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江戸幕府が続いた世界線1

 今日は5月11日土曜日、涼子の誕生日です。午前中の授業(といっても文化祭で何やるか決めただけなんだけどね)終わりに、そのまま涼子の家で誕生日パーティーを計画しました。今は静鉄で移動中です。


<次は御門台です。The next station is Mikadodai.>


「なんで土曜日に学校あるんだろ」と面倒くさそうにぼやく未来。合服期間に入ったので、未来はもう夏服を着ています。


「昔は半ドンって呼んでたらしいよね」

 私はテレビでやってたどうでもいい知識を披露してみます。

「でもなんで半ドンって言うの?半分のどんぶり?」

「ドンはフランス語で休日って意味で1日の半分で帰るからだよ(諸説あります)」


「まあ正直面倒だよね」と涼子も同意。先生も心の中では面倒だと思ってるのではないでしょうか。


「そういえば涼子の家って初めて行きますね~」「私も涼子の家楽しみー!」と二人は楽しそうに言います。



「未来と楓は驚くだろうなー」

 私は前に2度ほど行ったことがあります。家はこれからのお楽しみです。

 ちょうどおばあちゃんがゆっくりと乗ってきました。駅横のスーパーで買い物したのか、荷物は重そうです。周りの席はどこも空いていません。これは・・・まあ譲るべきですよね。恥ずかしいけど・・・人としてやらなきゃ!


「「「「どうぞ!!!」」」」なんと皆まったく同じ事を考えていました。

「「「「え!?」」」」と私たちもおばあちゃんも周りの人も皆びっくり。

「こんなことある?」「嘘でしょ」「凄い綺麗にハモりましたね~」

「じゃあ私が立つね」「あたしが立つよ!」「ここは私が」「楓が立ちますね~」


 結局皆で立って、おばあちゃんに「みんなありがとうねぇ~」と言われて、座って貰いました。




 静鉄の桜橋駅で降りてしばらく南へ大きな道路沿いを歩いて、脇道に入りました。

涼子「あ、あそこが私の家」


「・・・えっ!?これ!?」「ここが涼子の家ですか!?」と未来と楓は声を揃えてびっくり。それもそのはず。まあ私も初めて来たときはこんな感じでしたね。


 そこは古い壁と大きな門に囲われ、中に平屋の大きな屋敷が建っています。庭には池や日本庭園のような景観が広がり、まさしく豪邸と呼ぶにふさわしい立派な邸宅です。


 声を上げることも出来ないという感じで「さあ、入って」との涼子の声に押されて涼子がオートロックを解除したあと中に入っていました。


「そ、そういえば涼子の両親って何やってるか聞いたこと無かったけど」と未来が慌てて聞きます。


「会社の社長」と涼子はさも当然かのように言います。


 門には三日月と星を組み合わせた家紋があります。楓がそれを見つけてまたびっくり。


「こ、これって~月夜グループのマークですよね!?」


 月夜グループ。浜松が自動車の鈴木に支配されているとするなら、ここ静岡を支配するのはこの月夜グループといっても過言ではない物流系企業です。他にもいろんなことをしています。


「あの鯨のcmでおなじみのあの!?」と楓はもう驚きが止まらない様子です。


「草薙にも静岡にもビルをたくさん持ってるよね」と未来、学校からも見えますし、最近静岡の駅前にも新しいビルを建てたばかりです。


「トラックもよく見るもんね」と私も話に参加します。玄関までは石畳が繋がっていてガーデニングのお花が綺麗です。古そうな木のドアを開けると玄関までやってくると女性が挨拶。


「こんにちは、いつも涼子がお世話になっています」

 そう、涼子のお母さんです。かなり若く見えて涼子をそのまま大人にしたみたいな感じできれいです。玄関はたくさんの来客が迎えられるようにか、旅館の入り口のように広いです。玄関にもお花が綺麗に飾ってあり、月夜グループの宣伝映像が流れるテレビもあります。玄関すぐのとこには4人くらいが待てる小さな待合室?もあります。そしてどこからかカコンと、ししおどしの音もします。



「こ、こちらこそいつもお世話に」と未来も急に緊張した様子です。

 さっそく涼子に案内されます。私は2度来たことがあるとはいえ、大きすぎて把握できていません。一回全部探検してみたいです。ワイナリーやグランドピアノ部屋、書斎にオーディオルームに衣装部屋とかいろいろあるらしいですからね。中は10年くらい前にリフォームしたらしく綺麗です。




 涼子の部屋に入ると、絨毯の敷かれた床の上にベットと勉強机とゲーミングパソコン、いろんな趣味の物やアニメのポスター、過去に涼子が貰った賞状と私の描いた絵があります。しかし部屋の内部もとても整えられてきれいで、部屋も結構広いです。大きな窓から火がよくさして、外のジャングルジムとブランコがいい感じ。この部屋だけで私の住むアパートを遙かに超えてます。



