プレゼント
バレンタインの日にポケセンと一緒になった。
僕の方が先に控え室に入って、ポケセンは少し後に来た。こんな事は珍しい。だいたいポケセンの方が先に来てるのに。
ポケセンは手に大きな荷物を持って入って来たが何かすぐ分かった。ケーキである。
「藤本君、今日は悪いんですが冷蔵庫独占させて下さい」
「いいですよ」
控え室には冷蔵庫があって、自由に使って良い。
ポケセンは冷蔵庫にケーキを入れた後、僕に向かって
「バレンタインに母親にケーキ買って来たんですよ」
と言った。ハートフルな話だが、見た目が柔道部でイカツイ感じのポケセンが言うと笑いそうになる。
絶対そんなんするタイプちゃうやんw
見た目だけやったら「今日バレンタインやったっけ?」って無頓着そうやんw
って言うか、予約して帰り取りに行ったらいいやんw
何でバイト行く前に買ったんや。荷物なるのにw
笑いそうになるも耐えた。荷物なるがやってる事は親孝行やったので。
ケーキの種類も教えてくれた。
「リンゴのショートケーキなんですよ」
「へぇ。イチゴ違うんですね」
「焼きリンゴとカスタードクリームが入ったケーキでホールで買って来たんですよ。オシャレですよ。ちょっと見ますか?」
「見ます」……と言った方が良い気がした。
ポケセンは冷蔵庫から出して箱の上から見せてくれた。
確かにオシャレで美味そうやけど、これリンゴのタルトやん。
リンゴのショートケーキちゃうやんw
おかんにリンゴのショートケーキって出すつもりやったんか?
絶対リンゴのショートケーキって名前で売ってないやんw
商品名『タルトタタン』か『リンゴのタルト』やろ
大事なトコ間違ってるやんw
って言うかバレンタインって女から男ちゃうんか?
「フフッw」…笑ってしまった
「何がおかしいんですか!笑うんやったら藤本君も何か買ってったらどうですか!」
怒られた
笑ったから負け
ポケセンに触発され帰りに『りくろーおじさんのチーズケーキ』買って帰った。