静岡が首都になった世界線2
なんとか私はアパートに到着しました。未来は結局、楓に助けを求めたようです。大丈夫かな?
「わー、テレ東!!TOKYO MXもある!!」
番組表を見て感激です。これでBSに入らなくてもアニメが見られますね。この番組は○月○日に関東地区で放送されたものです、のテロップも見ることはありません。それにしても情報番組は東京周辺ばかりです。そのおかげで、なんとなくあそこはこうなっている、という雰囲気を知ることが出来ましたからいいですけど。アパートはなぜか外も中もまったく変わっていませんでした。新聞の折り込みに入ってる電車の時刻表が貼られていないことくらいでしょうか。
通っている学校の紹介動画も、元の世界とは似ても似つかぬ物でした。冒頭から第4次産業革命とか言い出したから、どこかの企業紹介と間違えたかと思っちゃいました。「21世紀の世界市民の育成」を目指しているそうです。さすが東京は私達と考えるスケールが違います。
<入江西口駅前と アキバのエジリカメラ!>
LINEが来ました、未来も無事家に到着したようです。良かった。
「・・・ニャンニャン」
安心して、ボーッとするためまたぬいぐるみで遊ぶのでした。あ、その前に宿題しなきゃ・・・またペンケース学校に置いて来ちゃった!今月で2回目だよ馬鹿なの私!?
はーってため息をついて机を見るとアパート家賃の請求書。え、このワンルームで一月8万円!?いやいやおかしいでしょ元の世界だったら3万くらいだったよ!?やっぱり東京は地価が違いますね・・・
翌日の忙しい朝。そういえば今日って燃えるゴミの日だよね。そう思いながら準備しようと棚を覗きます。あれ、あれ?
「お母さーん、指定のゴミ袋は?」
お母さんは何やら困った顔をして一言。
「指定のゴミ袋・・・?何のことかしら?そこの袋でゴミ出しすればいいじゃないの」
「そ、そこのってこれでゴミ出ししていいの?」
「?普通じゃない」
もしかして東京23区って指定ゴミ袋の概念がないの!?知らなかったー。
そんなこともありながら歩いて西焼津駅へ向かいます。お母さんはこの世界では公共交通機関も充実していますし、駐車場も高いので車を持っていません。ナチュラルローソンを初めて見て感激したり、ここにもマンションが・・・とその変貌ぶりを楽しみました。上には静浜空港へ着陸しようとする飛行機がひっきりなしに飛んでいます。静岡は空港が遠いからこんなに飛行機が近く見えるのは新鮮です。水素で走る都営バスが走って、水素バスなんて焼津で初めて見ました。現実の焼津なんて静岡から来たであろうお古のバスばっかりなのに。
「・・・このコンビニの駐車場、止めるだけでお金かかるの!?」コンビニにタイムズの看板があって、コインパーキングの設備があります。衝撃の光景ですね。都会はこんななんだ・・・絵に描くとき役に立ちそうだから覚えておこう。
西焼津駅は元の世界では小さな駅ですが・・・
なんということでしょう!!
巨大な駅ビル「アトレ」と紀伊國屋書店が建っているではありませんか!!それにしても凄い人。ちなみにここは元の世界の東京で例えると大森駅か西荻窪駅あたりでしょうか。
ホームに降りるとちょうど電車が発車していったところでした。でもここは東京ですからね。
<♪まもなく1番線に 各駅停車 原行きがまいります>
ほらきた。ああ東京だなー、という音楽と音で10両の青い電車が入ってきました。それにしても東京の電車の本数は異常ですよね。朝は2分待てばすぐ来るんですから。
そしてすごい混んでます。何これ!!
人の波に押されて無理矢理乗車しました。押しつぶされそうですごく苦しいです。駅員さんが無理矢理押して車内に人を詰め電車は発車しました。元の世界の静岡でも朝の電車は混みますがスマホを見るスペースくらいはありますし、ドアから離れれば大丈夫なのに。今は周りの人とぎゅうぎゅうに密着しています。これが通勤地獄か。
次の焼津駅でさらに人が乗ってきました。早く、早く降ろして・・・
でもしばらく考えて別に嫌だとは思っていないことに気づきました。この電車がこんな満員なのはこの街にたくさんの人がいてそのエネルギーであり経済が回っているということだからです。その中に自分がいるだけで、自分が一人前の人になれたように感じて心地が良いのです。私は人混みがうるさくさえなければ結構好き、という変わった人間なのですね。電車のモーターもいつもと違う音がして面白いです。
電車は長い石部トンネルに入りました。あれ?あの向こうのドアの方にいるのは・・・未来だ。よかった、今日はちゃんと迷わず乗れたんだ。さすがに東京駅出たら電車は空くだろうからその時向こうに行こうっと。あれ、未来が顔を真っ赤にしてる。どうしたんだろう?