「この人形かわいいですね~」と楓はスマホを取り出しながらベットを見ています。


「うわー、こんな感じだったんだ涼子の家」、未来はさっきから驚きっぱなしです。


「望月家はかつて一藩を納める藩主で、明治時代に廃藩置県が終わると清水に引っ越す。その時の当主は徳川家旧幕臣のお茶栽培支援のためお茶の輸送事業を始める。その後の息子が経営多角化を進め成功。みたいな歴史があるんですね~」と楓。


「会社のホームページを目の前で読まれるの恥ずかしい」と涼子はすごい恥ずかしそうです。


「藩主ってことは先祖はお殿様!?すごい!!」と未来は感激しています。


「いや私が凄いわけじゃないから」と涼子は謙遜。


「将来は女社長になるんですかね~?」楓がそう聞くと、

「私には荷が重すぎるよ、兄が継いでくれるから」と涼子は答えました。まあ社長という柄ではありませんからね。そこにチワワが部屋に入ってきました。


「あ!チワワ!可愛いー」と未来も言います。


「可愛いよね、ムンちゃんって言うの」と涼子は紹介しました。私は前会ったことがあるので驚きはしませんが、和風の家で飼ってるイメージってありませんよねチワワって。


「いいなーうちにも50兆円くらいあったらいいのに!」と未来。

「日本の国家予算の半分がどこから湧いてくるのか、そもそもうちに50兆円もないよ」

落ち着いた様子で急なマジレスをする涼子。

「正論やめて!沙羅だって50兆円欲しいでしょ!」

「え!?う・・・うん、それだけあったらお母さんも楽、できるかな・・・?」

 お母さんが楽できたら私も嬉しいな!そもそもお母さんが大変なのは私のせいだし・・・

「やめて沙羅の天使的考えにあたしの考えてたこと恥ずかしくなっちゃう!」





パンっ!!

 クラッカーから紙テープが落ちました。

 「「「「涼子誕生日おめでとう!!」」」」

 今いるのはこの家のダイニングです。他は畳なんですがこの部屋だけはフローリングで、快適そうなソファーとマッサージ機、大きなテレビが置いてあります。テレビの横にはよく響きそうなステレオ。外には大きく古そうな蔵が見えます。涼子曰く「あそこの中には徳川慶喜の手紙とか渋沢栄一の写真くらいしか珍しいのはないよ」とのこと。もう突っ込むのは放棄です。テーブルには豪華な料理がたくさん。未来はさっそくマグロのお刺身をパクり。

「このお刺身おいしいー」


「すごい、お母さん料理うまいですね~」と楓もびっくりしています。


 涼子のお母さんの手作り料理はとてもおいしかったです。ちなみにお父さんは夜帰ってきてまたパーティーするそうです。

 ご飯を食べ終わったら皆で誕生日の歌を歌いながらお母さんがケーキを運んできました。歌ですが、楓だけ音が外れてばかりです。音痴だったんだ。


「ケーキも立派」と私が言うと、楓も

「きれいですね~」と涼子のお母さんのすごさに同意見のようです。


褒められてうれしかったのか、「お母さん、ありがとう!!」と涼子もお母さんにお礼を言いました。


「あ、このケーキポッキーが刺さってるんだ!私もポッキー好きだからやってみたいな」と未来。

確かに美味しそうでしょね。


「じゃあプレゼントを渡す時間だよ」と未来は高らかに宣言。

 この家に大量に置いてあったみかんを食べ終わった後、かばんに取りにいきました。


「えっ!?」と涼子はサプライズにびっくり。

「みんなでお金を出し合って用意したの」と私が言ったとき未来が戻ってきました。

きれいにラッピングされた袋を出して

「誕生日おめでとう!!」


「かたじけない!開けていい?」


「もちろん」(なぜ急に武士?)


「この大きさは!!間違いなく全自動大根おろし器「全然違う」」

 サ○エさんの全自動卵割り機じゃないマイナー発明品を出さないで。


 箱の中から出てきたのは大きく赤い頭につけられるリボン。

「うわー、かわいいリボン!!つけてみるね」


「可愛いね、似合うと思ったよ」と私が言うと


「写真撮っていいかな、可愛い」と未来もスマホを出します。


「気に入ってもらえて良かったです」と楓。


「ありがとう!!」と可愛い笑顔で涼子は言います。いつもの変なことを言う癖が無ければ美少女なんだけどな。


「じゃあ次はみんなでゲームしようよ!!」


 そう言いながら涼子はPSとかいろいろあるテレビの下からNintendo Switchを取り出しました。

「マリオカートやろうよ!!」

ゲームかー。


「実は私、こういうゲームやったことなくてー」と打ち明けました。


「え、そうなの!?じゃあ何ならやったことある?」と涼子がびっくり。そういえば涼子とゲームの話ってしたことないな。


「プレステは?3DSは?Wii Uは?あ、もしかしてスマホゲーム?」と未来は矢継ぎ早に質問。


私「・・・全部やったことないです」

 信じられないかもしれませんが本当にやったことがないのです。ゲーセンにもうるさくて行ったことはないし、ゲームを親にねだったこともありません。絵を描く方が楽しいですからね。


