静岡が大阪のようになった世界線3
ご飯を食べ終わって続きです。万博会場にはセブンローソンファミマはもちろん、アニメイトや百貨店の店舗なんかも出店するそうです。木製で上のテントが網のようなパビリオンが見えてきました。こっちが静岡府・静岡市のようです。
「静岡ヘルスケアパビリオンです!!ここでは未来の医療・健康技術やヘルスケアを体験できるんですよ!」
「え、あたしの健康?」
女子高生の健康?と言うわけでは決してありません。身長とか体重を見るような変態の需要はありそうですけど。
「目玉はなんといってもカラダ測定ポッドです!指示に従うだけで健康状態やカラダ年齢を把握できるんです、それから未来の食も体験できたりするんですよ!!」
「おー、私は何歳だと判断されるかな、やっぱり実年齢より若く・・・」とおばさんのようなことを言う涼子。
「私たちまだJKでしょ!」と未来がつっこんでいました。
「そっか、私たちは立派なJPだったね!」
「それは郵便局だよ」
「涼子ー、おばさんの私は何歳になるんですかねー」
「それから、体測定ポッドが25年後の自分を想像してアバターを作って一緒に未来のヘルスケアを体験できたり、未来型人間洗濯機も展示されるんですよー」
「25年後・・・42歳!?」
「その頃の私たちはどうなってるでしょうかね~っっ♥」
その頃には皆おばさんになるのか。私はちゃんと就職して普通の人間になれてるかな?
私なんかを正社員で雇ってくれるところはあるのかな。いや非正規でも出来るのかな・・・不安。一瞬だけ未来と二人で楽しく過ごしているイメージが出てきましたが、あれは絶対ありえない気の迷い、幻想です。楓は・・・将来の結婚生活に思いをはせているようです。でも親のすねかじって生きていくのも嫌です。
「でも未来のヘルスケアってどんなのなの?」
「たとえばここでは、AIが健康状態に合わせて食材やレシピを考えてくれたり、くぐるだけで除菌できるシャワーゲート、細胞にアプローチして老化した細胞を取り除いたり、ロボットを着用することで思い物を簡単に持ち上げられたり空を飛べるようになるんです、AIが健康相談にも乗ってくれるようになるんですよ」
「おー!」こんな話聞かされると未来が楽しみになってきます。もう私の力のなさで迷惑かけることもなくなるんですから。
「AIって本当にすごいね・・・」と未来はどこか寂しそうに呟きます。
「人間洗濯機・・・怖い!!」と怯える未来。
「ドラム式洗濯機とかじゃないから大丈夫だよ、1970年の万博の目玉でもあったよね」
「・・・そういえばさっき沙羅がちらっと言ってたっけ」
確か1970年の人間洗濯機を作った人が協力してるんですよね。私達が老人になる頃にはそれに入るのかな?
「さらにipsの心筋シートもあるんですよ」
「STAP細胞は・・ありまーす!」とふざける涼子。
「それ懐かしいですね~」と10年前を懐かしむ楓。
それとSTAP細胞は全然関係ないと思うんだけど。
そんなことはおいといて、この巨大な大屋根リングの下をどんどん進んでいきましょう。
「この噴水では夜にドローンショーやウオーターショーを行う予定ですよー」
「おー、楽しみ!」と未来。
「アメリカドイツに韓国・・・いろんな国があるね」左は各国のパビリオンです。
「パビリオンを独自に作るのは47、全体では162の国と地域が参加する予定ですよー」
