僕と黒騎士(美少女)の気持ちのいい朝 ~のほほんとしたひと時~
チュンチュン、チュンチュン、とスズメ達の囀りが響き渡る。
春、晴天。本日も気持ちいい朝を迎えた。
ちょっとだけ気持ちよさに負けて惰眠を貪った僕だが、結構時間が経ったので身体を起こすことにした。
「うーんっ」
ググッ、と背筋を伸ばし、腕を震わせながら全身の筋肉を伸ばす。
ああ、今日も一日が始まる。月曜日だから仕事だ。
ちょっとだけ憂いた気持ちになりながら、窓に目をやった。
広がるは見慣れた田畑に真っ白な雪。そうか、夜に雪が振ったみたいだ。だからちょっと肌寒いのか。
「え? 雪?」
思わず二度見をした。
よくよく見ると雪が田畑に被さっている。
確かに北側にある地方だが、いくらなんでも四月に雪が積もるなんてありえないだろ。
あれ、雪を見たら段々と寒くなってきたぞ。
「へっくちっ」
うぅ、寒い。とにかくストーブをつけよう。
そう思い、部屋に置いているストーブの電源をつけようとベッドから降りた。
直後、部屋が真っ暗になる。
なんだ、と思い顔を上げると僕の前の前に、ゴツくて黒い鎧を着た何かがいた。
『クハハッ、ついに見つけたぞ! 異次元の勇者よ、我が手で屠ってくれるわ!』
響き渡る高笑い。
ああ、寝ている両親が怒り狂うじゃないか。思わずどうでもいいことに気を使って注意をしようとしたその時だった。
『ぶあっくしょん!』
黒い鎧を着た何かが、盛大なくしゃみをした。
よく見ると身体を小刻みに震わせ、自分の身体を抱きしめている。
「寒い?」
『うん』
「コタツ入る?」
『うん』
ひとまず鎧を脱いでもらい、ストーブをつけてぬっくぬくしてもらった。
「はぁー、あったかぁー」
鎧を脱いでもらったのだが、これまた驚きだった。
白い肌に白い髪、赤い瞳と勝ち気な顔がちょっと微笑ましい女の子。
胸は少し控えめ、小柄だけど女の子らしい体型をした可憐な女の子。
そんな人が、コタツでのほほんとしている。
「みかん、食べるか?」
「敵に情けは受けん! だが、いただこう」
「お茶菓子とか持ってくるか?」
「頼む。この魔力から這い出ることができん!」
ああ、コタツはとんでもない魔力があるからな。
ブラックホールだよ、ホント。
「なおふみー、あんた朝ごはん食べたー」
いろいろと取りに行こうとしたその瞬間だった。
親が音もなしにフスマを開けやがった。
コタツに入っている自称〈魔王軍幹部〉の美少女が目に入るや否や、目を点とする。
だが、何かを勘違いしたのか母親が肩を叩いた。
「お楽しみ中、ごめんね」
「楽しんでねぇーよ」
「え? あれでしょ? コタツでのぼせたあとしっぽりと――」
「しっぽりするか! アンタ僕をなんだと思っているんだよ!」
それからは母親も加わり、コタツでのほほんとする。
なぜか弾む会話に、僕は不思議な感覚を抱いた。
ちなみに、父親は朝ごはんをどうしたのかは知らない。