「では皆で教えながら一緒にやりましょう~!」と楓。やっぱり皆私と違って優しいな。


「そうだね、じゃあみんなに教わるね!!ありがとう!!」





30分後

「沙羅めっちゃうまいじゃん!!」と未来が褒めてくれました。なんか恥ずかしい。

私「あ、ありがとう・・・」

楓「謙遜しなくても、3回連続で1位じゃないですか~」と楓。たぶんまぐれだと思うけどシンプルにうれしいです。


 と、なんだかんだで誕生日会が終わってもう4時です。これからは家族で過ごすそうなので早めに退散。その前にお昼寝するらしいですが。


「じゃあ今日一日、本当にありがとね!」と大きな門の前でサンダル履いて挨拶する涼子。妙に生活感のあるけどお嬢様の風格があふれています。

「わざわざありがとうございました」と涼子のお母さんも続けます。並んでみると確かに涼子のお母さんなんだなって感じます。


「「「ありがとうございました!」」」



「武士の時代がもし今も続いてたら涼子はお姫様か、見てみたいな」と帰り道を歩きながらぼやきます。涼子の和服姿ってどんな感じなのかな?


「じゃあ見てみよう」と未来は思い立ったようです。え?


「まさか・・・」

 未来は服をガサガサ探りました。


「テッテレー、IF世界探索タブレット」(わさドラ風に)


「やっぱり、なぜドラ○もん風」

 そしてなんでそんなとこからタブレットが出てきたんだろう。どこにしまってるんでしょうか。


「でも気になるんでしょ」


「武士というより江戸幕府が続いていたらがいいかな」


「幕府!いいね!!・・・ところでなんで江戸幕府って潰れたの?」


「じゃあ歴史のおさらいをしよ、日本は鎖国してて外国の船も追い払ってたんだけど(異国船打払令)、アヘン戦争で大国清が敗北してびっくり。『下手に追い払うと戦争になって負ける』ということで天保の薪水給与令で穏便に帰って貰うようにした」


「態度を変更したんだね」


「1853年に『開国してくださいよー』とアメリカのペリーが来航、ペリーは戦争をちらつかせたから幕府は1年間猶予を貰って考えた、その際に『一大事だ!』ということで大名にも意見を聞いて政治参加を促したのね、結局日米和親条約を結んで下田・箱館を開港したけど(その時大砲をおいたのが東京の台場ね)」


「1858年に幕府大老の井伊直弼が日米修好通商条約を結んだ、これが天皇の許可も得ないし、いわゆる不平等条約だったし大名にも意見聞いた前例が出来たせいで『天皇大切にしろ!!(尊皇)』『鎖国しろ!欧米追い出せ!(攘夷)』てなった」


「ここから滅茶苦茶になるんだね」


「そう、井伊直弼は暗殺されて『幕府って弱くね?』みたいになっちゃった、そんな中尊皇と攘夷をめざす山口の長州藩は外国船を砲撃して、京都で薩摩や会津藩と戦い破れた(禁門の変)ところで外国から仕返しを受けた、鹿児島薩摩藩もイギリスと戦っても()()()()()出来なかった、そこで皆こう考えた。『攘夷とか無理じゃん!!でも幕府のままじゃ欧米に対抗できないから天皇中心の国作ろう!』てなった、仲が悪かった長州と薩摩も坂本龍馬のおかげで仲良くなったし」


「現実に気づいたんだね」


「それで薩長はどんどん強くなったから将軍徳川慶喜は考えた、『幕府はそのうち倒されるな・・ならこっちから幕府なくして新しい体制にすれば!!』というわけで大政奉還で権力を朝廷に返還、権力は徳川が握るつもりだったけど薩長が王政復古の大号令を発して新政府を作って、徳川勢力と戦う戊辰戦争で勝利した、というのが一連の流れ」


「なるほど」と納得した様子の未来。ではやりましょうか。とその前に。

「あ、楓ごめーん忘れ物しちゃったから取りに行ってくるね!」

「そうですか~では楓はここで待ってますね」

「いやうーんとね、沙羅と二人で忘れ物行ってくるから!!」楓はしばらく考えた後、何かを納得したように思い切り笑顔で一言。

「・・・なるほどそういうことですね~未来、頑張ってくださいね~」

「「???」」

なんだか、楓に勘違いされてる気がするのは、私達の気のせいなのかな。

「ではお二人とも、お先に失礼しますね~」

「「バイバーイ!!」」


「「江戸幕府が今も続いていたら」」


 画面を押すと周りが光ります。


(さて今度はどんな世界かな)

月夜グループ・・・モデルは鈴与グループ。


次回は年表です。

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