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加護もらっちゃった

擬態する令嬢は王太子妃としてスカウトされる

誤字脱字報告、本当にありがとうございます。

『あら、あの家の嫡男様は最近平民上がりの男爵家の御令嬢にご執心らしいわ』


『あちらのご婦人は愛人とよく賭博場に行かれているらしいわ』


『公共事業の落札の時・・・』


『君を愛している』


『あの人、本当に下手くそ』


『今年は麦のできが・・・』



パティシアはいつも通り壁際で何をするわけでもなく1人寂しく立っていた。

とても近くに全く関係ないパティシア(人間)が居るにも関わらず、誰も気にする事なく自分達の話したい話題で盛り上がっている。パティシアは代わる代わる入れ替わる人間を横目に、聞きたくも無い話を次々と聞いてしまっていた。


パティシアは今日も何度目になるかわからない大きなため息をついた。

夜会に参加すればいつも、色んな情報を聞いてしまう。


やっと人が捌けたタイミングでそろそろ帰ろうかと足を踏み出した瞬間、横からよく知る声に名前を呼ばれた。


「やぁ、パティ。今日も()()()いるね。何か有益な情報はあった?」

「殿下・・・、私に気づいていたなら声をかけてくだされば良かったのに・・・」


嫌味を言われて横を確認すれば、この国でも珍しい藤色の髪の青年がにっこりと笑い立っており、思わずパティシアは眉を顰めた。


「パティの邪魔をするわけにはいかないよ」


パティシアの横に立った青年は手を上げて降参のポーズをとり左右に手首を動かす。切れ長で少し垂れ目のため穏やかな顔のつくりをしているが、群青色の瞳はどこか吸いこまれそうな魅力を持っている。そんな垂れた目尻が余計に下がり、全く悪気は無さそうに見える。それが腹立たしい。


「ただ情報が欲しいだけの癖に」


ボソッと聞こえない様に独り言をつぶやいた。


パティシアに声をかけて来たのは、パティシアの幼馴染でこの国の王太子であるルシードである。この国の王族は結婚してからファミリーネームが付くため、彼はまだルシードというファーストネームだけだ。


「何か言ったかな?」

「いいえ、きっと空耳です」

「ふ~ん。では、パティシア・モレノア公爵令嬢、私とダンスを踊っていただけないでしょうか?」


いつも通りの誘い文句だ。王太子に誘われて断れるわけが無く、パティシアは差し出された手を取りルシードにエスコートされてダンスフロアへと歩いて行く。


パティシアは公爵家の長女であるが、地味で影が薄く存在感がない。親兄妹はそれなりに眉目秀麗なのに、なぜかパティシアだけ母方の祖父の地味な見た目を引き継いだ。兄妹は綺麗な金髪なのに、パティシアはくすんだ金髪・・・どちらかと言うと枯草色に近い。瞳の色だけは兄弟たちと同じでターコイズブルーで唯一誇れる顔の一部である。


本日の夜会にも参加したものの誰からもダンスの誘いの声はかからず、唯一誘ってくれたのは目の前に居る同い年の幼馴染であるルシードだけだ。


「今日の収穫は?」

「例のあの家は違法な植物の根を領地で栽培しているとかいないとか。最近、よく噂になる男爵令嬢のターゲットは侯爵家3の位の嫡男様のようですね」


2人で適度な距離を保ちながらもそれなりに密着してステップを踏む。これも、毎回の事。ルシードの耳元に愛を囁く様に先程聞いた話を話してゆく。


「どれもただの噂話ですよ?」


最後に笑顔で一言添えて、報告は終了だ。


結局、この唯一踊ってくれる相手もただパティシアが耳にした噂話が欲しいだけで、パティシアと踊りたいわけでは無いようだ。


それがわかった時、パティシアは本当に悲しかった。


パティシアもデビューしてからは公爵令嬢のためかそれなりにダンスの申し込みもあったのだ。しかし、ある日を境にその申し込みが減っていき、無くなった。双子の可愛くて可憐な妹達がデビューしたからだ。2人にはダンスの申し込みだけでは無く、婚約の申し込みも数多く来ているらしい。

公爵家と縁を持ちたい者は多い。それならば、地味で目立たない姉よりも華のあり美しい妹達にそれは集中するのが道理らしい。

しかし、こうもダンスを申し込まれないのは流石にパティシアも傷つき、自信を無くしている。家族も慰めてくれるが、きっと容姿に恵まれた他の家族にそんなは経験が無いため、全く慰めにならない。少し捻くれてしまったパティシアには哀れみにさえ感じてしまう。


そんな悲しみに壁際で1人涙を堪えていたパティシアにある不思議な現象が起こり始めた。その現象を境にパティシアの存在は夜会の間、殆ど認知されなくなってしまい増々自分の存在価値などない様な虚しさにおそわれる。


