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デビル・ミーツ・ブルーハート ~ 悪魔の第二ボタン ~  作者: Otaku_Lowlife
第一話 灰崎 昭
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「悪魔降臨だってよ」

小説って、自分の価値観がアップロードされ続ける限り、終わりが無いんです。

だから、もう人生終わりだなって思ったタイミングでガーっと書くのが大事な気がします。

挿絵(By みてみん)






 ”悪魔”とはなにか。

 その問題を、常に私自身に問い続ける必要があった。

 

 それは、天使の対として存在するありふれた”概念”のことだ。

 悪魔は私たちにとって、偽りのパーソナリティであり、妄想的なコンセプトであり、表面的なテーマのようなものだ。


 天使が光だとするのならば、悪魔は闇。天使が陽だとするのならば、悪魔は陰。善と悪。ポジティブとネガティブ、天国と地獄、真実と疑惑。生と死。正常と異常。YESかNO。


 とても身近に存在しているこれらの危険な概念を、あろうことか私たちは日々、無意識に軽んじて生きている。天使と悪魔の入り乱れる混沌とした人間社会のルールの上で生きる私たちの魂には、常に天使と悪魔が介在していることを、私たちは正しく理解出来ていないようだ。

 そして悪魔には神の裁きが下ることを、私たちは神話の中だけの出来事だと思い込んでしまう。神は一人の人間の魂に一人ずつ、平等に存在しているというのに。

 こんなにも簡単な話だからこそ、私たちは誰も解りたがらない。無意識に悪魔でいることを望んでしまうことこそが、人間の咎なのかもしれない。







 ”神”ってなんだ――なんて馬鹿げた問い、たいていの奴は中学生の頃には考えなくなる。


 神なんて作りものの幻想、この世に存在するはずがない、怪しい本の中だけの存在。それは俺らくらいの歳のほとんどの奴らが理解している共通の認識で、オバケとかサンタクロースみたいなおとぎ話と同じ。

 だけど人間は辛い時、愚かにもそんな幻想に自分の理想を重ねてしまう時がある。宗教とかって、きっと心の弱い人たちが騙されるんだろうなって、俺は落ち込んだ母さんを見て思ったことがある。


 現実逃避――たかが高校生の俺でさえ、嫌な事を考えてたまに死にたくなるんだ。生きてりゃ誰だって、目を背けたくなることの一つや二つ、隠し事の一つや二つ、あって当たり前なんだって思う。

 だけど俺は、神様なんて、信じたくもない。


 もしそんなもん本当にいるっていうなら、アイツが翔を見殺しにしたことを、俺と母さんを見放したことを、俺は絶対に許せないよ。







 S県、飽馬あくま市、飽馬あくま町。

 俺が住んでる飽馬町は、関東でも随一の”飽馬あくま川桜堤がわさくらづつみ”を誇る花見スポットで有名だ。つっても桜の事を知ってるのなんて、花見好きな近隣住民や物好きな写真家くらいなもんで、それ以外には何の特徴も色も無い、よくある中途半端に発展した灰色の田舎町だ。


 先月、桜の木がようやく花を付け始めた頃、遂に先輩たちが卒業。貴重な春休みはあっという間に過ぎ去り、俺はこの四月から意味もなく”高二”になった。


「起きるか……始業式めんどうくせえなあ」


 時刻は七時半を回ったころ、最初にケータイのアラームが鳴ったのはかれこれ三十分前だ。二度寝三度寝を繰り返す時に限って、時間の流れが10000倍くらい早くなる理由、それは永遠の謎。最初の目覚ましが鳴った時、よくよく考えたらその時間に起きる意味がないことを思い出して、こんな早くに目覚ましをセットしやがった昨日のお気楽な自分が憎くなる。夜更かししてゲームをしてたもんだから、目覚めも余計に最悪だ。


「ふあ、ダルねみぃ……」


 幾つになっても俺は夜型。寝起きはいつも頭が重くてふらふらする。目をこする度に視界は余計に霞むし、無制限に脳から自動で垂れ流されるあくび信号に、朝からやる気のゼロ地点。こんな調子で将来的に社会でやっていけるのか、いや無理だろって感じの毎日に、また気の抜けた炭酸みたいなあくびが出やがった。


 俺の部屋は二階。階段を降りてすぐ、玄関に母さんの後ろ姿を見つけた。白のスーツ姿で忙しなくヒールを履いている様子から、今日も漏れなく朝から晩まで仕事仕事仕事。よく飽きもせずに毎日働けるもんだと俺は呆れ半分にため息交じりの大きなあくびをまたひとつ、母さんとは真逆の自堕落な朝を迎えている。