なんか様子がおかしいです。
目をこらしてよーく見ると、未来の後ろのおじさんがお、お尻を触ってる!?
痴漢!!!周りの人は皆スマホを見たり寝てたりで気づいていません。そういえば痴漢って大人しそうな子を狙うって聞いたけどなんで茶髪の未来を狙ったんだろう。うん、そんなことはどうでもいい!
私が未来を助けないと!!でも大声で言えるかな。もし勘違いだったらどうしよう。えん罪だったら?
もう一度未来の方を見ます。私に気づかないほどに顔を下に向いていて真っ赤です。後ろのおじさんのいかにもな顔・・・絶対勘違いじゃない。でも怖いな。
・・・いや、でも未来の方がもっと怖い思いをしてるんだから、私が!
電車がトンネルを抜けた瞬間、私は出来る限りの大声で叫びました。
「そ!そこのお、おじさん!!ちちち、痴漢です!!!」
おじさんは用宗駅で駅員室に連れて行かれました。私と未来も降りて軽い事情聴取を受けました。
「沙羅、本当にありがとう!!」
駅員室から出て電車を待っているとき、未来は私にこう言いました。
「未来だって前、私を助けてくれたから・・・」
「ありがとう!私、初めて痴漢に遭って、とにかく頭が混乱して、怖くて何も言えなかった」
未来は私にちょっと泣きながら抱きついてきました。な、泣いてる未来可愛い・・・私抱きつかれてる!?え、温かい!
「未来、向こうに女性専用車あるから行こう」
「・・・女性専用車あったんだ」
まあ静岡にはないですからね。私も今さっきまで気づきませんでしたし。
電車は用宗駅から元の世界の東海道線と違い海沿いを進みます。現実では浅草にあるビルを望みながら安倍川を渡ると中島駅に着きます。元の世界だと中島浄化センターがあるところですね。ここは品川ポジションでリニアも建設中です。たくさん人が降りて、電車はちょっと空きました。
電車は安倍川沿いに進んで、浜松へ向かうロマンスカーと空港へのモノレールが出る馬渕を抜けて元の世界の静岡大成高校の場所に東京駅があります。新幹線や井川研究学園都市へ向かう井川エクスプレスの始発駅です。ここで二人とも座席に座れました。奥には東京タワーが見えます。
アニメやAKBの広告が並ぶ秋葉原(ここは向こうの東京そのままなんです)、西河鉄道(元の世界の西武鉄道かな?)と瀬名川沼上ライナーのターミナル駅であり再開発が進む瀬名川(池袋と渋谷を足した感じです)、都庁や、新幹線も停車し大きなバスターミナルのある入江(新宿ですかね)と抜けて、もう遅刻していますがやっと興津駅に到着です。先生には電話して遅れることは言ってあります。ちなみに電車にこのまま乗ると赤レンガ倉庫やみなとみらいで有名な吉原市、さらに沼津の「原駅」まで行くことが出来ます。
「やっと着いたー」と伸びをする未来。
「すごい満員電車だったもんね」
「東京は東京で楽じゃ無いね、そうだ沙羅、昨日楓のこと好きっていってたよね」
「うん、言ったけど・・・」
うろ覚えですけど。
「楓はおっとりしてていい子だから!好きなお菓子はグミで得意科目は化学で飲み物はコーヒー、しかもブラック派でー」
楓のこと話してる未来、楽しそうだなー。楓は未来の大切な友人だもんね。でもどうしたんだろう。
「あ、ちょっとコンビニ寄ってくるね」
この世界の東京と元の世界の東京と大きく違うところ、それは平野がとにかく狭いことです。元の世界でも平野は一部を除いて住宅でびっしりで地方都市には珍しく地価が高いのに、それが東京になったら大変です。そのため山の中腹までびっしりと建物が並ぶ長崎市のような景観になっており、そこを移動する斜行エレベーターやロープウエイが何本も通っています。しかしその狭さから土地代は高いですし、高層マンションや団地も元の世界の東京よりずっと多いです。また道路も狭く、渋滞が起きやすいです。関東大震災の復興都市計画もないですからね。ちなみにこの世界の関東大震災は名前もあまり知られていない「武蔵地震」という名前になっています。地震と言えばこの世界では「東海地震」が首都直下地震と言われて恐れられています。
