2.幸枝と弘樹
食堂でランチ。
本日のチョイスは、自分で作るにはちょっと大変なロールキャベツ。
切り込みの入ったそれは、口の中でほろりと崩れ、肉のうま味が優しく広がった。
幸枝の口角がにんまりと上がる。
「何か良いことあったの?」
若干呆れた気味に、皐が言う。
今日は珍しく、皐と一緒にご飯を食べている。
休憩のタイミングが中々あわず、1か月ぶりだった。
「聞きたい?」
ちょっと勿体ぶったように、聞く。
伝えたくてたまらない。
「弘樹とね、」
「やっぱり、辞めとく。」
「何でよー」
「長くなりそうだなと。」
言い終わる前に、ストップが入った。
弘樹と一緒に桜を見たと言う幸せを語りたい。
語りたい。
けど、皐は嫌そうな顔をした。
何故だか皐は弘樹があまり好きではないらしい。
明確に口にはしていないし、同席を拒否するわけでもない。
弘樹が来ると、皐は席を外すことが多い。
初めは気を使ってくれているのかと思ったが、そういう感じでもない。
「幸枝、食べないと昼休み終わるよ。」
時計を見ると、後10分で休憩が終わりそうだった。
止まっていた、フォークを口に運ぶ。
「恋バナしたいのになぁ…」
漏れた言葉は、黙殺された。