから簡単だね」

「そうだねー、さささっと戻ろ、でも暑いな~」

 未来はピンクの手持ち扇風機を取り出しました。


「うわーちょっとだけ涼しいー♪」

「あ、いいなー」

 未来が私に風を当ててくれます。あ、ちょっと涼しい。


「ありがとう!私もそれ欲しいな・・・」

 それがあれば私もちょっとは涼しくなるだろうけど、お金ありませんからね。皆持ってるから羨ましいな。

 それにしても未来の髪の毛が風で揺れているのは美しいですね。

「あ、信号赤になっちゃった」

「またすぐ青になるよ」

 ここで国1を反対側に横断です。

「車多いなー」とついぼーっと呟きます。

「・・・ぜんっぜん青にならないね」


 さすが国道1号線といった交通量です。目の前を自動車が何台も通過していきます。大型トラックが何台も大きな音をたてていきます。この国1には平行するように南幹線や北街道と呼ばれる幹線道路、さらに清水地区を除けば全線立体交差で無料の国1静清(せいしん)バイパス、有料の東名高速や新東名高速もあってこれですからね。扇風機の風もクルマの風と排気、アスファルトの熱気には敵わず、暑くなるばかりです。


「今は車もスイスイ進んでるけど昔は平行する道路がなくてすごい渋滞してたらしいね」

「昔っていつ?」

「昭和30、40年代だね、車の数が一気に増えるモータリゼーションが起きて道路整備やモラル、交通ルールが追いつかなかったの、そのせいで1970年だけで1万7000人が死亡して日清戦争での日本の死者と並ぶくらいだから交通戦争と言われたらしいよ」

 1955年には輸送量を100としたときトラックが担っていたのは11.6でしたが1985年には47.4と爆発的な伸びを見せていることがわかります。1955年の日本の乗用車生産台数が約2万台でしたが、1985年には約760万台ととんでもない伸びを示しています。


「戦争と同じって・・・今は何人なの?」

「2023年で2678人だね」

「だいぶ頑張ったね・・・でも今でも2600人なんだ・・・

もしモータリゼーションがなかったらどうなってたのかな?」

「そんな時こそあれの出番だね」

「だね」


「あ、レッカー車♪」パッとスマホを取り出して写真をパシャリ。

「なんで写真撮ったの?」

「バイト先にはたらくくるまの写真絵本作ってるからその素材だよ」

「そっか、沙羅の保育士さんの姿見てみたいなー!!」

「は、恥ずかしいから想像しないで!」


 しっかりマスキングテープとついでに未来がジュースを買って学校に戻った後、タブレットを使います。もちろん行く世界はただ一つ。


「「もしモータリゼーションがなかったら」」

 さて、今度はどんな世界でしょうか。


 戦後、一萬田尚登(いちまだひさと)氏(日銀総裁や大蔵大臣となった)の国際分業論により、日本は自動車産業への投資を行わない方針を固める。日本の酷い道路状況に外国の調査団から何度も苦言を呈されるが、道路事情の改善は予算や国鉄の反対とかを理由にほぼ行われずほぼ戦前状態のまま。1972年の総裁選では田中角栄ではなく福田赳夫が勝利し道路網の整備は進まず。


「さて、やっぱり学校はそのままだね」

「まあいつものことだね、はいジュース」

いきなり未来が冷たいジュースをほっぺにつけてきました。

「ーっ!?あ、ありがと・・・」


<文化祭実行委員の皆さんは、1階 ホール前に集まってください>

「あ、呼ばれてる!!バイバーイ☆」

嵐のように消えちゃう未来、私も未来みたいに積極的だったらな。


 午後6時、やっと準備が終わって帰ることが出来ます。というかこれ以上残ってると警備員さんに追い出されちゃいます。外に出ると・・・

「・・・道がなんか汚い!!」と驚く未来。

「また変なこと言ってる」と呆れる涼子。

「たまに当たり前のことに驚いてますよね~、ここは日本なんですから」と楓は普通のことだと言わんばかり。

「全部未舗装なんだね」

 そしてこの世界の日本はこれが当たり前なんですね。

「何これ国1!?狭っ」

「あれ、大学が学園祭の準備してる・・・同時開催なんだ」



 幸い国1は舗装されていますが、そこら辺の狭い県道みたいな感じです。そして国1沿いにはガソリンスタンドはもちろん、ロードサイド店が一切見えません。でも車やトラックはちょっと走っています、まあ国1ですからね。そして自転車が多い!!昔の中国みたいです。そして排気ガスを一切感じなくて、町も静かです。


