江戸幕府が続いた世界線3
「さて移動した訳だけどやっぱり景色変わらないね」とぼやく未来。確かに景色はいつもの普通の日本です。
「まあいつものことだしじっくり見てみよう」
とりあえず涼子の家へ戻ってみると、涼子の家は消えていました。普通の小さな家が並んでいるだけです。
私「あれ?」
あ。あの読み上げたものを思い出した。
「江戸時代は藩主だったからそもそもここにはいないのか!」
「え、じゃあ涼子のお姫様姿見れないの」
「うん、残念ながら・・・」
「そんなあ」と悲しそうにいう未来。
「てか冷静に考えて、友達でもないのにどうやってお姫様姿を見るの?」未来も無計画ですね。
「スマホで調べればいいんじゃないの?」
「あ、そっか」私もバカでした。さっそくスマホを取り出します。
「望月涼子っと、出てきた」名前が一緒で助かった。
そこには綺麗な和服をした可愛い涼子の姿がありました。まさに大和撫子といったところ。
「わー可愛い!!」
「・・・私にも可愛いって言ってよ」
なんかふてくされています。急に不機嫌です。焼きもち焼いたのかな?
「うんうん、未来も可愛いって!!」
「やったー!!」
思った以上に単純!
桜橋駅に戻ると、看板が少し変わっていました。
「静岡鉄道が駿府鉄道に変わってる」
「駿府城ってあるけど静岡は昔駿府って名前だったんだよね」と未来。まあこのくらいは静岡県民なら皆知ってることでしょう。
「確か史実では府中とも呼ばれていたんだけど、明治政府に対する不忠、とも捉えられるからと近くの山から名前をとって静岡になったけど、この世界では名前がそのまま受け継がれて駿府特別市になってる」
「県名も昔っぽいね」
未来がホームに向かって構内踏切を渡ります。あれ?
「未来、そっちは新清水方面だから反対行き」
「あ」方向音痴ですね未来は。可愛いからいいです。
<今日も駿鉄電車をご利用ありがとうございます>
電車の中の乗客は洋装9割、和装1割くらいでした。
日本地図を調べてみると律令制の枠組みを統合した県が出来ていました。ちなみにここは駿河県です。
静岡県は浜松県(県庁浜松市)、駿河県(県庁駿府特別市)、足柄県(県庁小田原市)に分裂しています。正直こっちの方が感覚的には近いですね。静岡県は横に長すぎですし、文化も全然違いますからね(静岡県あるあるも全く通じないことが多いし)。
「北海道ではなく蝦夷地になってて、琉球王国もある」
「沖縄は国外ってことは、修学旅行この世界ではどうなるんだろう?」
電車の目についた広告を読み上げてみます。
「駿府奉行所からのお知らせ 振り込め詐欺に注意」
「奉行所かー」と未来は字面に笑っています。
「武士って感じ」
「この世界には忍者も侍もいるんだね!?」
「皆洋服だけどね」
「なんか異世界みたい!」
「(一応異世界だからね)教科書を見たけど夫婦別姓で同性婚も認められてるんだ」
「意外だね」
「江戸時代はそもそも夫婦別姓だったからね」
江戸時代の女性は結婚後も姓を変えることはなく、独立性が高かったとされます。実は庶民階級では男性が育児をしており、家父長制は武士だけだったとか。育児男性、家事女性といったところ。また男同士の同性愛である「男色」も盛んでした。※諸説あります
まあ男色の実態は成人男性が未成年と行う一方的なものが多かったそうですが(ピー事務所かな?)。
未来「じゃあなんで元の世界では同性愛が駄目みたいになったの?」
私「別に駄目ってわけじゃないよ、明治政府が海外の同性婚は悪という文化をそのまま取り入れたからだね」
未来「なんで海外だと駄目だったの?」
私「キリスト教で同性愛は悪とされたからだね。実際同性愛はWHO(世界保健機関)で1990年まで病気扱いだったし」
私「嘘でしょ参勤交代もやってる」
未来に調べた画像を見せてあげます。そこには武士の集団が座席におとなしく座る画像が。
未来「こ、これは笑っちゃう」
教科書に貼り付けられた写真がシュールで笑ってしまいます。ちなみにこういうときは新幹線・飛行機は貸切となります。
「この時代でもまだやるのか」
「オンラインにすれば?」
「もはや参勤交代じゃないでしょそれは、そういえば参勤交代って幕府が大名にお金を使わせるためじゃなくて将軍への忠誠を示すためだったらしいね」
「え?なんかお金を使わせて力をなくすためって習ったような気がする」