面白い事に壁の花になっている時にはさまざまな話題が耳に入ってくる。凄く近くにいても、誰も気づかない。まるで、本当に透明人間にでもなった気分だ。

しかし、少し動いたり咳き込んだりすれば、パティシアに気づきその場に居た人は何処かへと行ってしまうため全く見えないわけではない。ただ、認識されにくいだけだ。

それに気づきはしたものの、無闇矢鱈に動いてもダンスに誘われる事もなく、惨めになるだけなのでパティシアはいつも壁際が定位置だ。


しかし、1人ひっそりとしていても心の平穏は時に侵略される。パティシアの家族の話はとにかく頻繁にでてくるのだ。特に兄や妹の話題は・・・しかし、パティシアの話題は出ない。

出たとしても


殿下の幼馴染、双子の姉、公爵家の地味な長女など、そんな子も居たな・・・程度である。


それで余計に傷つく。


そんな時に、唯一パティシアに気づき手を差し伸べてくれた人物が居た。それがルシードである。

人が居なくなったころに、そっとやって来て手を差し出して「パティ踊ろう?」と声をかけてくれた。


それが本当に嬉しくて、それが何度か続けば今まで何とも想っていなかったただの幼馴染に特別な感情を抱くのは早かった。


ルシードと踊っている時はドキドキして、色々と話を聞いてくれる。日常の会話から、夜会で聞いた噂話。なんでも嫌がらずに聞いてくれるのが嬉しくて、胸が温かくなる。夜会の最中、人との会話に飢えているパティシアはついついたくさん話してしまうのだ。


しかし、ある違和感に気づく。


その日の夜会でパティシアの近くに居た人物がどんな話をしていたか、毎回自然な流れで聞いてくるのだ。

それに気づけば、パティシアの気持ちは自然にトーンダウンしていった。ルシードは決してパティシアとダンスを踊りたい訳では無かったと察する事が出来たから。


(私が盗み聞きした内容を知りたいだけなのね)


それが分かって気持ちが下がっても、唯一パティシアを見つけてくれるルシードだけが特別なのは変わらない。


(でも、私が彼に選ばれる事はない)


周辺諸国の王女からの縁談の申し入れがあったり、国内でも家格のあった御令嬢は何人かいる。もし、モレノア公爵家であればパティシアで無くても、一つ下に双子が居るのだ。双子とも幼馴染のためそれなりに仲はいい。容姿が劣るパティシアが選ばれる筈は万に一つもないだろう。


もし、妹のどちらかとルシードが隣り合う姿を想像するとお似合いだと思うが、きゅっと胸が締め付けられるように痛む。きっと、そばで見ている事は辛い。


だから、気づいている事をパティシアは言わない。その代わりに


『どれもただの噂話ですよ』


と最後に毎回付け加える。それだけで、ルシードは気づいているだろう。だから、最近は直接的にどんな収穫があったか聞いて来るようになった。


パティシアとルシードはお互いに一礼して、ダンスフロアを離れる。早く、この会場から帰ってゆっくりと湯浴みをして眠ろう。

パティシアはそう考えながら、チラリとルシードを見るとバッチリと目があった。


にっこりと笑われて、パティシアは頬を引き攣らせた。


「私はそろそろ帰ります」

「もう少し、壁の花・・・」

「しません」


結局、求めてられているのは情報だけ。最後まで聞かずに抵抗のように拒否をする。突きつけられた言葉に胸がまた痛む。


「「お姉様」」


背後から小鳥が囀る様に可愛らしい声が重なって聞こえてきた。パティシアとルシードが振り向くと、そこには似た容姿の愛らしい女性が2人手を組み立っていた。金に光る柔らかそうな髪に、大きくくりくりとした瞳はパティシアと同じターコイズブルーだ。


「レミララ、ソファララ・・・」


パティシアの双子の妹だ。


「「殿下、先程はダンスのお相手ありがとうございました」」


2人とも、同じタイミングで同じ言葉を紡ぐ。いつものように同調している。


「こちらこそ、楽しい一時をありがとう」


ルシードも微笑み返す。

パティシアは自分よりも先に妹達と踊っていた事を知りたくは無かった。どうにかしまい込んでいた劣等感がどうしても顔をのぞかせ、パティシアを傷つけるのだ。

ルシードもパティシアよりも可愛く人気のある妹達と先に踊りたいのは普通の事だ。


考えれば考えただけ、今日もマイナスに思考がもって行かれ、心の調子が悪い。


「お姉さま、私達そろそろ帰ろうと思うのですが・・・」

「お姉様も一緒に帰りませんか?」


馬車の往復を考えて探してくれたのだろう。こういう優しい気遣いもできるのだ。もし、パティシアが男であってもきっとこの妹達に好意を寄せるだろう。


「ありがとう。私もそろそろ帰るつもりだったから一緒に帰りましょう」


パティシアはそのままルシードに別れを告げて、妹達と帰っていった。







「お嬢様、今日もお綺麗ですわ!」

「ありがとう」


にっこりと支度をしてくれた専属の侍女にお礼を伝える。しかし、内心はどんなドレスを着てもパティシアにはあまり意味がないのだ。


もう少しで今シーズンも最後を迎える。年齢もそろそろのため、このまま誰からも申込みがなければ、パティシアの婚約は親が取り決めるだろう。そうなれば、少しは心が穏やかに落ち着くだろうか。