国際色豊かな博覧会ですね。アメリカ館のテーマは宇宙開発で、巨大なスクリーンの映像やロケット打ち上げの疑似体験コーナー、55年ぶりに展示される月の石が必見だそうです。アメリカもまた有人月面着陸を目指してるみたいなので楽しみです。私が老人になるときには宇宙旅行が当たり前になってるかな。
ドイツ館は循環経済が達成された世界を、韓国は日韓の国交や最先端テクノロジーが紹介されてるらしいです。
「この大屋根リング、下から見てもすごい迫力ですね~」と楓。涼子は隣で恥ずかしそう。
「日陰になって涼しいし、いいねー」
「そしてあれが・・・」
そこには鯨の形をした青い建物が完成間近といった感じで立っています。
「月夜未来館です」
「やっぱりあったよ」と私は半ば呆れていました。
「さすが涼子の会社は規模が大きいね」
未来の言うとおり、さすが月夜グループです。明治政府が出来る世界では必ず大企業ですね。
涼子が説明してくれます。
「お母さんに代わって私が説明するよ!!富士山をイメージした世界最大の扇子形のデザインにしてて、ここは未来のカーボンニュートラル社会を実現するための物流や資源開発にエコな道路作り、Society5.0な未来のまちづくりを紹介する予定だよ。人工光合成技術や健康的な生活を送る家も展示するんだー。うちはSDGsに力を・・・ちゃんとSDGsに反しないよう社員の給料もどんどん上げてますし、性別関係なく昇格を判断してるよ!」
「誰も何も言ってないよ、誰への釈明?」
「新東名高速で実証試験中の重連トラックとか、自動物流道路、ハイテクな港湾設備、宅配ロボットなんかをとりあげる予定だよ、最新の遠隔工事システムやロボットとか・・・あと何だっけ」
忘れないでよ!
「それからこの私が持ってるスマホ、これは自動通報システムがついてて紐を引っ張ると警報が鳴ると同時にうちの警備会社に連絡がいくし、スペースXのスターリンクと繋がってるから即座にどんなとこでも場所を特定して場合によってはすぐ出動できるようになってるの」
これは月夜グループの新しい目玉らしく、この世界じゃなくても持ってました。
「へえーすごいね、引っ張るだけで通報されるなんて」
「そうでしょー、ほらこうやってー」
ビーーーーーーーーーーー
「「「「「・・・」」」」」
その後スマホに向かって平謝りする望月母子という風景が見られました。
「でもさっきのってキッズケータイとかにもあるし新しくはないよね?」と未来。まあ確かに。
「そう、ここからが本当の機能でCrime prevention Facial recognition project、略称は『CFP』なんだけど、なんのことかわからないから『お天道様システム』とも呼ばれるわよ」何それ初耳なんですけど。
「これはこのスマホで撮った写真が設定画面をONに切り替えることでうちの警備会社にもその写真が送られてデータベース化されるの、これで膨大な写真をバックアップできるんだけど・・・このシステムはうちの会社とその関連・提携企業の防犯カメラやドラレコ(関連企業のディーラーで購入したドラレコ含む)、とも繋がってるの」
「すごいですねー」と楓。
「この膨大なデータベースと独自開発したAI、さらに顔認証や指紋・虹彩・歩容解析を組み合わせることで、行方不明者捜索や犯罪防止と確保に結びつけられると考えられてるのよ」
「え、これって中国の『天網』じゃ・・・」
民間主導で超監視体制作ろうとしてるじゃん!!大丈夫これ?
