第1話「セルリアのフーディロード」7
砦が変容、いや、変形が正しいか、してあらわれたのは人間の何倍もあろうかという高さの魔導車両だった。
セルリアの貧弱な魔導車両とは違う堅牢なボディ。その上に、乱暴に、しかしある種の形を表現するかのように瓦礫が積み上げられ、威圧感を醸し出していた。
月明かりを受け、メタルのギラつきが浮かび上がる。
まさに、鋼鉄の移動式要塞。
中央上部には玉座があり、他のゴブリンとは頭身も風貌も差をつけた魔族が女性を片手に抱き、鎮座している。
片手には斧を構えているようだ。
こいつが、コマンダータイプ!
コマンダーにもなると、自己顕示欲が高まるのか。
リーダーがここまで前面に出なくてもと思うのだが。
そもそも、俺たちにわかる人間の言葉で話してくれるとか、よくわからないが、十分恐怖は与えてくれて、自警団の連中は動けなくなっている。
そうなんだよな、バトルでもメンタルヘルスは大事。
特に食事で、気分は変わる。
携帯魔食なんかじゃ元気は出ない。
そういうのがわからない、効率主義者のストレイはどうしているだろうか......?
ついつい脱線して、かつての仲間たちを考えてしまったが、今は、目の前の敵をなんとかしないと。
そうだ、同じくらい傲慢なゼッピは、何してる?!
ぼけっとしていて詠唱もなし!
ああああもう! 攻撃されちゃうじゃん!
要塞式魔導車両、いいにくいので【マホトラ・フォートレス】と仮称するが、その上、つまりコマンダーを囲むようにゴブリンたちが5匹。
数は想定よりも少ない、つまり強力なグループではないから、こんな不気味なマシンを隠し、周到に対抗してきているのだろう。
魔族は人間より多くの食糧を必要とする。
セルリアの村から魔導車両で2時間も離れているなら、農作業でもした方がいい気がするのだが、魔族の「略奪本能」なのか。
人間たちの食糧を安定的に奪いたいからこその、作戦だったのだろう。
俺たちの適当な考えよりは、遥かに上行ってるぜ......
ゴブリンたちは何らかの魔導を纏っているのか、滑空して、俺たちの荷台に乗り移ってきた!
ことまでは、ずしんとした重みで俺にもわかったが、バトルの様子までは見えない。
後ろから、武器を合わせる音が聞こえる。
嫌な感じに、ドキドキする。
俺は何もできないから......
恐る恐る窓から横を覗いたところで、戦況はわからない。
前に視線を戻しても、俺を舐めきっているのか、「マホトラ・フォートレス」のコマンダーはニコニコしているだけだ。
「『ピュア・バリア!』」
ゼッピの叫びで空気が変わった!
「うわああああ」
......叫びは人間たち。
横を見る必要はなく、前方に人間とゴブリンが揉みくちゃに転がってくるのが見える。
「えー、魔導師さん、適当すぎっしょ!」
そんな声は届かず。
ゼッピはまだ荷台か......?
この隙にコマンダーが強力な魔導で殲滅するのかと思いきや、そうでもなく、玉座でじっとしている。
もしかして、要塞形態の維持に魔導を使っているのか?
......魔族の作戦もゼッピの作戦もどっちもどっちかもしんない。
なんか偉そうな雰囲気を作りたかったのか。
もしかしたら魔導フェチで、変形を実現してみたかっただけなのかも。
俺らは敵でありオーディエンスか?
チャンスではある。
無意味VS無意味!
こんな田舎で小競り合いつづけてる奴ら、同じレベルでしか争いは成立しない!
だから、仮にも勇者パーティ。ストレイは相手にしなかったのか......
ぐるぐると思考が巡る中、前では、なんとか起き上がったゴブリンたちと自警団が小競り合いをつづけている。
今度は、俺にも見える。
「ゼーッピさん! 今のうちに、前のでかいやつ、攻撃したらどうですかあ?!」
「え、な、何? あ、そうね!」
えー、ぼけっとしてたんかい! なんなんだこいつは!
ようやくゼッピは詠唱を始めたらしく。
俺は、俺にできる支援。
3セット作ったワカモレサンドのうち、1セットは道中で食べてもらい、1セットは荷台で無事かどうか......
しかし念のため、助手席に1セット残してある!
膠着している今のうちに、レベル1魔導をこめた食糧を投げちゃおうか!
って、ワカモレサンドを投げても、あいつら受け取れなさそうだ......
ゴブリンたちの戦闘力も高が知れているのか、剣や棍棒を打ち合わせ、決定打のない様子。
手は埋まっているし、食糧を口でキャッチできるわけでもない。
そもそも、俺はずっと座って見ているだけ、さすがの戦闘力のない、無能。勇者パーティから追放された、何もできない支援役だ......
いやいや、気を取り直して、見守らなくては......そろそろゼッピの魔導が、前の巨大なやつを切り裂くか!
きっと魔導師様、人質だけ無事に残す、イイ感じの魔導があるんだろうな。
なんだか、だらだらとしたバトルを眺めているだけで、俺も疲れてきたぜ。
忙しすぎるのも嫌だけど、自分が仕事せず、見ているだけは、それはそれで辛いのだ。
さあてさてさて、バトルの終焉をきっちり見届けてやろう、と気を取り直すと、ゼッピではない声が鳴り響き、視界が閃光に満たされた!
のおあ!
な、なんじゃ、こりゃあああああああ!
1冊分は書いておりますので、エタりませんが、投稿と続きを書くモチベーションになりますので、ブクマ、感想、レビューお待ちしております!