猫とキミとわたしと紫陽花
梅雨の日々は続いています
今日は、そんな雨もシトシト降る小雨
黒猫のあなたとキミとわたし
いつまでもお家に中ばかりに居ては
ジメジメしてしまうと
ちょっとだけの小雨ならと
お外の様子を見にちょっとそこまでのお散歩です
黒猫のあなたはキミが片手で抱き
もう片手で器用に傘をさしています
「あら」
とわたし
近所のお家の庭に
それは見事な紫陽花が沢山咲いているのを見つけました
ピンクに、紫に、青に白に、薄い色など
それはバリエーション豊かでした
「綺麗ね、紫陽花の花」
ほら、とわたしが指差した先を見て
「ほう……」
とキミも驚いた様に感嘆します
紫陽花の花って雨の中で見ると
さらに綺麗ですね
色とりどりのグラデーションカラーも素敵です
「コロナが落ち着いたら、県外の有名な紫陽花寺のスポットなんか巡りたいわね」
わたしはしみじみと言いました
「いいな、それ」
ぽつりとキミも言います
そんな寂しい雰囲気を感じてか
黒猫のあなたが「にゃあん」と鳴きます
そして
「にゃあ?」
―お寺に紫陽花があるんだー?
ですって
紫陽花が沢山植えられている、有名なお寺の事を"紫陽花寺"って言うのよね
鎌倉の東慶寺・長谷寺に京都の宇治の三室戸寺なんかが、
有名な場所よ
「なーん」
―なある程、にゃあ
と言っていますよ?
「あなたも連れて是非見に行きたいわねー」
とわたしは黒猫のあなたの頭を優しく撫でました
「にゃん……」
―ちょっと、湿気は苦手だけど……
とあなた
「そうね。いつまでも雨は嫌だけれど……」
「恵みの雨もたまには必要だもんな」
「〝慈雨"と言いますしね」
「お、さすが漢検二級の知識だね!」
「からかってるの?」
「にゃあ?」
サーサー、と雨が強くなりました
緑色の傘をさすキミと赤い色の傘をさすわたし
そろそろお家に帰りましょう……
「キミの傘入れて♡」
「……狭いなー」
どこか嬉しそうよ?
キミは
とわたしは狭い一つの傘の下で思いましたと、さ……