パティシアは2台に分かれて家族と共に馬車へ乗り込み、会場へと向かった。馬車の中では妹達が最近流行りのお菓子やファッション、メイクの話で花を咲かせている。そのまま1人でぼーっとしていればいつの間にか到着していた。







『最近は王太子殿下のご活躍で色々な事柄が解決しているそうね』


『この間は葡萄酒の密輸阻止、今回は人攫いに加担していたお家の取潰しでしょ?』


最近、お茶会などの若い女性の集まる場所でよく耳にするのは、王太子であるルシードの話である。様々な事柄で活躍しているようで、話の中心によく上がっている。後ろめたい事がある人物は戦々恐々としているだろうともっぱらの噂だ。

壁の花が板についているパティシアの耳に、今日だけでも何度王太子の単語を聞いた事か。その内容の中には以前噂で聞いた人物や家の名も出てきて、ルシードに利用されているのだろうなと考えてしまう。


そろそろ、夜会も中盤。ここで立っているのも飽きてきたので本日2回目の移動を検討していた時に、微かに聞こえてきた声に耳を傾ける。聞き耳を立てるのに後ろめたさも抵抗も無くなってきている事に自嘲してしまう。


「アイツ、今日遂に試すみたいだぜ。双子のどっちかの飲み物に混ぜて、連れ込むらしい」

「冗談じゃなかったのか?」

「その為に、家格の低い令嬢に飲ませて試していたみたいだ。飲むと意識がもうろうとして最後には深く眠って、ぜんぜん起きないらしい。それで終わればそのまま置いて帰れば、起きても誰が相手か覚えてないし、ばれないらしい」

「下衆だな。これでモレノアの双子、残るは1人だけかぁ。俺じゃ到底無理だろうなぁ・・・」

「モレノアの双子の姉がいるだろ?あの子なら・・・」

「いや、あの子は殿下の・・・」


サーっとパティシアの全身に鳥肌が立ち血の気が引いていくのがわかる。

(この2人は誰の話をしていたの?)


モレノアの双子と言えば、可愛いパティシアの妹達レミララとソファララだ。もしかしたら、どちらかが今怖い思いをしているのかしれないと思うとパティシアは身体が勝手に動いた。


「今の話は本当なのですか?」

「ぇ?」


逃げないように、腕を掴む。はしたない行為だと咎められても、妹達の身の安全の方が優先だ。しかし、今聞いた話が嘘でも本当でも妹達の変な噂が流れ無い様に、声量には気をつけてパティシアはしゃべる。


「先程、妹達の話をしていましたよね?」


2人の男の顔色が一気に青く変わった。その様子を見ていると嘘では無い事がそれとなくわかり、掴んでいる手に力が入り変な汗が出てきた。


「あの、その・・・」


男たちも口をハクハクさせて、焦っている。


「パティ?なんで、その男を触っているの?」


変な緊張感の中、後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。しかし、いつも聞いている声よりも若干声が低く、耳元に響いた。


「殿下」


振り返りルシードの顔を見ると、少しホッとして涙が溢れ出しそうになるのをグッと堪えた。


「どうした?」


パティシアの様子に異変を感じたのか、表情は何処か怒気を含んでいる。パティシアは周りに気をつけつつ、先程聞いた事をルシードに伝えた。パティシアに手を掴まれている男も、掴まれていない男も顔色が青から白へと変わっていった。


「パティ、そろそろ手は離しても大丈夫。どの家の誰かもわかっている、魔法で2人とも動けない様にしているから」


話し終えるとルシードによって手を離され、そのままパティシアの手を握り、2人の男を睨みつけた。


この国の王族や一部の貴族には魔法が使える者がいる。ルシードもその1人だ。ちなみにパティシアにはその力は無く、無くても別段困る事もなかった。今みたいに使えたら便利だな、くらいである。


「で、誰が馬鹿な事をしようとしている?」


視線だけで殺せそうな殺気が2人にだけ向いている。


「あ、あの・・・シュトラス・バンクナハ・・・、です」

「バンクナハ伯の次男、か・・・」


ルシードは考え込む様に、俯く。


「ルゥ?」


黙り込んだルシードを覗き込む。パティシアはついうっかり、以前呼んでいた愛称を口にしてしまっていた。すると、ルシードはにっこりと微笑み、パティシアの頬を指先でなぞった。