「結局東京は関東平野にあるのが一番だね」
「そういえば東京・・・江戸ってどうなってるんだろう?」との未来の疑問に答えてさらに調べてみましょう。
Googleマップや地図帳で見てみると、神奈川県(相模川西部は足柄県)と東京都、埼玉県の部分はまとめて江戸県となっていました。江戸市は有力大名の手で発展。海もあり交通利便性もいいこの街は人口80万人を超える、浜松市のような街になっていました。しかし利根川は家康のいなかったために今も江戸湾に注いでおり荒川や中川などもあるため洪水が問題だそうです。関東平野は広い湿地帯の状態が続き江戸湾は豊富な海産物で有名で、多摩はのどかで自然豊かな地域です。なお東北地方は、東京から遠い影響でほんの少しだけ衰退具合が収まっています。
「これなら平成たぬき合戦も起きないね」
「まあ舞台が静岡に変わっただけだろうけどね・・」
実際、志戸呂ニュータウン(現実の島田市)が舞台に変更されただけでした。
教室に重役出勤するとちょうど1時間目終わりの休み時間でした。
「ちょっと楓にコーヒー奢ってくるね」
「いってらっしゃーい」
もちろん標準語も静岡弁です。全国で物差を線引と言い、靴のイントネーションが違ったりします。またジャンボエンチョーやエスポットといったホームセンター、杏林堂薬局や弁当と惣菜の天神屋にお弁当どんどん、変なcmでおなじみのコンコルドが全国チェーン店になっています。スーパーもちづきも、しれっと生き残っていました。
それからこの世界のTV局は東京に雪のような物がちらつくだけで永遠にニュースで放送するため雪国の人から呆れられています(1分もせず止むため交通機関に影響すらしないのに)。まあ静岡は元から雪なんて降りもしませんからしょうがないですけど。静岡市街に雪が積もる?そんな異常気象あったら日本は沈没します。
あとこの世界だと全国の小学生に横断バッグが配られているんでしょうね。
「え!?上のやつって全部静岡県限定なの!!?全国に無いんだ」とすごく驚く未来。
「もう戻ってきたの、あれ、そのジュースは・・・」
「さっきのお礼!!沙羅が好きだっていってたぶどうジュースだよ、ついでにヤクルトも」
「あ、ありがとう!!はい、じゃあ未来にこれ」
「ポッキーじゃん!買ってきてくれたの!?」
「楓にガム買ったときにね」
「え、そうなんだ・・・ありがと」
「今日はPBL授業をします」先生はそう言って、皆も準備を始めます。?????そもそも教科の名前が現代文から倫理国語になってる時点であたまが追いついてません。楓に説明を求めます。
「え~また変なこと言いますね~思考をロジカルに考えてクリティカルに問題に対して理解や考察して、クリエイティブに新しい解決方法を作る、これからの世界市民に不可欠な能力ですよ~!!忘れたんですか~」
?????
なにひとつわからないまま始まってしまいました。
「今日は『知恵』と『知識』とは何なのかどう違うのか、説明を考えて定義づけてみてください」
なにこの授業!!難しすぎるって、大学!?
なんとかPBL授業を乗り越えて、お昼休み。
「何あの授業ー楓はどうして出来るのー」
「え~未来だっていつも意見いっぱい挙げてるじゃないですか~っ」
楓と未来が楽しそうにお話ししてる。未来はとっても笑顔で可愛い。
でもなんでだろう。未来の笑顔は私には今向けられてないのがなんだかすごく悲しくてイヤになっている自分がいます。未来の笑顔がイヤなんて私、性格悪いな・・・
「それにしても痴漢なんて怖いですよねっ~!!楓もやられたことありますけど、本当に最低ですよっ!!」
「楓ー、そうだよね!ホント最低だよね!!・・・でも、やっぱり怖かったよ・・・」思い出したのかまた悲しそうな顔になる未来。未来・・・どうにか元気づけてあげたいな・・・
「大丈夫ですよっ」そう言いながら楓は座ってる未来を思いっきり包んで抱きしめました。・・・えっ!?
