猫とキミとわたしと金木犀
秋の午後
近所を黒猫のあなたとキミとわたしでお散歩中
いつも回るコースをちょっとだけ外れて
緑の多いお庭がある
大きなお屋敷のある洋館の家を見つけました
そこのお庭から、ものすごく甘い香りがします
「にゃーにゃー」
―あま~いにおい!
そしてキミと抱いているわたしを交互に見上げて
「にゃー?」
―なんのにおい?
と問いかけます
「金木犀という花だよ」
「あれが、その花のなっている木」
わたしが教えてあげてキミが指をさす
緑に葉っぱの間から
小さな小さなオレンジ色の花がいくつもいくつも連なって
とても良い香りを辺りに漂わしています
「昔ね……」
とわたしは黒猫のあなたの頭を撫でがら言います
「あの花で香水を作ろうとしたことがあったのよ」
「へー」
「にゃー」
とキミとあなたの反応
わたしはくすっと笑って
「小学生の頃のことよ。瓶に金木犀の花と水を入れたら香水が出来ると思ったのよ」
「で?」
「にゃー?」
―どうなったの?
「もちろん、出来なかったわ。失敗よ」
わたしの子どもの頃の話に、キミは何だか感慨深げ
そして思い付いたように言います
「そう言えば、銀木犀もあるんだよ」
「へー、知らなかった」
驚くわたし
銀木犀は、小さい白い花を咲かすんだって
良い香りは金木犀と変わらないみたい
金木犀に銀木犀
良い香りは、人々にこの季節が来たことを知らせます
もうそんな季節なのですねって……
「さあ、行こうか」
「秋の日暮れも早いもんね」
金木犀の香りに見送られて、黒猫のあなたとキミとわたし
今日の晩ご飯は、何にしようかと相談しました
「にゃー!」
「お魚ね」
「お前は猫缶」
不貞腐れのあなたにキミとわたしは笑います
帰った黒猫のあなたから、金木犀の残り香がふわりと香りました……
ちなみに、銀木犀の花、見たことある人いますか?