「久々だ、その呼び方」


なぞられた部分が心地よく、向けられた笑顔にドキッとしてしまうが今はそれどころでは無い。


「・・・とりあえず、2人の安全を確保しよう。警備している騎士にも声はかけとく。」

「わかりました」


そのままルシードに手を繋がれて、2人は早足で辺りを見回しながら双子を探す。その途中で、見かけた騎士に声をかける。モレノアの双子に用事があるので、見かけたらルシードの控え室に連れてきてほしいと。


暫くして、1人はすぐに見つかり近くに居た騎士に控室に同行する様に託してもう1人を探した。


「あの子曰く、2曲前に他のご令息と踊っていたと。まだ、接触はしてないかもしれませんが・・・」

「もう少し探して見つからなかったら、休憩用の部屋を探そう。それまでには見つけたいところだけど」

「庭の方はどうでしょう?」

「行ってみよう」


そのまま、開放されている庭へと降り立つ。ここでも手は握られたままで、それだけで不安も和らぐ。

庭は今の季節、薔薇が咲き誇っていた。手入れされた薔薇が目線の高さで剪定されていて、甘くて優しい香りが自然と鼻へと届いてくる。

パティはスピードを上げるためにルシードから手を離し、少しスカートを持ち上げた。それで少しだけ、歩く速度が速くなる。


棘を気にする事なく歩いて行くと、急にルシードが立ち止まり口の前で人差し指だけを立てて、静かにしろとポーズで知らせてきた。

それなりに身長のあるルシードが前に居て、目の高さまである薔薇の生垣で何があるのかパティシアからは見えない。


ルシードが腕を差し出してきたので、その腕を取り歩きだす。なるべく足音を立てる事なく、気配を消してゆっくりと進んでいく。

ルシードと並んだ事でパティシアの視界が一気に開けた。庭の中央部分なのか少し広めのスペースにはベンチやテーブルが置かれており、夜風にあたり涼みに来た人物たちがちらほらと見える。月明かりの微かな光とガス灯による灯のため、顔ははっきりと確認できず2人はゆっくりと歩きながら近づき人々の中に探している人物が居ないか確認していく。


その中で顔ははっきりと確認できてはいないが、着ているドレスのデザインに見覚えがある人物がいた。


無言のままパティシアは視線でルシードを誘導し、ゆっくりと近づいて行く。やっと顔が確認できる距離まで来て、妹の楽しそうな笑顔を見て安堵したのも一瞬。隣に座る男性からグラスを受け取ろうとしているのが目に入った。


ルシードに触れている手にぎゅっと力がこもる。すると、それが合図だった様に2人の歩く速度は自然と速くなり、妹がそのグラス口をつける前に間に合った。


「探したわ」

「お姉様?殿下?」


ルシードは妹の持っていたグラスを自然な感じで取り上げる。


「申し訳ない、バンクナハ。彼女に用事がある、連れて行くよ」


ルシードが名前を呼んだ事で、妹の隣に座っている男がシュトラス・バンクナハである事は確かなようだ。精悍な顔立ちで、御令嬢から人気がありそうな事が伺える。


「ごめんなさい。ちょっと話があるの」


パティシアは微笑みながら男を見下ろし、妹を立ち上がらせる。急に登場した事で驚いたのか、座ったままのシュトラスはポカンとしたまま反応が無い。取り敢えず挨拶だけして、そのまま急いでその場から離れた。







「無事で良かったわ!」

「「お姉様?」」


ルシードに用意されていた控室で妹2人をパティシアは抱きしめた。ホッとすると本当に涙が出てきた。


「どうしたの?お話ってなにかしら?」


急に泣き出した姉の頭をヨシヨシしながら、急にここに連れて来られた理由を2人は聞きたがった。しばらくして泣き止み落ち着きを取り戻したパティシアは今後、同じ様な事があるかもしれないため、注意喚起の意味も含めて事の成り行きを説明した。

説明し終われば、2人とも自分の身に起こったかもしれない事に急に不安になり、お互いに手を握りあいパティシアは再び2人を抱きしめた。


全員が落ち着きを取り戻した頃、ルシードから話があると言われてパティシアはその場に1人残り、妹2人は両親へと連絡して帰って行った。


「殿下、今日は一緒に探していただいてありがとうございました」


きちんと頭を下げて、改めてお礼を伝える。ルシードは物悲しそうな顔でパディシアを見つめてきた。


「先程みたいには呼んでくれないの?」


お互いがデビューするまではルシードの事はルゥと愛称で呼んでいた。しかし、立太子以降はパティシアも弁えて、呼び方を改めた。


「また、ルゥって呼んで欲しい、な」

「でも・・・」

「パティに殿下って呼ばれるのは寂しいよ。あとね!パティのお陰で私の実績も色々増えたし、そろそろ婚約したいんだ」


褒められた後に、そこから背中を押されて崖から落ちる気分だ。お好きにどうぞ、とパティシアは嫌味でも言ってやりたいが、衝撃のあまり言葉が出てこない。


「父上にはきちんと話しているし、将来の僕の妃になってくれないかな?」


いつも飄々としていて掴みどころのない目の前の男が今、身体をモジモジさせて少し照れたように両手の人差し指をちょんちょんとくっ付けて離してを繰り返し、チラチラとパティシアを伺い見てくる。

先ほど以上の衝撃にパティシアは思わず目を見開く。


(彼はなんと言ったのかしら?)


