猫とキミとわたしとヒマワリ
「ミーン ミーン」
今日は早起き出来ました
黒猫のあなたとキミとわたしで
ラジオ体操前に、朝のお散歩です
朝はまだ早いので蝉の騒がしさも、まだ静かなオーケストラです
ガードレールの側に
ヒマワリが五本並んで咲いているのを発見したのは
わたしでした
ふと、昔のことがよみがえります
これと似た風景を
隣のキミと見たのだったね
「キミは覚えている?」
とわたし
「さあ」
と惚けるキミ
でも、キミの顔、少し赤いよ
五本のヒマワリの全長は二メートルより少し低いくらい…かな
キミの背よりも少し高いね
するとキミ、ムッとして
「これくらい大きなカッコイイ男になって見せる!」
「これ以上大きくなれないよ。もう大人だもん」
とわたし
笑って言う
大輪のヒマワリ
お日様の方を向いて立っている
「にゃあー」
―おおきいねー
と黒猫のあなた
キミの腕の中でまだ寝ていたみたいだけど
やっと起きたかな?
「にゃあ?」
―ヒマワリの花って、どうしてお日様の方を向いているの?
「それはね……」
とわたし
お日様に恋した水の精のお話
黒猫のあなたにしてみる
「にゃん……」
―ちょっと悲しい……
と黒猫のあなた
「悲しい……かな?」
とわたし
「悲しいかもしれないね」
とキミ
「でも……」
とわたし
恋して
恋焦がれて
想いが強すぎて
お花になってしまうお話はいくつか花物語にはあります
「でも……。“想い”が“お花”になれるなら素敵かな」
とわたし
「きみが花になったなら、永遠に枯れないように育ててみせるよ」
「うん……」
顔が真っ赤なわたし
頷く以外、何も言えません
「あなたなら大丈夫かな、きっと」
「きっとって、ひどいな」
朝の空気に、わたしとキミの笑い声が溶けてゆく
「にゃあ……」
―ヒマワリって甘いお花なんだなぁ……
しっぽゆらゆらゆら……
黒猫のあなたがキミの腕の中で
しっぽを揺らす
さあ、ラジオ体操の広場に行こうか―