「10年後には警察への納入と全国への拡大を目指してるよ」
悪用とかサイバー攻撃が不安だなー・・・プライバシーとか大丈夫?もともとは密輸入や不法就労対策に会社独自で始めたシステムだそうですが、気がつけばどんどん大きくなっていたそうです。
それにしても私たちが偉い人になって会場工事現場を視察、という気分になって面白いですね。またコンクリートの殺風景な建物が。
「この施設は空気中から二酸化炭素を回収する二酸化炭素直接回収技術DACを試験するんですよ!」
「すごい地球温暖化対策ですね~」
月夜館でも「二酸化炭素を吸収するコンクリート」とか使ってましたね。
「ここでは空飛ぶクルマのデモ飛行も行うんですよ!」
「え、空飛ぶクルマって実現してたんだ!!」と未来。
「未来ですね~」と思いをはせる楓。
「でも怖いから乗りたくないな」
「私は乗ってみたいですね~」
まあ法的な問題がありますからね。私はパトカーとか緊急車両だけ、とかが現実的だと思うんですけど。ARの没入型体験映像が流れる予定らしいです。
「その空飛ぶクルマの写真がこれです」
「「「「ヘリコプターじゃん」」」」
まあ誰でも車のように空を飛べるって事で。
「ここはバンダイナムコ館で、実物大17mの巨大ガンダムも出来るんですよ!」
「静岡はプラモデルの町でもありますもんね」
「中ではモビルスーツが当たり前に平和利用されている未来で、この夢洲から宇宙エレベーターに乗って宇宙へ行くというストーリーですよ!」
なお実際の静岡市にプラモデルを売ってる場所はそんなにないのが現実。生産は全部静岡市なのに。
次は網の目のようなパビリオン。天候によって印象が変わるとの説明があったドーム付きです。
「こちらのNTT館では次世代情報通信基盤のIOWNを利用して空間伝送という技術を使って視覚や味覚、嗅覚を再現してまるですぐ近くに居るかのようにコミュニケーションが出来るんですよ!さらにこの技術は消費電力を抑える効果があって、今は従来の8分の1ですが2030年には100分の1を目指すんですって!」
「もうドラえもんの秘密道具の域だね」と涼子。確かに、そんな技術が出来たら話すのもより楽しくなりそう。
「ガスパビリオンではXRゴーグルをつけると、お化けのキャラクターに扮してメタンハイドレートなどこれからのエネルギーについて体験しながら紹介されるんですよ!」
「面白そう!」
未来はたくさん質問します。
「はい!この赤い建物はなんですか!!!」
「そちらは郵便局です、10年後の自分に手紙を送ることもできます」
「じゃあこっちは!」
「そちらはアマチュア無線特別局ですね」なにそれ気になる。
「この電力館では、キャラクター達とエネルギーの可能性を体感できる展示を予定していて、自転車で電気を作ったり歩くと音が鳴るメロディピアノ、音力発電もできるんですよ」
「自転車で電気・・・やってみたくはないな」
涼子は何を想像してるんだろう。罰ゲームかな?
今度は五重塔のようなパビリオンです。
「この住友館では1970年に植えた木を使用して作られています、中は森を再現しており、愛媛県の別子銅山の紹介や奥行きのあるスクリーンが目玉展示ですねー」
「本物の五重塔みたいです~っ!!」と楓。
・・・ここだけ急に1970年の万博なのは作者の気分なんでしょうか。
「この四角い建物はコモンズ館といって、いろいろな国が共同で出展する予定なんですよ!ここはコモンズC館ですねー」
万博会場中央の日本庭園「静けさの森」ゾーンにやってきました。ここも造園工事真っ最中です。それにしてもどこもかしこもまだ工事中です。あっちではショベルカーが地面を掘り、こっちではコンクリートミキサー車がコンクリートポンプ車を使ってコンクリを流し込み、向こうではクレーン車が鉄骨や木材を組み立てています。遠くからはくい打ち機の大きな音が響き、大きな重機を運ぶトラックが目の前を誘導されていきます。土曜日なのに、あっちこっちで工事の人やトラックが忙しそうに動いています。
「コロナで工事が遅れましたからね、1年後の万博に間に合わせようと大変なんですよ」
石川の地震もあったから人材確保も大変らしいです。そもそもスケジュールがコロナのせいでカツカツなんですよね・・・
未来は後ろでよそ見でもしていたのか、工事のおじさんとぶつかっていました。
「大丈夫ですか?申し訳ございません!」と謝るおじさんに対し、
「いえいえ!私がよそ見してたから悪いので、むしろ謝るのは私の方ですよ!」と必死に謝る未来。
「お怪我とかは・・・」
「大丈夫ですよ、お仕事頑張って下さい!」
「はい!」
「気を付けてください~」と楓は未来に言います。その未来は?
「工事のおじさんってさー」
「かっこいいよね!!」
「どうしたの急に」と涼子。本当にどうしたの。
「だって、あんなでかいクルマとか機械使ってさ、こんなに大きくて面白そうな建物作るんだもん、凄いしかっこいい!」
まあその通りです。私と同じ事を思ってくれる人がいた!!