固まっているパティシアの目の前に手を振る。


「あれ?おーい?」

「――――な・・・なぜ、私なのですか?」



暫くしてやっと出て来た言葉。


「わからない?」


パティシアは少し考える。


「私の協力が欲しいのですか?」


パティシアは考えた結果、利用し続けるために結婚を持ち出してきたと結論づけた。ルシードと結婚しても愛してはもらえないと思うと胸が痛む。好きな人からの婚約の申し込みだと言うのに、まったくうれしくない。


「違うよ。パティシアが好きだからだよ」


ルシードに今までそんな事を言われた事は無かったし、そんな態度を取られた事もない。唯一有るとすれば、誰からも誘われないパティシアをダンスに誘ってくれる、優しい気遣いだけだ。きっと、ルシードの言う好きは愛でなく情だ。


「あー、その目は疑ってるな」


ルシードは少し考えると、パティシアを見て微笑む。


「なら、信じてもらえないなら賭けをしよう。次、参加する夜会で私が3回パティを見つけたら結婚してください」

「え?」

「パティはいつも通り好きな所に居てくれたらいいよ。私が見つけたら、踊って。それを3回繰り返す。私はね、パティを見つけるのは得意なんだ。いつも見ているからね」


とても自信があるのかルシードはどんどん話を進めていき、パティシアが口を挟む隙がない。


「そこで、3回パティを見つけてダンスを踊れたら周知されるし、シーズン最後の国王主催の舞踏会で婚約発表もしちゃおうね~」


群青色の瞳を子供の様にキラキラ輝かせて、嬉しそうに話す。


「次の夜会が楽しみだな。勿論、賭けに乗るよね?」


このよくわからない賭けに乗れば、好きな人と結婚できるかもしれない。愛される事は無いかもしれないが、大切にはしてくれるだろう。愛していない他の人と結婚して、冷めた結婚生活を送るよりいいのかもしれない。

ルシードの隣に他の女性が居るのを見るより・・・手駒でも、それなりに大切にされて隣にいる方が幸せでは無いのか?


ルシードに、もし心から想う相手ができてもパティシアを気遣って、気づかれない様に振る舞ってくれるだろう。


パティシアは少しの欲と、打算で結論を出した。


「わかりました。その賭けに乗ります」







++++++++++






その日の夜会は思っていたより早くやってきた。

いつも通り変わらない夜会の光景の中、パティシアは不安と緊張でいつもと違う居心地の悪さを感じていた。いつもは飲まないアルコールにもつい手を伸ばしてしまった。


ほんの少し前、会場が騒めき令嬢たちが移動し始めた事で、ルシードが到着した事は分かっている。


(・・・3回)


見つけて欲しい期待、見つけてもらえなかった時の落胆、王太子の婚約者になるかもしれない不安、色々な感情が具現化していつも通りパティシアはその場所に馴染んでいく。

でも、一番割合の大きい気持ちはルシードに会いたいという気持ちだ。


「パティ、見つけた」


嬉しそうな笑顔で、手を差し出される。


1回目。


パティシアは手を差し出す。安堵感からか緊張なのか、手は微かに震えていた。

そのままダンスをするために、移動すれば先ほどまでアイボリーだったドレスの色がみるみるとルシードの瞳と同じ色・・・群青色へと変化する。


「いつ見ても、パティの能力は見事だね」


今日着ているドレスは、ルシードが用意してくれた群青色の落ち着いたデザインのドレスだった。しかし、このドレスは先ほどまではアイボリーでどこか目立ちにくい色をしていたのだ。

このドレス自体に仕掛けがあるわけではない。


パティシアは踊りながら、ルシードがいつも以上に密着している事に気づいた。


「あと、2回。僕の愛しい姫は上手に隠れられるかな?敷地内にはいてね」


曲が終わり、そのままパティシアはフロアから廊下へと移動する。出入口へと向かいエントランスの邪魔にならない場所にある柱へと身を寄せる。来た時に目星をつけていた場所だ。


パティシアが動かないでいるとドレスが少しずつ、柱の色と同じ消し炭色へと変化していった。


とても不思議な現象だ。


この不思議な現象は今着ているドレスでなくとも起こり、どんな綺麗で明るい色のドレスを着ていてもパティシアが動かないでいると、色がたちまち変わって背景の色と同化してしまう。この現象のせいで、ほぼ誘われていなかったダンスへの誘いが全くと言って良いほど無くなった。パティシアは気づかれにくかったのが、どんどん気づかれなくなっていった。

