43話 秘密の会談
不死の森の襲撃から魔族も人間もだいぶ痛手を負って、数年がたった。
いまでは、アリスもリリスも正式なハーデスのメンバーとして一緒に活躍している。
俺はと言えば、魔族と人間の和平のために行動をしている。
もちろん秘密裏に仮面をつけて、勇者とあったり、魔王とあったりしている。
そして分かったことは、魔王も異世界人らしい。
俺は、二人を会わせることにした。
理由は話しをしている内に2人が異世界のニホン人という同じ世界の住人という事が分かったからだ。
そのことを2人に話したら、是非会ってみたいという事になったのだ。
場所は不死の森のとある一角で行われた。
「約束通り2人とも来たな」
「そりゃ来るさ、勇者が同じ日本人って聞けばな」
「こちらも同じだ。数年前は顔も会わせていなかったしな」
と、異世界の魔王と勇者。
2人は最初こそぎこちなかったが、次第に2人は、げーむ?やら、まんが、あにめ?とやらの話しで盛り上がっていた。
俺にはさっぱりだが、同じ異世界人同士わかり合えることがあるのだろう。
「ゴホンッ」
と、俺はわざと咳払いし、話しを中断させる。
「盛り上がっているところすまないが、そろそろ本題に入っても?」
「ああ、すまねえな。仮面の」
「ああ、つい盛り上がっちまったよ」
と魔王と勇者。
「でだ、魔王としては和平に賛成だ。あの一件いらい、元老院のジジイどもも大人しいもんさ。それに仮面のお前がくれた情報の冥王が眠ってるって情報依頼、不死の森には接近が禁止された」
「それは勇者である俺も和平には賛成だ。人間側も不死の森の眠れる獅子を下手に起こしたくないみたいだしな。でだ、俺達はお前を通じて、こうしてわざわざ、抜け出してきている。そろそろお前さんも俺達を信用して仮面を取ってくれてもいんじゃねえか。もちろん秘密は漏らさない」
確かにこいつらとは、ここ数年で大分、打ち解けてきた。
そろそろ仮面を取っても良い頃合いかもしれない。
「秘密は守れよ。じゃなければ、俺は活動ができなくなる。」
「なんだ、墓守以外にもなにか、仕事でもしてんのかよ」
「秘密は漏らさないと誓う、この3人だけの秘密にするさ」
と、魔王と勇者。
俺は、仮面をそっと外す。
最初に反応したのは、異世界の勇者だった。
「なっ!? グレイさんが仮面の墓守の正体!?」
「グレイって言ったらあのハーデスのグレイか!? こっちにも名前は届いてる。ネクロマンサーの力を使い、数多のダンジョンを制覇してるSランクの中でもトップだって、噂だ。」
「その通り、俺が仮面の墓守だ」
勇者が知っているのは、何度か稽古をつけた事があるし、王城でも何度も会っているからだ。
しかし、魔族側でも有名なのか?