「おはよう」


「おはよ。母さんもう行くから、アンタ朝ごはんちゃんと食べてきなさいよ」


「うーす」


 朝ごはんを食べるのもまあまあ面倒くさい今日この頃。


「あ、アキラ。また今日遅くなると思うから、悪いけど夕飯もカレーの残り食べてね。それじゃ、戸締りよろしく」


「行ってらっしゃい、気を付けてね」


「はーい、行ってきまーす」


 快活にヒールを鳴らし軽やかにドアノブを引いて、濁った雲が立ち込める世界へ躍り出た母さんの背中に、俺はテキトーに手を振った。


「あーあ、早く夏休みこねえかなあ」


 戸が閉まり、急に鎮まりかえった我が家でポツリと呟く独り言は、思ったよりも虚しいのだけど、それももう慣れた。







 家の戸を施錠して、今日も俺は「行ってきます」も言わずに家を後にする。家を離れる時、明かりが消えて陰気に静まり返った我が家が、無言で立ち去る俺のことを責めているみたいでちょっと嫌だ。


 我が家には父親がいない。俺が物心つく頃にはいなかった。死んだとかじゃなく、離婚したらしい。俺には兄弟がいた、弟が。過去形なのはつまり、交通事故で結構前に亡くなってるからなわけで。

 だからこの家で暮らしているのは、俺と母さんだけ。そして、毎朝「行ってらっしゃい」を言うのは俺の役目で、家の戸締りをするのも俺の役目。母さんは俺が起きてくる頃に出掛けて、夕飯時に帰ってくる。だから「おかえりなさい」を言うのも俺の役目。俺が「いってきます」とか「ただいま」を言って、誰かか「いってらっしゃい」「おかえり」を言ってくれた頃っていうのは、もう随分と昔の話になる。


 学校までは歩いて十五分、毎日のこととなると絶妙にダルい距離。高校は家から近い所にしたから、他の皆よりかは通学も楽だけど。

 左手に見事な満開の桜堤が見える住宅街を、今日も突き当りまで進む。正面に小さな公園のあるこの突き当りを右に曲がれば、ものの数分で校門が見えてくる。仮に眠りながら歩いてたってたどり着ける自信がある。もはや細胞単位で刻まれたルート、永遠のように長く退屈な十五分だ。


 四月の頭、季節の変わり目、冴えない曇り空の下、気だるさにあくび一つ。今日も黙々淡々ダラダラと、夢も希望も目的もないこの不毛な日々は過ぎていくのだろう――濁る空を仰ぎつつ、虚ろな思考回路のまま突き当りを曲がろうとしたその時だった。 


「ぷわぎゃーっッス!」


「お」 


 俺は小学生くらいの少年にぶつかった。


「おい、大丈夫か? ちゃんと周り見ないと危ねえぞ」


「いってぇなボケカス!!」


「ボ……」


 ボケカスって俺のことだろうか。

 ぶつかった反動で尻もちをついた少年を哀れに思い、俺は手を差し伸べたが、しかし明かに敵意を以て向けられた視線と暴言にその気が削がれる。


「どこみてやがんだよこのクソガキ!!」


「あ? クソガキだと?」 


「あ? じゃねーだろが、ド低能サル野郎!! 尻にでもメンタマついてんのか!!」


「……」


 このガキ、ああ言えば百倍は言ってきやがるな。


 明かに染めていると思われる短めの茶髪。後ろ髪を女みたいにゴムで纏めて、男のくせにポニーテール。無地の赤い半袖に、小汚ねぇ茶色の短パン。しかもサンダル。右脇には使い古されたサッカーボールを抱えて、よく見りゃランドセルも背負ってない。

 飽馬小学校は俺の進行方向とは逆に位置しているため、この時間はランドセルを背負ったちびっこと頻繁にすれ違う。こうして睨み合っている今も飽馬小の生徒が通り過ぎていくことから、小学校の方も春休みが終わったことは明らかだ。


 察するに、不登校。口の悪さからして、火を見るより明らからに不良だが、ここら辺でこんな育ちの悪そうなガキんちょは見たことが無いし、こんな狂犬みたいなガキがいたらお喋り好きのご近所さんたちの間で噂になっていると思うのだが、聞いたことも無い。


「勝負しろやこのド低能原始人。サッカーか、バスケか、お前に好きな方を選ばせてやるからよ~。ギャヒャヒャ!」


 いずれにせよ、こんな身元不確かな悪魔じみた笑い声のガキに関わらない方が良いだろう。


「ただし、俺様が勝ったら、おまえ、俺様の下僕になりやがれ」


「あーはいはい、後でな、クソガキ。俺はお前と違って暇じゃねぇからよ、これから学校だ」


 浮かない曇り空の下、心機一転、俺は飽馬高校の正門を目指すことにした。


「おーおー。へー。逃げるんかー。俺に負けるのが怖いんかー。よわむしー。ザーコ。なめくじ。童貞」


 しかしこのことは侮辱罪としてあとで警察に通報しておこうと思う。


「お前のかぁちゃんでべそ」


「あぁ?! 今なんつったテメェ!!」







のんびりやり過ぎて最近は全然書いてませんが、今書いてる作品がもうすぐ一区切りつくので、そしたら息抜きがてらこっちに戻ってきます。


エタることはありませんが、それくらい気抜いて好き放題に書いてる作品ってことで大目に見てやってください。


あ、因みにこの作品は「命と引き換えに願いを叶える」とかそーゆー感じのじゃないです。




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