ただ、そのおかげで今ルシードと結婚できるかもしれないチャンスがあるわけだから、なんとも複雑だ。


この現象に気づいているのはルシードだけで、不思議な事に他の人は気づいていない。しかし、なぜルシードだけが気づいているのかも疑問である。人に話して気味悪がられる事を恐れ、誰にも・・・親にすらパティシアは話してはいなかった。


パティシアはドキドキしながら、ルシードを待つ。


「案外、わかりやすいところに居たね。庭園だと暗いから流石に見つけにくかったけどここなら簡単だ」


柱側から顔を出して、声をかけられた。思ったよりも待ち続ける事は無かった。


2回目。


再びエスコートされてダンスフロアへと舞い戻る。流石に連続ではないが王太子であるルシードが2曲同じ人物と踊っているのだ。気づいた人物はざわざわし始めた。だが、パティシアの存在自体が薄いためか、まだそこまでの騒ぎにはなっていない。2曲までなら仲のいい友人や幼馴染と踊る事もそう可笑しくはない。だが、ルシードは今まで2曲同じ人物と踊る事が無かったため、ルシードを慕っている令嬢たちは色めきたった。

そして3曲目、これは親密を現す。婚約か結婚している事を示す事になる。


「そういえば、バンクナハの次男は流石に懲罰対象となったよ。探せば被害者もそれなりに居たからね。ただ、どのご令嬢も醜態を表立っては露見したくないから、違法薬物の所持での懲罰になるけどね。調べたらあのグラスにもちゃんと薬が入っていたから、言い逃れもできないし」

「あの噂のお薬ですか?」

「ふふ。まぁ、本人はどんなものかそこまで深く考えてなかったみたい」


ルシードが取り上げた、あのグラスはきちんと調査され証拠品となっていた。それを見越して、あのグラスを持ち帰ったところも抜け目がない。


「ねぇ、パティ・・・あと1回・・・私が見つければ、パティは私の物だね。楽しみだなぁ。どこに居てもちゃんと見つけるから、うまく隠れてね?」


どこかルシードの言葉には難しいところに隠れたパティシアを見つけたいという願望が含まれているように聞こえた。


パティシアが最後に選んだ場所は、カーテンの裏の隙間だ。人目をそれなりに気にして入り込み、身を縮め完全に隠れた。ドレスの色もカーテンと同じく橙色へと変化する。時々顔は覗かせてみるが、人が近くを通るだけで素通りするような場所だ。


刻一刻と人も減りつつある。ドキドキと心臓の音がうるさくて、パティシアはいろんな意味で怖くて仕方がない。


そろそろお開きの時間が近づいてきている、もう無理かなと思ったところで少しだけ顔を出してみると、遠目にルシードがご令嬢達に囲まれているところが目に入った。パティシアを見つけるより、ご令嬢の相手をする方が忙しそうだ。

パティシアはカーテンの後ろで、しゃがみ込む。


「賭けなんか乗らなきゃよかったのかな・・・」


見つけてくれる期待と見つけてもえらえなかった時の言い訳に、この場所で身を隠した。でも、こんなところから1人で出ていくのは誰かに見られていなくても恥ずかしい。



「―――――今回は流石に難しかったよ」


カーテン越しに頭上から声が降って来た。そっと顔を上げれば、ルシードが笑顔でカーテンを捲ってくれていて、ルシードの後ろに先ほどのご令嬢たちは居ない。


「しゃがんでくれて良かったよ。この場所が少しこんもりしていたから気づけた。危ない、危ない。ご令嬢たちのダンスの誘いをお断りするのもひと手間だった。さぁ、パティ約束だ」


そっと手を差し出され、パティシアはその手を取り立ち上がる。


「きちんと送っていくと公爵には伝えているから、3回目のダンスを楽しもうか」


ゆったりしたペースで歩いていく。ドレスもいつの間にか元の色に戻り落ち着きを取り戻している。先ほどまでとは違い、周りの視線が痛いほど向いているのがわかる。


「パティ、顔を上げて。僕たち、見られているよ?」


視線を避けるため、俯き気味になっていたパティシアにルシードは声をかける。もう少し早く歩いて欲しいが、視線を集めるためにゆっくりと歩いているように感じた。


立ち止まりホールド姿勢を取る。リズムを取るために演奏に耳を傾けるが、どよめきがひどく、上手くリズムを刻めない。

ルシードはそのどよめきに満足そうに口角を上げ、足を踏み出した。パティシアも併せてステップを踏む。


「パティ・・・カーテンの後ろは難しすぎるよ。ドレスの色も完全に一緒で、パティの可愛い顔も出ていないんだもん。でも、これで賭けは私の勝ちだ・・・結婚。してくれる?」

