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デビル・ミーツ・ブルーハート ~ 悪魔の第二ボタン ~  作者: Otaku_Lowlife
第四話 クソガキ大乱闘
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「デスゲームだってよ。」

 時刻は十一時。

根負けした俺は、渋々アルと共に家を出た。

そうして家を出るとき、リビングにいた母さんに声を掛けるのだが――


「まさこー! ちょっくら行ってくるわー!」


オラのおっかぁを呼び捨てにするんでねぇ。


「あらアル君、またサッカー? もうすぐお昼御飯だけど。」


「おぅ! 帰ってきたら食うわッ!」


「そう、気を付けてね。いってらっしゃい。」


「行ってきまーすッ!」


「……。」


 …馴染んでいる、マイハウスに。

なぜ? なんで? ホワイ?――

それもまた話すとイッツ・ソー・ロングなんだが、まぁ話さないわけにもいくまい……。

…とはいえ、やはり話すと長くなることには変わりないのでザックリ纏めさせて頂くとしよう。

遡ること、再び四月六日の夜――




***




「なぁ、母さん、このガキが暫く泊めてくれって、その……言ってんだけど……。」


「泊めてくれって……その子を?」


 マイハウス灰崎家、我が家に突然上がり込んだ小汚いクソガキ。

マイ・マザーまさ子灰崎は当然ベリーアングリー――とまではいかないにしても、普通に大反対されるだろう。


「そう、別にいいんじゃない?」


 「……は? ホワッツ? そ、そんだけ?」


「ん?」


「ん? って……。」


 だが、マイ・マザーまさ子は違った。

平然とアルの存在を受け入れていた。

まぁそーゆー訳で(どーゆー訳だよ)流石に耳を疑ったが……まじでそんだけだった。

どうやらアルは俺の母さんを洗脳したらしい。

そう…母さんは、アルが我が家に居るのが当たり前だと思い込まされているのだ。

そんなバカなって? いやだって、馬鹿もなにも、コイツ悪魔だし……。

それ以外考えられないだろ、この場合。




 まぁそんな訳で(だからどんな訳だ)、今はアルと共にサッカーをしに出掛けたところ。

因みに向かっているのは家の近所の飽馬町第六公園じゃない。

飽馬橋を渡った先、そして土手を川の方へ降りたところにある広場だ。


「おッ? みんな来てやがんなぁ〜ッ! お〜いぃッ!」


「あっ! アルだっ! お〜いっ!」


 土手の広場にまとまって座るチビっ子達を見つけたアルが橋の上から大声で手を振ると、それに気付いた彼らが大きく手を振り返すのが見えた。


 どうやら彼らは集まってゲームをしていたらしい。

恐らく最近流行りの「それ行け妖怪の森〜ゴーゴージェノサイド〜」――通称「ゴージェノ」だろう。

最近の子供は外で集まってもわざわざ携帯ゲームをするのだから、なんだかもう世も末って感じだ。

つってもまぁ、子供の遊び場ってのは年々減ってるし、ボール遊びを禁止するところも多い。

こうなるのも解らんでもないが――そんな事を考えながら、はしゃいで駆けていくアルを追って土手の斜面を降りた。

さっそくアルの周りにガキ溜まりが出来ている。


「ようお前ら! サッカーしようぜ!」


「えー? またサッカー? アルも一緒にゴージェノで妖怪どもを虐殺しようよ〜?」


「やだよ俺その小せぇマシーン持ってないもん!!」


「えー? もうしょうがないなぁ……。」


 マシーンって、お前なぁ……。

いつものことなのか、笑顔のアルがサッカーボールを頭上に掲げて呼び掛けると、その子達はブーブーと不満の声を上げ始めた。


 ところでコイツ、周りの子たちにはどう思われているのだろうか。

普通ならこの子らと同じ小学校に通っているだろうし、このご時世にゲーム機の一つも持っていないとくれば、子供達のみならず、その親の代まで巻き込んで、あらぬ噂が立っていてもおかしくはない。


「でもこの人数じゃ出来なくね?」


 確かに、もっともだ。

そもそもここには、アルを入れて7人しかいない。

それにサッカーやるにはまずボールを蹴り入れる為のゴールがいる。

何故ここまでサッカーに拘るんだコイツ。


「安心しろ、そのために助っ人を連れてきた。」


ふいにそう言って、アルは得意げに俺の事を指さしてき――


「…って、え、…俺?」


 え、やだ。

小学生と混ざってサッカーとか……何それ……俺馬鹿みたいじゃん。


「ちょっと待てよアル。

 助っ人って、もしかしてゲボくんの事か?」


 ん? ゲボくん? なんだそれは。俺のことか?

恐らくリーダー格と思われるクソガキNo.01――タンクトップ昭和マルコメ小僧が睨んできやがった。

まさかアルの野郎……俺が下僕だと云うことをこのクソガキ共に触れ回ってやがるのか……。


「ゲボくんはダメ。ソイツ入れたら絶対そのチーム負けるもん。」


 マルコメに続いて、クソガキNo.02――鼻垂れチビデブタンクトップモンチッチが後頭部で手を組みながらしかめっ面を背けた。

ここで全国のお父さんお母さんにしつもーん。 

ねぇねぇ、最近のガキ共ってみんなこんなに偉そうなの?

そろそろ俺キレそうなんだけどー。


「俺もやだよ、ゲボくん弱そう。」


クソガキNo.03――ガリクソタンクトップチビ。


「俺もヤダー。だいたいさぁ、高校生のくせに恥ずかしくねぇのかよ。」


クソガキNo.04――近未来タンクトップムーミンデブ。


そしてそれに続いて他のタンクトップ共も異議を唱え始め――


「あ? んだとコラ? 埋めるぞこのモブザル共が……。」 

 

ついに俺の堪忍袋の雄がブチんと切れた。


「…よし、俺やるわ。一対六でいいぞ。

 アル、お前はそこで見とけ。」


「へへっ! 端からそのつもりよぉ!」


 して、「端からそのつもり」とはどういうつもりなのかが気にはなったが、今はそれどころではない。

そう、乗りかかった船へ、ついにその燃え盛る賽が投げられたのだ。

俺はもうとっくに燃え尽かったと思っていたが、久々に魂がメラメラと燃え上がるのを感じている。

ふっ、あの頃に戻ったようだぜ……。

さぁ、始めようか、デスゲームを――


「掛かってこいやオラァッ!!!」

「なぁ、お前ら悪魔から見て人間ていうのは、やっぱり愚かなのか?」


「うんん?? まぁ……そもそも私らからしたら、生きるもの全て、愚かなものなんだけど……。」


「……。お前と話してると、なんかやべぇ宗教の勧誘に掴まった気分になるな。」


「はっはっは、彼らも愚かだねぇ。まぁレベルで言えばハヤト君もそんなに変わらないんだけど。」


「どういう意味だ。事と次第によっちゃ追い出すぞ。」


「おー怖いっ。」


「ち……。馬鹿にしやがって……。」


「ふふ、悪魔だからねっ?」


「あぁもう……。」

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