猫とキミとわたしと夏の終わり
「あ」
とわたしは庭の軒先で呟きました
「にゃあん~?」
―どしたの?
黒猫のあなた
声を上げて空を見上げたままのわたしを見て不思議そうに鳴きます
「あ、あのね。秋の空になってきたんだなーってなんか感動しちゃって」
わたしはあの夏の空を思い出してその変化に、何だかじーんって……きちゃったんです
「にゃん?」
―アイツ何処行った?
黒猫のあなたはもう興味なさげに次の疑問を持ったようです
探すように家の中とかを見ています
そんなキミは畑に行っています
今年の夏は夏の恵みの野菜が沢山取れました
きゅうりは太くて強くて瑞々しくて
ズッキーニも同じく
トマトは宝石のように赤く輝いていましたよ
ナスも紫が美しくて……
食べきれないくらい実りました
そうそう
トマトで無水カレーなんかも作りましたよ
とっても美味しくてリピートして三回もこの夏作ってしまい、キミに
「なんか、トマトカレー多くない?」
と飽きられてしまいました
反省反省、といいつつ来年の夏も何回か作ろうと目論見中なんです
今からですよ?
そんな夏もいつの間にか九月になって段々と秋めいてきました
秋は良いですよね
読書の秋
食欲の秋
スポーツの秋
芸術の秋
そうそう
近くの山に大きな木があるんですよ
イチョウの木
それが黄色くなって黄金の絨毯を作るのが今からの楽しみです
あ、キミが帰ってきました
夏の名残の野菜たちを収穫してきたみたいです
あ~、またトマトカレー食べたくなってきました
「にゃあん……」
―もう止めたほうがいいと思うよ
黒猫のあなた呆れ気味に尻尾を振っています
そんな黒猫のあなたも空を見上げて長く鳴きます
「な~ご、にゃあん……」
―もう、秋なんだなあ……
夏の風じゃなく、秋の風が二人と一匹の間を通り抜けていきました
お読みくださり、ありがとうございました!