「・・・はい、見つけてくれてありがとうございます」

「愛するパティと結婚するためだしね。これでも、必死だったよ?」


本当にルシードは有言実行でパティシアを見つけてくれた。賭けには負けたが心は喜んでいる。


「私はね、パティがデビューしてからずーっと見ていたよ?毎回可愛いパティが僕以外の目に留まらなければいいのに・・・誰にも見せたくないなぁって・・・願ってた。毎回、毎回パティと踊っている男を見ていたら、少しずつパティと踊る相手は減っていったな・・・。不思議だよね?」

「え??」


ルシードの薄い唇から発せられる、少し重めの気持ちにパティシアは驚いた。


「でも、それで、パティは傷ついていたよね・・・。それはごめんね?」


全く悪いと思っていなさそうな表情で謝罪を述べる。


「パティは夜会中、この場から消えたいと思った事は無い?」


ルシードは突拍子も無い事を聞いて来た。

しかし、パティシアには心当たりがある。その場に居るのに、居ないも同然・・・ならいっそ見えなくなれば、こんな気持ちにならないのに・・・と、何度も考えていた。


「ある・・・わ」

「やっぱり!それで、パティの周りにいる精霊がパティの「見えなくなりたい」って気持ちと私の「見せたくない」って気持ちに呼応して、パティに変わった加護を授けたんだよ。それが、ドレスが変化する原因だ!最初見た時は驚いたなぁ。なんでだろう・・・って」

「精霊?」


初耳である。精霊が存在するのは知っているが、パティシアには見えない。だが、そう言われるとドレスの色が変化するのは納得もできる。


「私もはっきり見えているわけじゃないよ。魔法が使える関係で、きらきらと輝いて見える。幼い頃からパティの周りだけキラキラして・・・だから、幼い頃はこの子(パティ)が特別な私だけの女の子だと思っていた。勿論、今はあの頃以上に私の特別だけどね」


ルシードから説明される情報の内容にパティシアは頭がパンクしそうになりながらも、ルシードにとって随分と昔から特別だったと言われて、顔に熱が集まり赤く染まる。

それでも、身についているダンスのステップは間違わないのだから、そこは褒めて欲しい。


「でも、なんで加護だとわかるの?はっきりとは見えないのでしょ?」

「う~ん・・・なんとなく?陛下とか、魔力の多い人間にはもっとはっきりと見えているみたいだけど・・。あとはドレスに魔法の痕跡も無いし、ドレスの変化が起き始めてからキラキラの量が増えたからね。今も凄く綺麗にキラキラしていて、パティに魔法がかかっているみたい。もしかしたら、私たちの事も祝福してくれているかもね」


ルシードはパティシアを見下ろして、うっとりとしながら囁く。


「もしかして酔っているの?」

「まさか!パティを見つけるために、一滴も口にしていないよ」


酔って呆けているのかと思えば、そうでは無いらしい。


「パティの周りに精霊が居るって事は、パティを守りたがっているのだろうし・・・、そこにパティに好意を寄せている私の想いと、パティ自身の気持ちの相乗効果で加護発動☆みたいな、ね。これって、ある意味私たちの愛の結晶だと思わない?」


ルシードの言っている事が本当なのかパティシアにはわからないが、もしそれがルシードの勘違いであってもここまでポジティブに考えられるのは羨ましい。


「それに、私は小さい頃からずーっとパティを見ていたからね。見つけられたよ。どんなに上手に隠れていても、見つける自信はあった。ただ、カーテンの裏は難しかったな~。精霊(キラキラ)も隠れていて見えなかったし」


ルシードのその言葉がパティシアの劣等感を少しずつ溶かしていく。


「ルゥ・・・、ありがとう。大好き」


ルシードはパティシアの言葉に瞬く。そして、表情を和らげて


「―――私もパティを愛してる」


パティシアにとっては夢の様なダンスの時間であった。でもその夢の様な時間は婚約しても、結婚しても覚める事は無く、長く長く続いていく。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




物心ついたころからパティシアの周りにだけキラキラとし煌めいて見えて、この子が僕の特別な女の子・・・お姫様なのだと、ルシードは想っていた。しかし、少し歳をとればそれが精霊である事が父である国王陛下から教えてもらった。

自分だけそう見えていたわけではない事にショックを受けたが、パティシアが特別である事には変わりなかった。


デビュー以降、パティシアが他の男と一緒にダンスを踊る姿を見るのがとても苦痛であった。ずーっと見ていれば、男の方はその視線に気づき次回以降はパティシアをダンスに誘う事は無い。視線による圧力と王太子と言う地位による忖度。パティシアは視線に気づく事も無く、一人で落ち込む。そこへ、タイミングを見てルシードがダンスを誘いに行けば、パティシアは本当に嬉しそうに笑うのだ。その笑顔が可愛くて、愛しくて仕方ない。