 ちなみに東名高速は暫定2車線で建設されています。この世界で高速道路は東名・名神・山陽・東北道くらいしかありません。まあ高速道路は()()北朝鮮にすらありますから、さすがに高速道路自体はあります。信号の無い横断歩道を渡って駅へ出ました。


「「・・・なんかモノレール通ってる!!??」」と二人でびっくり。

 そこには青と緑のラインをひいたモノレールが新幹線の線路を飛び越え走っていました。

「どういうこと沙羅!?」

「どういうことかな・・・」


 これは後で知ったのですが1970年に静岡と清水を一体的に都市開発する計画があり、モノレールを通す予定だったとか。現実ではまあ採算性とオイルショックとかいろいろでなかったことにされましたが、この世界では違います。

 美和(市の北部)から新静岡駅、静岡駅から登呂遺跡、静岡大学を経由して草薙(ここ)を抜け、清水から三保(三保の松原ですね)へと静清(せいしん)モノレールが38.8km整備されたようです。


あれ・・・そういえば

「涼子、涼子のとこの月夜グループはトラックってやってるの?」

「まあほんのちょっとだけ、港の中とかで使ってるけどそれ以外は全然儲かってないみたい」


 まああの会社はトラックが無くてもいろいろやってますからね。船とか倉庫とか商社とか。それにしても月夜グループどこの世界でも大企業ですよね、こっちも特異点なのでは・・・?


ってことはこの近くの月夜グループによって作られた日本初のセルフガソリンスタンドもないのかな?


「なんか東海道線の線路増えてる!?そしてJNR(国鉄)!?」


 現実より貨物列車の本数が多いのでしょう。用宗(もちむね)から興津(おきつ)は線路を複々線化していました(ついでに静鉄が日吉町駅から地下化して丸子(まりこ)へ抜けています)。ちょうど横を貨物列車が走っていきます。この世界では機関車トー○スで見るような貨車がコンテナに混じって高速で走れるよう改造されて現役のようです。


 この世界では高速バスもトラックも自家用車もそこまで発達しないので、北海道から九州まで日本は超鉄道王国と化していました。路面電車もクルマの邪魔にならないので全国で現役です。ブルートレインなど寝台列車は残念ながらこの世界でも新幹線や飛行機、格安ホテルに押されて衰退しましたが、幸い「銀河」や「ムーンライト号」は現役です。日本全国津々浦々に新幹線が整備されてもいます。


 そしてこの世界では未だにJRではなく国鉄です。ただ経営に余裕があるのか雰囲気はJR東海とそんな変わりません。労使問題も下火になったんでしょうね。在来線の第3セクター化もされていないので便利です。ちなみに沖縄だけはアメリカ統治の関係からか、モータリゼーションしています。



<まもなく静岡 静岡です 新幹線、静清モノレール、静鉄線は乗り換え 4番線に到着出口は右側です ドアから手を離してお待ちください>


 さて静岡駅までやってくると電車はとんでもなく混んできました。車が無いから地方でも通勤ラッシュは過酷です。私たちは座れたので大丈夫です。

「文化祭楽しみだねー沙羅☆、あたしのダンス楽しみにしててね♪」

「うん!」未来のダンス楽しみ!・・・・・文化祭どうしようかな。誰とまわろうかな・・・未来とまわれたらいいんだけどな・・・

現実

沙羅「わークルマがいっぱい!」

未来「道がすっごい綺麗!!」

涼子「また変なこと言ってる」

楓「たまに当たり前のことに驚いてますよね~」


【現代交通経済学叢書】「道路貨物輸送」晃洋書房 村尾 質著 1989年発行

統計センターしずおか 街路交通調査一覧表(平成15年3月)静岡市と清水市のモノレールの記述がある。


「都市交通の展望 都市モノレール」鵜澤正治(日本モノレール協会企画部長)https://jcmanet.or.jp/bunken/wp-content/uploads/1978/jcma-1978_05.pdf


「都市デザイン研究室マガジン」280号 東京大学都市デザイン研究室ud.t.u-tokyo.ac.jp/news/_docs/280.pdf

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