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12 眷族

 俺は興奮した。さすが真祖だと思ったのだ。眷族がいる魔物はかなりの大物だと相場は決まっている。


(なんだ。えらく興奮してるじゃないか?)


「そりゃあ興奮しますよ。眷族がいるなんて。ヴァンパイアの眷族ってどんなのですか?」


 俺は訊いてみた。


(ヴァンパイアによって様々だ)


 バベルはこたえた。俺は内心首をひねった。


「ヴァンパイアによって様々……眷族って血を吸われた者じゃないんですか?」


(それは並みのヴァンパイアだ。爵位をもつヴァンパイアや俺たちのような真祖は特別な眷族をもっているのさ)


「すごいですね。上級のヴァンパイアは。きっといっぱい眷族がいるんでしょうね」


(それもヴァンパイアによって様々だ。一体だけの奴もいるし、何十という限界を従えている奴もいる)


「何十も!」


 呆気にとられ、俺は息をひいた。何十もの眷族を従えるヴァンパイアとはどのような者なのだろう。


「バベルさんは真祖なんですから、きっと何十もの眷族を従えていらっしゃるんでしょうね?」


(俺の眷族は百八いる)


「ひゃ、百八!?」


 俺は驚倒した。何十でも凄いのに、百八なんてとんでもない数だ。


(それほど自慢したものでもねえよ。最上級ヴァンパイアに匹敵する力をもつ眷族はたった十二しかいねえから。そいつらは十二使徒とって呼ばれてるぜ)


「十二使徒……。ところで最上級ヴァンパイアって真祖より格下なんですよね。真祖は世界すら滅ぼせる災厄級の怪物だってガガがいってましたが、最上級ヴァンパイアはどのくらいの力をもっているんですか?」


(まあ、一国の軍と同等だろうな)


「ひええええ!」


 俺は悲鳴をあげた。とんでもない怪物の相手をしていると実感したからだ。ガガがびびるのもわかる気がする。


 けれど、ここで一つ疑問がわいた。俺は訊いてみた。


「あの……真祖って七人いるってガガがいってましたけど……それだけ強い真祖が七人もいて、よく人間が滅びませんでしたね」


(まあ、他にも強い奴はいるからな。それにヴァンパイアには人間を滅ぼす気はねえし)


「滅ぼす気はないって……どうしてですか?」


「人間がいなくなったら血が吸えねえだろ。だから、そんなことはしねえんだよ」


「なるほど」


 俺は得心した。人間が生き残っているのは特段ヴァンパイアが慈悲深いというわけではなさそうである。


 納得すると同時に、俺の棟には嫌悪感がにじんできた。ヴァンパイアの本性を悟ったからだ。しょせんヴァンパイアにとって人間は家畜のような存在でしかないのである。


 そうであるなら、ヴァンパイアは敵だ。きっと戦う時が来るだろう。


 その時、俺は勝てるだろうか。大百足を斃したように。


(いつでも相手になってやるぜ)


 楽しそうなバベルの声。俺は震え上がった。


「冗談はやめてくださいよ。そんな無謀なこと、しませんよ」


(いいや、やるね、おまえは。自分のためじゃなく、他人のためならな。馬鹿だから)


「あんまり馬鹿馬鹿いわないでくださいよ。それより眷族さんを寄越してくださいよ」


「もう来てるわ」


 声がした。ひどく淡々とした声だ。


 目だけ動かしてみると、綺麗な女の子が立っていた。


 年の頃なら十四、五といったところか。肩の辺りでそろえた銀髪がさらさらと揺れている。


 肌は透けるほど白い。瞳も唇も真紅に光っていた。


「あ、あの……眷族さんでしょうか?」


 おずおずと俺は訊いた。すると冷たい眼差しのまま、少女はこくりとうなずいた。


「そうよ。わたしはポラー。バベル様に命じられて来た」


「そうですか!」


 俺は胸の高鳴りをおぼえた。美少女眷族が来たからだ。


(おまえ、美少女が好きみたいだな)


 バベルのからかうような声が頭の中で響いた。


「そりゃあ、そうですよ。美少女が嫌いな男なんていないですから。おまけにポラーちゃんはとびっきりの美少女。どきどきしても仕方ありません……」


 よ、という言葉を俺は飲み込んだ。ポラーがじっと俺を睨みすえていたからだ。

 怒っているのか、顔を赤くしている。きっと激怒しているんだ。


 その時になって俺は気づいた。声に出していたことを。


 ポラーちゃんっていっちまった。美少女っていっちまった。絶対やらしい奴って思われてる!


 ごまかすため、俺はあわてていった。


「すみません。馴れ馴れしくポラーちゃんとかいって。あの……」


「わたしは美少女なんかじゃないわ」


 ポラーがぽつりといった。怒ったような声音で。

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