導入
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鳴り響く轟音。
業火に街は焼かれ。
建物が崩れ落ちてゆく。
人々は悲鳴をあげて逃げる者、
その場で脱力し、立ち尽くしている者、
大切な人をかばいながら逃げる者、
様々な人間がいる中ですべての人間に等しく絶望という現実を突きつけていた。
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「おい梅森、また変な夢を見たのか。こんな意味の分からん話を聞いてやるのは私くらいだぞ」
彼女は友田。
僕の幼馴染で慣れ親しんだ自分には言葉使いが荒いが、僕の夢の話を聞いてくれる物好きだ。
「そうだよ。内容が内容だから自分の心に刺さってしまって落ち込んでいるんだ」
僕は部室の机に突っ伏しながら答えた。
「所詮夢は夢、現実じゃないんだから深く考える者じゃないって。気にするなよ。」
友田はポケットからスマートフォンを取り出し視線を画面に落としながら言った。
僕は気が付くとまた眠りに落ちていた。
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鳴り響く轟音。
業火に街は焼かれ。
建物が崩れ落ちてゆく。
人々は悲鳴をあげて逃げる者、
その場で脱力し、立ち尽くしている者、
家族、大切な人をかばいながら逃げる者、
様々な人間がいる中ですべての人間に等しく絶望という現実を突きつけていた。
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まただ。またあの夢だ。
同じ音、同じ匂い、同じ景色が広がる。
また同じ気持ちを感じるのかと嫌々夢を見ていると、ふと脱力して立ち尽くしている人の顔が目に入った。
友田だった。
一度見た時とはまた違う嫌な気持ちに陥る。
夢だということはわかっているのに、妙に現実感が拭い切れない。
呼吸を我慢している時のような苦しさを覚えた僕は息継ぎをするようにハッと僕は机から顔を上げた。
「また寝てたのかよ。その様子だとまた変な夢か?」
目の前で友田が別の友人とラインをしていた。
僕はなぜかホッとして別の友達と会うという友田と別れ帰路についた。
僕の夢に友田が登場したことは言うことができなかった。
もしそのことを言ってしまったら本当に夢の通りのことが起きてしまうようで怖かった。
帰宅した僕はできるだけ夢のことを思い出さないようにいつもと同じように夜ご飯を食べ、お風呂に入り、勉強をして寝床に入った。
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鳴り響く轟音。
業火に街は焼かれ。
建物が崩れ落ちてゆく。
様々な人間がいる中ですべての人間に等しく絶望という現実を突きつけている中で
その場で脱力し、立ち尽くしている友田。
視線の先には崩れかけていた建物が倒れ、友田の方向へ瓦礫が榴弾の破片のように向かっている。
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まただ。またあの夢だ。今度は先の光景が広がった。
僕は夕方見た夢の続きであることに嫌気を覚えながら目を覚ました。
辺りを見回すとカーテンの隙間から淡い青色の光が差し、そとの小鳥が朝を知らせるようにさえずっていた。
僕の中のどこかで夢に見た光景が現実になるのではないだろうかという恐怖が渦巻いていた。