「ぎゅっ・・・」
「・・・え、ちょ、ちょっと楓~」
なんでだろう・・・なんで、未来も楓も、二人ともすっごく可愛くて、慰めるために抱きしめるなんて見てるだけでいい気持ちになりそうなのに(すごい可愛いって視線を周りから感じるし)、嬉しいはずなのに・・・なんで、嫌な気持ちになるんだろう・・・
「ふ~、これでもう大丈夫ですねっ~」
「もう楓は急だなー、ちょっと暑いよーでもサンキュッ!ホント、ありがと・・・」
未来、顔真っ赤だなー。暑かったのかな、恥ずかしかったのかな、でもなんで、変な気持ちなんだろう。なんだか未来のこんな光景を見てられないよ・・・でもなんで・・・
「沙羅さんも勇気出して未来守ってくれて・・・お礼に・・」
あれ、このパターンは・・・
「ぎゅっ・・・」
私もー!?・・・なんだかお母さん的優しさを感じるし安心する!でも、未来にやってほしかったな・・って何考えてるの私!未来や楓に抱きしめられるなんて私にはとても釣り合わないのに・・・贅沢な悩みだよね。そもそも楓大丈夫かな、私の汚い菌とか移ってるんじゃないかな。
「まあ楓に出来るのはこれくらいですねっ」
そっと離してくれると私の顔が真っ赤なのが分かります。未来も顔が真っ赤で、なんだか顔が引きつってるような・・・なんでだろう?
「さ、沙羅~こっちきてー☆」未来は私の手をひょいととります。
「えっ未来・・・?」
「沙羅は今から私と話すんだよねー!!」
「え、う、うん・・・」そうなの?
「ふふ、いいですよ~」と小さく笑う楓。
私は流れから、いつの間にか屋上庭園に連れてこられました。
「み、未来・・・今日どうしたの?」なんだか未来の声が低くて、ちょっと怖い。
「・・・あたし、なんか今日おかしいみたい」
「え、どうしたの!?熱でもあるのかな・・・?ちょっとおでこ触らせて!」
「そ、そそそそういうことじゃないよー」
「ねえ、沙羅放課後によりたいとこあるんだけど、一緒にいい?」
「?いいよ、でもどこ行くの?」
「ひみつ!!」
放課後になると入江の駅前に乗換のため来ました。道路にはランボルギーニやらフェラーリやら高級車にカートにLUUPと、いろいろな車がいます。そしてタクシーがすごい多い!!こんなにいる?
「それにしても沙羅、なんでこんな初めての世界でスムーズに乗換できてるの?」
「地図とか見るの好きだから、東京都の区内の鉄道は昨日大雑把に把握できたよ」
「何その超能力!?あたしは方向音痴だから羨ましいよ、静岡駅の地下道ですら迷うもん」
これは私のもう一つの長所ではないでしょうか。地図を読み解くのが得意だから、方向さえ分かれば大丈夫です。そこ!!垂水ジャンクションは?とか大山崎ジャンクションは?とか言わない。
「・・・人も多いしはぐれないように手繋ぐ?」と冗談のように言ってみました。未来は方向音痴のようですからはぐれたら大変ですし。まあ私の手を握りたい人なんて・・・
「えっ、いいの!!?」いや、私こそいいの!!??
私が手を差し出すと、優しく未来は握りました。夏の温かさとは違う温もりが手から伝わってきます。例えるなら温泉でしょうか。(?)そして未来が一言。
「・・・沙羅の手冷たっ!」
「あ、私冷え性だから・・・ごめんね」
「でもこれからの季節はほら。ちょうど良いよ!」
「フォローありがとう!」
・・・未来の気遣いが優しくて、私自身の体がとても憎くなります。どうして私の体ってこんななの?
