貴族生まれのケンタウロス
気まずい空気が流れ続けている…
会話をしようにも何が好きなのか何が嫌いなのか――
というより俺の質問を全否定してくるような性格と喋り方でよくわかる。
コイツと一緒に過ごすなんてあり得ないな
「なぜ否定するんだ?!誘っているというのに」
「それがダメなんだって。俺はケンタウロスのこともあなたの生まれや家柄も良く知らないのにいきなり騎蹄士になってくれと?? お断りだな」
「じゃあどうしろと言うんだ!」
「そのくらい自分で考えろよ…」
僕の名はブレン。
この東京という都会より通じた門より通う学園に入学したのは父や母のように立派な騎士になることだ。我々ケンタウロスは見ての通り半人半獣と人々から汚らわしい目で差別されてきた。機動力と重量物を牽引する力や戦略的に戦場を駆け巡る知力が認められて人間よりも多く四足騎士が生まれたうえでそれを取り纏めたのが僕の父上。
母上も看護師としてチームを支える縁の下の力持ちになるほどケンタウロスの知名度向上を目指しているが、弱点である撤退行動が苦手なせいでどうしたものかと悩んでいたが突然この世界に異界巨扉が現れて僕らの生活や存在などが多くの人間に知れ渡る。
4つ足で歩く姿が凛々しいと評判を受けてパレードなどに護衛などの仕事を請け負う際に必要となるのは整備士の存在、それが騎蹄士というものだ。この学園が設立した時はそんなWIN-WINな関係を築ける職業があるのだと胸がドキドキしてきてグッと拳を握りしめた。くじ引きで引かれた威勢の良い人間を期待していたがなんという虚無感だ。
「…」
「なんだ?僕の顔をジロジロ見て」
「いや、男性もポニーテールをするんだなと思ってさ。カッコいいなと思って」
「出来れば美しいと言ってくれないか?カッコいいだけで騎士が務まるのであれば大間違いだ!」
人間側ではカッコいい、ケンタウロス側では美しいと標記されお互いの国文化が違えど案外喋れている2人である。正確には1人と1頭だ。
話し合ううちに学園側から支給された制服に着替える。
紺色のスーツに赤いネクタイと緑色の宝石が付けられたバッチをポケットに掛けて身だしなみを確認して出かけようとしたがブレンに呼ばれる。どうやらケンタウロスの生徒は尻尾の付け根をリボンで止めないといけない決まりだ。
尻尾はケンタウロスの命の次に大事な物でリボンには銘家の模様と色があるので、判別するのにも皆長髪で背や体格が同じに見えることからそう決められた法律だ。ブレンは勇ましく育つ願掛けでライオンが騎士の盾を装備している刺繍と黄色のリボンを付けるように栄羽を手ほどきをする。
「言っておくが手荒な真似をすれば後ろ足が反応するからな」
「わかった。ギュッと結べばいいのか?」
「リボンが取れないようにゆっくりとな」
どうすればいいのかわからないが叱責されながらもリボンを結んでは今後のことを考える。
騎蹄士というケンタウロスを支える支援職業に応募するも答える相手は意地っ張りで貴族生まれで庶民生まれである栄羽はやっていけるんだろうかと不安が過ることもありえたが1つの目標を定められた。
『ケンタウロスのことを良く知りえてアイツを見返してやりたい』
「初めてにしては上手くいった方だな」
「まぁ、これからお世話になるからね」
「いつもなら無気力な顔を浮かべたのにどうしたことだ?イラついたのか」
「別に…フッ」
何を笑われたのかがわからないブレンが栄羽の顔を覗いて怒ろうとしたが彼の無気力な顔が一瞬だけ真面目そうな目つきに変貌した。ケンタウロスのことを理解してくれるのかと半信半疑だが今は見守るしかないのだとブレンも騎士になるべく覚悟を胸に学園へと赴くのである。