「そうだよね!未来も工事現場を見る楽しさに気づいてくれて私もうれしいよ、昨日見た変わったビルも前登ったスカイツリーも、新幹線の橋もいつも通る道路も、私たちが住む家も皆あの方達が作ってるんだからすごいよね!!」
そして作った物が多くの人に必要とされて、また楽しませているんですからね。私とは逆です。
涼子「何目線のセリフだろ?」
そう、工事のおじさんはかっこいい!
「そういえばなんでこんな大都会に空き地があるの?」と未来。
「ここは昭和の時代、ゴミの埋め立て地で、埋め立てが終わると静岡の新都心とする計画だったんだけど・・・」まさかの涼子の解説です。
「だけど?」
「バブル崩壊で全てパー。だからここを2008年静岡オリンピックの選手村にするつもりだったのに・・・」
「のに?」
「オリンピックの開催が北京になって頓挫、ずっと空き地のままだったの」
「あらゆる計画が中止になった結果なんだね」負の遺産っていうあれですね。
「お父さんが漏らしてた、『せっかくオリンピックで新しい利権、選手の活躍をこの静岡の地で見られると思ったのに』って」
「本音!!一瞬漏れてましたよ!!」
なお将来はカジノを含めた巨大なIR統合型リゾートが建設される予定です。最初はおんなじ年にやる予定でしたが、コロナで遅れてしまったようです。
シグネチャーパビリオンのゾーンを抜けるとまた国のパビリオンです。
「ここは中国館ですよ、中国4000年の歴史や自然、科学技術の展示の他にここでは人工衛星が採ってきた月の砂が展示されるんですよ」
アメリカに対抗してきてる!これが米中冷戦・・・
ブラジル、オーストリア、UAEと抜けて一周してきました。万博の会場広すぎ!!とても1日じゃ足りないですね、何回でも行きたくなっちゃいます。
さて、見学も終わって静岡駅へ帰るマイクロバスの車内。夕日がさしてきてちょっと綺麗です。
「ねえ未来」
「ん、なーに?」
「これまで東京と大阪のようになっていた世界の二つをみたけどどうだった?」
「うーん、都会すぎても大変だよねと思ったけど都会がやっぱり羨ましいという気持ちもあるね、私たち田舎の人としては」
「でも私たち田舎の人、ともいえないよね」
「どういうこと?」
「例えば静岡から東京には20分おきに新幹線が出てて1時間で到着、しかも一人あたり往復で約1万2000円(鈍行でも3時間)、日帰りでディズニーにも行ける」
「でも北海道や九州の人はどう?飛行機で何万円と何時間もかかるし日帰りなんて絶対に無理」
「そっか、そういうとこの人からすればここも凄いんだ」
「宮崎県はNHK以外のテレビが2つだけ、名探偵コ○ンとか平日の深夜1時だって」
「えぇ!?」
「静岡はJRが10分に1本、静鉄は8分に1本来るしICカードも普通に使えるけど、何時間に1本でICカードどころか自動改札すらない、っていうとこも世の中にはいっぱいあるもん」
「・・・そっか、静岡は十分都会なのかな」
その静岡市ですら山奥の井川駅の始発は昼12時、終電は15時です。一応バスもありますが、静岡市街地までは公共交通機関で約4時間かかります。同じ静岡市とは思えませんね。井川にはコンビニもないですし。都会と田舎では情報も物を手に入れるのにも移動にも苦労が段違いです。井川の人だって買い物するためだけにこの市内に出ることがあるでしょうし。静岡市の平野部や浜松市の平野部は地方の上澄みなんでしょう。
大きな本屋や映画館、たくさんのチェーン店が駅前に一通り揃っていてウーバーもある、でもお茶やみかんはおすそわけや無人販売で買える、その都会と田舎の中間みたいないつもの静岡が結局良いですね。
「さて、もうすぐテスト期間だね!」だからタブレットを使って遊べるのはしばらく先かな。
「・・・て、ててててててててテスト!?」
動揺しすぎだよ。テスト終わったらすぐ英検もあるとか言わないでおこう。