「なるほどな、ネクロマンサーの力を使い、この不死の森で墓守をできるわけだ」
と、魔王。
「俺も納得だ。まさか身内のネクロマンサーが墓守とは思わなかった。確かにこれは秘密にしないと、いけないな」
と、勇者。
「まだ、驚くのは早いぞ。これから2人を不死の森の先に連れて行く。そこで真実を見極めてくれ」
俺は2人を連れて不死の森を抜けて冥王の町を目指す。
「なんだあの化け物、首が3つってケルベロスがいるじゃないか!?」
「まだ、あんな化け物が控えていたのかよ、まさに地獄の番犬だな」
と、魔王と勇者。
「ケルベロスは最後の門番だな、この先に真実がある」
そして、冥王の町に到着した。
「こんなところに町が……」
と、魔王。
「ここが冥王の町だ。おれが本当に守りたかったものがこの町だ。ここでは、人間と魔族が共に生き生活している」
「なっ!? 魔族と人間が一緒に生活しているのか!?」
と、勇者。
「その通りだ。だからこそ和平が可能だと考えた。ここは500年前の冥王が作った町だ。今だに争いを続ける今の人間と魔族もこの町の住人のようになって欲しい」
俺は、町の中を案内する。
2人は感嘆していた。
まあ、いざという時に要塞かしているが。
「ところで、さっきから気になっているんだが……」
「ああ、俺も気になっていることがある」
と、魔王と勇者。
「なんだ?」
「「なんで、グレイが冥王様とよばれているんだ!?」」
「そういえば、説明していなかったな。俺が次期冥王になるからだ」
「「それを早く言え‼」」
「道理で強いわけだ。魔族の中でも冥王といえば、最強の一角と言われている。俺みたいない異世界から来た魔王より強いのもなっとくだ」
「こっちも納得だよ。道理でネクロマンサーの力を使えるわけだ。ってことは、ハーデスのメンバーはそのことを知っているのか!?」
「ああ、もちろん知っている。そして、お前たちが探している現地の魔王と勇者もこの町にすんでいるぞ」
「なんだって!? 魔王がいるのか!? 是非こちらで保護しようじゃないか?魔族側としては、好待遇で出向抱えるように、しよう。これで俺の肩の荷もおりる」
「勇者がいるのか!? こちらも同じだ。勇者が見つかれば、より国内が安定するだろうし、俺も、肩の荷が下りる」
「残念だが、2人を渡すことは、できない」
「何故だ!? 魔王と勇者が両国に2人もそろえば、より国としても盤石になる。なにが問題なんだ!?」
「この町は、魔族と人間が暮らす町だ。そして2人とも魔族と人間のハーフなんだ。いま、そのことが公になれば、2人は受け入れられないだろう」
「確かにハーフとなると元老院のジジイどもも難癖つけてきそうだ。お互いがいがみ合っている今の状況では、和平は成功しても、本来の勇者と魔王がハーフであれば、うまくいけば架け橋になるが、今はまだそんな状態じゃないな」
と、異世界の魔王。
「それにこの町だって、受け入れられるか分からない状態だな。俺は、カウス王に早急に和平案をまとめるように提案する。グレイさんもその時はSランクの冒険者として、後押ししてくれよ。それで実際にこの世界の魔王と勇者に会わしてくれるのか?」
と、異世界の勇者。
「ああ、もちろんだ。リリス、アリス」
俺は2人を呼んだ。
またもや、最初に反応したのは、異世界の勇者だ。
「おいおい、2人ともハーデスのメンバーじゃないか!?」
「何!? そうなのか?」
「ああ、最近ハーデスに加入した、2人だ。道理でこの2人も強いはずだよ、まったく」
「で、どちらが魔王で、どちらが勇者なのか紹介してもらえるか?」
「私はリリス、この世界の魔王として、生まれました」
「私はアリス、この世界の勇者として、生まれました」
「この少女たちが、魔王と勇者という証拠は?」
2人は、自分の手の甲の紋章をみせた。
「確かに、魔王と勇者の紋章だな。そして2人ともハーフでここで育ったのか。それを次期冥王のグレイが守っていたわけか」
と、異世界の魔王。
「確かにこれは、トップシークレットだな。しばらくは俺達の秘密にしていた方が、良さそうだな」
と、異世界の勇者。
「この2人の事は慎重に事を運ぶ必要がある。ことと次第によってはずっと伏せていた方が、いいかもしれねえ。余計な混乱を招く恐れもあるしな」
と、異世界の魔王。
「分かってくれて、助かる。まずは魔族と人間の和平が先だ」
「わかっている。すまないが、グレイには仮面をつけて、しばらくは、冥王の墓守として、魔族領にも来てもらうことになる。それは構わないよな?」
「もちろんだ」
こうして第1回の冥王と魔王と勇者の秘密の会談は終わった。