令和節約コメディ
「九州の田舎から東京に来てもう少しで3年経つんか…。」
春が近づき、わずかに冷える夜の闇の中。築40年のボロアパートの1室でふと呟いた。
気付けば深夜の0時をとっくのとうに過ぎていた。
AIスピーカーから流れるFMラジオの音。足元を暖める暖房器具。そして部屋を照らす蛍光灯。今どれ程の電力を消費しているのだろう。
そう。実は今、節約をしている真っ最中なのだ。
時は少し遡って、1ヶ月前…。
部屋の明るさは最大。もちろん廊下も点けっぱなし。エアコンが暖かい風を吹き、液晶テレビとサブウーファー付のサウンドバーが部屋を賑やかにする。
「アッハッハッハww」
ダイエットコーラの注がれたマグカップを片手に、テレビに映ったお笑い番組に爆笑をする自分。「なんて幸せなんだろう」そんなことはあまり思わなかったが、普段の生活から少し贅沢が過ぎたのかもしれない。
翌日、郵便ポストに届いた電気代の請求明細を手に取った。なんということだ。
請求先を間違えたのか。いや、俺の住所だ。合ってる…。
少し身体が火照り、たじろいだ。
万を超えたのだ。
都内で一人暮らし・仕事で日中は家にいないというこの俺が。
盗電や漏電も疑ったがネットで調べるとその可能性は到底低かった。
何故こんなに請求されるんだ。惨めな気持ちになりながら部屋に戻り、出勤の準備をした。