「誰にも見せたくないなぁ」


日に日に募る想い。パティシアはそれとは反比例するように日に日に自信を無くしていった。パティシアには悪いが、ルシードにとっては変な虫が寄り付かなくて、今の状況は好都合だ。

ドレスの色が変化し始めたのはそんな時だ。最初は誰かがパティシアに魔法をかけたのだと頭に血が上ったが、全くその痕跡は無かった。

前回と違うドレスでも同じ現象は起こる。ここ最近少し変わった事と言えば精霊(キラキラ)が増えたくらいであった。


「―――もしかして加護?」


加護にも本人の意思とは関係なく授けられた先天的なものと、本人やその周囲の強い望みにより授けられた後天的なものがある。今回の場合は完全なる後天的なものではあるが、きっとパティシアだけの望みでは無く、ルシードの願いも反映されているのではないかと思う。そう思えば、周りに言いふらしたいくらい、気分がいい。


それからもルシードだけがダンスに誘い、何気ない会話も増えていくとパティシアが意図せず耳にする他人の会話の中に、とても面白くて有意義な話もある事がわかった。


もしかしたら危ない内容の会話をうっかり聞いてしまい、パティシアの身が危うくなる可能性も無くはない。パティシアの安全確保と言う名目のちょっとした独占欲で、ルシードはドレスが擬態している時は、認識阻害の魔法をそっとかけて見守った。


掘り出し物の会話も多くあった。その噂を元に、危険分子の炙り出しや不正をしている人物の洗い出しと驚くほどスムーズに事が運んでいく。


何よりも大きかったのが違法な植物の栽培と薬の生成・売買に関わった人物、家、組織の捕縛だ。少しずつパティシアが情報を集めてくれて、最終的にバンクナハの次男がバカな事をしてくれたため直ぐに陛下へ報告。そのまま王直下の騎士による調査が行われ、迅速な行動によりあっけなく終結した。


それからルシードはパティシアとの結婚のため、今まで以上にスピーディーかつ積極的に段取りを進めていった。パティシアの功績もあり、2人の結婚に反対する者もいなかった。―実は反対した者もいたが、面白い噂のおかげで反対できない様に丸め込んだのが事実である―。


「パティの能力は今後も生かせそうだけど、危ない目にあう可能性も0ではないから、今後情報収集は禁止だよ」

「別に、収集していませんけど?勝手に近くで会話されて、意図せず聞いてしまうだけです」


想いを伝え、今まで以上に拗らせ過保護になったルシードは賭けの夜会以降、情報収集は禁止している。

しかし、元来の存在感の薄さは早々変わるものでは無いためか、偶然とてもありがたい情報を聞いてしまうというラッキーとパティシアが遭遇する事はあまり減らなかった。


「もう、ここまでパティが優秀だと、プロポーズしたんじゃなくてスカウトした気分」


ルシードはどこか面白く無さげにむくれていた。そんなルシードをパティシアは膝枕でよしよししてくれる。


「ルゥの隣に居れるならスカウトでもいいわ。そろそろ参りましょう・・・皆さん待っているわ」


ここ最近はルシードの気持ちが伝わったのか、パティシアも素直で少しだけ甘く、昔の様に愛称で呼んでくれるようになり関係も一歩進んだように感じる。


「あぁ~パティを見せたいけど、見せたくないなぁ」


ルシードは起き上がり、立つとそっと手を出してパティシアが立ち上がるのをサポートする。


「よくわからないわ」

「男心は複雑なのですよ」




2人は寄り添い広間へと歩いていく。




さぁ、これから婚約発表だ。




広場の扉が開き、参加者が一斉に2人に注目する。




「視線が集まるのって、それはそれで怖いのね」

「これからは慣れなきゃ」




この日以降、パティシアは王太子の婚約者として王太子妃として王妃として、ルシードの隣に立てば視線を集め、注目される人物へと変わっていった。


しかし、ドレスが擬態する加護は健在のままだ。


パティシアは今まで気づかれない事の方が多かったため、視線を集める事が少しストレスとなっていた。そのストレスに、今までの方が過ごしやすかったと言う、なんとも贅沢な思いとルシードの人に見せたくない欲求と認識阻害(パティシアには秘密だよ)により、妖精は加護を授けたままにしてくれた。

それが、今後も様々な副産物を呼び寄せてくれる事となっていく。



END


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― 新着の感想 ―
[一言] ドレスだけ同化ってところに、思わずハ〇ポタの透明マントから顔だけ出てるシーンを思い出しました(笑) あと殿下、半分以上あなたのせいでパティは傷付いてたんだから独占したいならもっと愛情表現して…
[一言] か、カメレオン令嬢!(笑) 擬態&意識阻害…最強コンボ! ルシードご満悦(笑) とても面白かったです〜。
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