猫とキミとわたしと風邪っぴきの春の終わりの出来事
単刀直入に言いましょう
春の終わりの風邪を引きました
え、失恋という名の風邪かって?
いいえ
正真正銘の風邪です
まあ、キミという存在に
年中恋はしていますけれど
「……ほらまあた熱上がった」
キミが体温計を見て溜め息を付く
「うう~」
わたしはおでこに例の冷え冷えを貼り唸る
「きみが春の終わりの流れ星を見たいって一晩粘るから」
言わんこっちゃないとキミが言う
この辺りの星空は本当に見応えがあって素晴らしかったから
欲が出ちゃったんです
反省しています
「うう~面目ない~」
わたしは反省しきり
「にゃあん?」
―どしたの?
黒猫のあなた
布団の中で唸る私を見て
不思議そうに鳴きます
黒猫のあなたをあんかにしてた筈なのにねぇ
この辺は標高が高くて春の終わりでも冷えるんですよ
とっても
「にゃにゃなあん~」
―だいじょうぶ?
黒猫のあなた心配そうにぽてっと前足をわたしのおでこにタッチ
「にゃ!」
―あつい!
ぴん! と尻尾が途端に立つ黒猫のあなた
おひげの先までぴん! としています
キミと黒猫のあなたが見守る中
わたしは高熱にうなされて夢を見ました
春の星座も終わりに近づき
夏の星座が現れる
わたしはそんな空を浮いて眺めていた
わたしの周りを流星が流れてく
ピンクの桜吹雪の様な星々の
流れ星……
蒼い海の様な星々の
流れ星……
掴むと淡い光を放っていた
「あったかいな」
その言葉で目が覚めた
わたしの隣には布団にくるまったキミと黒猫のあなたが転寝をしています
熱は下がっていました
キミの手元には青い折り鶴と、ピンク色の折り鶴が
いくつもあります
「千羽鶴でも折りたかったのかな」
とわたし
これが夢に出てきたのかも
「ありがとう」
わたしはキミと黒猫のあなたに向かって
微笑んで呟きました
お読みくださり、本当にありがとうございます。
暑い日、急に気温が下がる日とありますが、皆様体調を崩されないように祈っております。




