江戸幕府が続いた世界線4
「絵踏みもあるんだ」と教科書を確認して私がぼやきます。
「なんだっけそれ」と未来。
「キリスト教が禁止されていた時、こっそり信仰してる人がいないかマリア様が彫られた板を踏ませたの」
「えっ、じゃあこの世界まだキリスト教禁止なの!?うちの学校が消えちゃう」
「大丈夫、明治に諸外国から猛反発を受けてなくなったよ、ってか宗教の時間にキリスト教の禁教について習ってるでしょ」
「そうだった、じゃあこの世界は今何を踏んでんの」
「松本、池田、大川といった人物が彫られた板だって」
「ところで、そもそもこの国の政治ってどうなってるの?」スルーされた!
「調べたんだけど将軍こと大君は徳川の世襲だけど象徴みたいなもので政治の中心は老中だね、老中は任期4年で3人いて、月ごとに交代する代表が主な業務を受けて、重要なものは3人で相談して決定する感じだよ、これは江戸時代から変わってないみたいだね」権力を3人に分散する形なので責任も分かれるんですね。
「へえ、江戸幕府って3人で決める方式だったんだ、以外と民主的かも」
ちなみに今の老中は酒井忠順、本多順明、あと麻生太郎です。
「急に聞いたことある人出てきた!」
ちなみにこの世界では自民党が存在せず、労働党と保守党がその代わりを担っています。イギリス・・?
NTTの電波塔や県庁のビルを横目に再び新駿府駅が入るショッピングセンター、新駿府セノバにやってきました。
「うわ、いかにも武士って人が歩いてるよ」と未来はびっくり。
ちょんまげを生やして袴をはいています。銃もさしています。
この世界では武士は刀ではなく銃を持つようになったのかな。郵便局員も昔は護衛のため銃を持ってたと言いますし。
その武士は私達とすれ違ってしばらくすると立ち止まりました。
(どうしたのかな)
するとその武士が突然銃を天井に向けて撃ちました。
パーン!
「「え」」
「キャー!」「逃げろ!!」
周りの人が一斉に逃げ出します。私も状況をよく把握できないまま二人で出口へ逃げます。
パン!パン!
乾いた銃の発砲音が何度も響きます。
「なにしてるんだ!!捕まえろ!!」
スーツを着た男何人かが銃を取り出し、犯人の方に向かって撃ちました。
「頭を低くしろ!」「キャー!!!」
現場は完全にパニック状態です。未来はあたふたしている私を引き連れ、とっさにお店に隠れました。
どうやらこの世界では刀にかわって銃が一般化されており、このような無差別銃乱射事件が時々起こるのだとか。規制の動きはあるけど全日本ライフル協会なる団体が反対するんだそうです。しかも幕府の与党政党や軍、司法などと密接な関わりもありますから、ますます規制は無理です。この世界の日本はホームセンターでも銃弾が普通に売られている銃社会なのです。
「犯人が倒れたぞ!!」
誰かが叫び、サイレンの音が聞こえてきました。
しばらくして、「い組」「は組」とか書かれたヘルメットを被った火消しや奉行の武士が大勢やってきました。
「町娘さん達大丈夫かい?」
そう声をかけてくれる武士の姿はとてもかっこよいものでした。
私達は武装した警察官の誘導に従って外に出ました。駿府奉行所と書かれたパトカーや消防では無く火消しの車がたくさん止まっています。
「こ、怖かったよ・・・未来ありがと」
緊張の糸が途切れたのか私は思わず泣いてしまいました。
「うん、怖かったよ、し、死ぬかと思った、」
未来も私を慰めようとしたのでしょうけど、結局泣いてしまいました。
「私は今現場のショッピングセンターにいます。見ての通り多くの緊急車両が集まっているのが分かります。男は付近にいた武士に撃たれて取り押さえられましたが、少なくとも10人以上が病院に搬送されていましてー」
私達のすぐ近くでテレビ中継が始まったようです。
この世界は武士階級と庶民階級の格差も未だにあります。さすがにえたひにんの身分はありませんけど。世襲制が現実以上に政治で進むため、やっぱり暮らしにくい社会でしょう。忠義・礼節・厳しい上下関係がそのまま受け継がれています。それから静岡県といえばお茶ですが、これは幕府崩壊後失業した武士が静岡で土地を開墾してお茶の栽培をしたことが大きいので、静岡はお茶の名産地にはなっていません。そもそもあの世界ではたまたまうまくいっただけで、外国の植民地になっていたかもしれませんからね。
「戻ろう、怖いし」と私は未来に懇願しました。
「そうだね」
私達は駿府駅の家康公の大きな銅像前でタブレットを押しました。
そこには平和な駿府あらため静岡駅の姿がありました。私達の制服もいつものスカートにブレザー服。
「良かったあ」
「もうこりごりだよあんな体験」
再び私達はさっきのことを思い出して泣いてしまいました。
「でも徳川家のおかげで、なんだかんだ日本は約二百年間平和な時代を送れたんだからすごいよね」
「そこは素直に尊敬する」
後ろにたたずむ家康公の銅像にお辞儀をして、駅構内へ向かいました。駅構内でばったり出くわしたのは・・・
「わあ、お二人でお買い物ですか~?」
静岡駅に寄り道してた楓でした。
「それで未来は、ちゃんと出来ましたか~?」
「ん?何のこと?」
「・・・も~せっかくこの楓がアシストしたつもりだったんですけど~鈍感ですね~」
二人で頭の上に?を浮かべるのでした。
次回は日露戦争に惜敗した日本です。