「実際は大名が見栄のためにイケメンをたくさん雇って綺麗に見せたり規模を大きくして、勝手にお金を使ったのが本当らしいよ、実際金を使いすぎだって幕府から注意令が出されたこともあるし」
「ただの自滅だったんだ・・・」
「まあ金は天下の回り物って言うし、これのおかげで全国に道路網が整備されたわけで」
なおコロナの時期(2020年~2023年)にリモート参勤交代をしていたようです。もはや伝統行事だからなんとなくやってる、という感じですね。日本らしいです。
電車で駿府城にやってきました。この世界では今でも県庁の役割を果たす行政施設です。ここは今川家の頃から大きな屋敷で家康が幼少期に過ごした場所。そして最晩年に家康が大御所として絶大な権力を振るっていた晩年に住んでいた城です。天守閣は江戸城よりも高かったとか。現実では今は公園ですね。ただし駿府の街はいわゆる天領なので政令指定都市のように県レベルの行政権限を持っています。
私「城が県庁なんだね」
未来「きれいな建物、元の世界だと公園だよね」
「城が軍によって破壊されることもないからあちこちの天守閣が残ってるみたい」
この駿府城、元の世界では明治時代に陸軍の連隊が入ったため城郭は全て取り壊されたそうです。しかし、この世界では健在で県と市の合同庁舎の扱いとなっています。しかし城の土塀に消費者ホットラインの垂れ幕があるあたりが今も現役の施設なんだと感じさせます。そして天守閣がしれっと再建されてるのが面白いですね。なんか愛知県庁舎みたいです。
なお一部の物好きな諸侯は和洋折衷な城に建て替えています。
「軍が破壊?」
「明治時代にお城は使わない広大な土地になったから現実では全部壊して軍の土地にしたの」
「もったいなー」
未来は残念そうに言いました。
「寺社仏閣もそのまま、廃仏毀釈や神仏分離もないね」
「はいぶつきしゃく?」
「明治時代に天皇中心の国家を作るために仏教の仏像なんかを壊す運動が起こったの、この時期のお寺は大変だったと聞くね」
「なるほど」
いやわかってるのかな本当に。
「それから桜も多種多様な種類が今も植わってるね」
「え?桜ってソメイヨシノしかないんじゃないの?」
「せめて川津桜は思いついて欲しかったな・・、明治政府がそれまで多かった桜であるヤマザクラを植え替えたの、これも徳川体制の排除だって言って」
未来「あ、あの人が武士!?」
普通にスーツを着ています。ぱっと見わかりません。でも刀をつけているから分かりますね。
未来「切り捨て御免とかされちゃうんじゃ」
私「切り捨て御免は江戸時代からしっかり許可を得ないと出来ない行為だったから大丈夫」
「ほら見て、プラモデルの街駿府 神君家康公の甲冑だって!!さすが幕府の世界」
(それは元の世界にもあるよ!!)というツッコミはこらえました。
私「大陸にも江戸幕府は進出しないから日清戦争も太平洋戦争も無い」
未来「めっちゃ平和だね」
江戸幕府は積極的な大陸進出をしていません。そのためアメリカと対立せず平和です。
大韓帝国、中華民国、日本、琉球王国で東アジア共同体を作っています。東アジアのEUとして貨幣を統一しようという話もあるようです。この4国が仲良くするなんて平和でいいですね。
「東京に人が集まらず全国の都市が成長しているね」
「そもそも江戸のままだね」
江戸は政治、京都は朝廷、商業の大坂以外にも事実上連邦制の県がまちづくりをしています。
駿府弘前仙台新潟福岡高知長崎etc・・・
結果、地方の発展が促進されて四国を含む全国に新幹線が開通しています。過疎化と多極集中が問題だそうですが。
現実でずいぶん問題になっている東京一極集中がないってすごい世界です。まあ田舎の過疎化は変わらないでしょうけど。北海道や東北は失業した武士による開拓が進んでいないので元の世界以上に過疎化が進んでいますし。
私「あれ、ずいぶん日本に都合良い世界だよね」
未来「別に悪いこともなさそうじゃん」
私「むしろ日本らしいよ」
夫婦別姓をめぐる歴史と論点(1)明治初期における夫婦別姓の採用
https://www.theheadline.jp/articles/350
恋多き男たちー日本の「男色」文化と性の多様性を考える
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00925/
火事っこ ソメイヨシノの寿命・植替え・添え木した場合の寿命の変化
https://kajikko.com/reform/reform_gardening/1033189