<パーパラッパラッパー パーパラッパラッパー!>
黒い右翼の街宣車が軍歌と突撃ラッパを響かせ通り過ぎていきます。ホント、東京っていろんなクルマがいますね。
未来「うるさい!今いい雰囲気だったのに!」
この地下鉄の駅は大分深いです。エスカレーターがすごく下まで続いており恐怖を感じたので、未来と一緒にエレベーターで降りました。そして地下鉄で15分。
「ここが目的地?」
「そう、昨日調べたんだー!」
目的地は日本平(標高307m)の中腹です。日本平は山頂までびっしりと建物に埋まっていますが、一部は公園になっており展望台がありました。お金のかからない隠れ観光地です。夕日に照らされる果てまで続くようなたくさんの超高層ビル群が見下ろせ、そして奥に富士山がそびえ立つ絶景。周りがカップルだらけなことを覗けば良い場所です。背後の日本平山頂には高さ300mを誇る東京スカイツリーが建っています(日本平の標高を含めると海抜610mになるそう)。
「きれい」
「そうだね」
荷物を地面に置くとしばらく二人で街を何も言わずに見つめていました。未来が何を考えているか分からないけど、それが少し安心するような心地よいような感じになりました。
街の中を見ると大きなクレーンが伸びて再開発をしている場所が見えます。この街はどんどんすごいスピードで変化しているのです。「東京」というアジア有数の大都市のエネルギーを感じます。高層ビルが建ち並ぶ景色は面白いものです。やがて周りの街灯がつき始め街に明かりがどんどん灯って綺麗に月も出てきました。夜景が綺麗になってきました。「残業の明かり」、しかし私たちの生活は良くも悪くもそんないろんな人たちのそんな仕事に支えられているのですから、馬鹿にはできません。私や未来だっていつかは高層ビルの明かりを灯す一部となるかもしれませんから。それにしても座る場所が全然ないな。
(まあ私が高層ビルに勤められるほどのエリートにはなれないと思うけど)
そしてこれが東京一極集中が進む一番の理由なんでしょう。「東京」にはたくさんの人、特にエリートが働く場所がたくさんあって、「地方」から吸い取ったことによりこの街は繁栄しています。元の世界の静岡も東京への流出による人口減少は激しいですからね。
東京にはたくさんの会社があります。たくさんの会社がなんで集まるのか、それは集積メリットといって交流が活発になるからです。商品を売るとして宣伝するには東京のテレビ局に、融資をするなら東京に本店があるメガバンクに、世界に売るなら東京に本社を持つ総合商社に。新しい研究をするならエリートが集まる東京の大学に、法律や陳情が関係するなら東京の省庁に。取引する会社や中央省庁が東京にあるなら・・・と工場は地方、本社は東京に置かれます。東京に交通機関が整備されて、東京に出て働いてもいい人が増えて、メディアは東京の宣伝をするからどんどん東京は会社や人が集まっていくんですね。
「沙羅ってさ・・・楓のこと好き?」
「もちろん!優しいしお友達だもん」
「良かったー」未来はどこか安心した様子です。
「でもどうしたの?」
「なんかねあたし、ちょっと楓にヤキモチ焼いちゃってたみたい」
ヤキモチ?なんでだろう・・・でもそっか、ヤキモチか。あの気持ちは・・・
「実はね、私も楓に嫉妬しちゃってたかも・・・未来にも楓にも失礼だよね」
「全然失礼じゃないよー!おそろだね!!」
「へへ・・・楓に謝らなきゃかな・・・」
「ホントにねー」
「沙羅見て、月が綺麗だね」
確かに満月には夜景とはまた違った綺麗さがあります。
「ホントだ、綺麗・・・え?」
あれ、これって告白の言葉だったような?
風がヒューッと西から吹いてきました。
「・・・私、沙羅のこと好きだよ」
急に恥ずかしいこと言われて思わず顔が真っ赤。
えっと、どう答えよう。未来は、未来はー
「私も好きだよ、ずっとお友達でいようね!!!」
未来は私にはもったいない程にいい友達ですからね。永久に一緒にいたいから、だからずっと大事なお友達!!
「・・・そうだね!」
その後、なぜか落ち込んでいる未来と、日本平駅から地下深くを走る都営地下鉄大駿府線で馬渕、そこからJR駿河線で有楽町へ出ました。元の世界に戻るためです。
「ちょっと名残惜しいけど戻ろっか」と私が未来に聞くと、
「元の世界が懐かしく思えてきたしね」と未来も同じ事を考えていたようです。
目を開けると、思った通りそこにはいつもの静岡駅がありました。いつも通りの景色に少し懐かしいと感じました。
「さて、いつもの焼津に帰ろっか」
「そうだね」
いつもの、混んでるけど苦しい程ではない電車に乗ります。なんだか安心します。
<この電車は掛川・浜松方面普通電車の豊橋行きです、お手洗いの設備は・・・>
「ところで浜松が首都だったらっていうのはないの?」
「まあ浜松も家康が駿府に移るまでの居城だったし、戦後には河野一郎(河野太郎のおじいちゃん!)による浜名湖首都移転構想があったけど・・・」
「けど?」
「作者が浜松に詳しくないからやらないって」
「まあ静岡と浜松はほぼ別の県だからね、いっそ独立しても違和感はないぐらいに」
次回は静岡が大阪のようになった世界です。




