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42話 VS勇者

 壊滅状態になった、魔王が率いる軍勢は2度と不死の森に近づかないように約束し、撤退していった。

 次は勇者の方だ。

 俺は、念話でファミルと連絡を取る。


 『ファミル、魔王が率いる軍勢は撤退した。勇者の方はどうなっている?』


 『流石は、冥王様。偽の魔王軍を撤退に追い込みましたか。偽勇者の方はキリンジが何とか抑え込んでいるようです』


 『わかった、俺もキリンジの方に向かう』


 俺は黒い配下達を亜空間にしまい、キリンジのもとへと急ぐ。

 配下が使えない分、人間側の軍勢の方が手間取りそうだ。

 人間側の軍勢につくと、アンデッドとキリンジ、ゴズとメズが奮闘していた。


 「遅くなった、キリンジ」


 「まったくですよ、あの偽勇者なかなかに手強いですよ。それと、私の刀にもダークソウルをエンチャントしてくれまんか、人間の軍団の数が多すぎです、配下達は使えないんですよね?」

 

 「悪いが、配下達は使えない、人間の王にばれてしまうからな。それとダークソウル! これでキリンジの刀にもアンデッドが生み出せる」


 「これで少しは楽になるといんですがね」


 そう言いながら、俺達は雑魚を斬り捨てアンデッドに変えていく。


 「なんだ変なのがまた、1匹増えたな、鬼の次は仮面やろうか。面白い2人まとめて成仏させてやるよ」


 と異世界の勇者。


 俺とキリンジが斬り捨てた雑魚がアンデッドにかわると、少なからず人間達に動揺が走る。


 「斬られるとアンデッドになるのか、厄介な奴が現れたな。しかし俺の敵じゃねえ」


 異世界の勇者がそう言うと、


 「くらえ、シャインニングブレード!」


 光の剣が現れアンデッド達をいとも簡単に斬り捨てて、いく。

 なるほど、流石は異世界の勇者というわけか、すでに剣に光属性の魔法をエンチャントして、的確にアンデッドに有効な攻撃を仕掛けてくる。

 これは時間がかかりそうだ。

 他の雑兵はともかく異世界の勇者はそれなりに脅威になりそうだ。


 「キリンジ、ゴズとメズとで雑兵を任せる。俺は異世界の勇者の相手をする」


 「お気をつけてグレイ様」


 俺は、異世界の勇者の前に立ちはだかる。


 「今度は、仮面野郎が相手か、楽しませてくれよ!」


 異世界の勇者は大分、バトルジャンキーのようだ。

 俺は、無言で斬りかかる。

 が光りの剣で受け止められてしまう。

 まずは小手調べとして数回打ち合い、実力を図る。

 実力的にはゴズとメズぐらいだろうか、ただし、人間側の数が多いことが難点だな。


 俺は、一旦距離をとり、魔法を多重展開して数を減らす。

 

 「アイスフロスト、アイスストーム、トルネード」


 相手の動きを阻害し、氷の刃と風の刃で敵を切り裂く。

 

 「なっ、同時に魔法を展開したのか!? ありえねえ!? それも3つもだと!?」


 「異世界の勇者よ、魔王軍は2度とこの森に近寄らないと約束し、撤退していった。すでにそちらの戦力も落ちてきている。この不死の森は死者の物だ。即刻立ち去れ」


 「そうはいかねえ、なんかやばいもんでも隠しているんだろ?それを頂くまでは帰れねえな!」


 「ここには何もない、我らはただ、静かに時を過ごしたいだけだ。2度とこの森に近寄らぬと約束し即刻ここを立ち去れ」


 「だからそれが信じらねえんだよ、だったら何でお前のような強者が出てくる?」


 「誰でも寝床に勝手に入られ喜ぶ奴がいると思うか? しかも軍団でだ。こちらもそれそうの歓迎をせねばなるまい」


 「しかし、この目で見るまでは信じられねえな。それにアンデッドは生者を襲う」


 「この不死の森のアンデッド達は、この森からは出ない。それはそちらも承知のはずだ。ダンジョンとは違う。そちらが先に仕掛けてきたのだ、反撃ぐらいはする」


 「正論を並べているようだが、やはり、アンデッドは悪だ。その証拠に今も俺たちの部隊を攻撃している」


 「先ほども言ったが、2度と近寄らないなら、これ以上の追撃はしない」


 俺は、アンデッド達に攻撃をやめさせ、後ろに下がらせる。


 「なっ、マジかよ。アンデッドが動きを止めやがった。お前は一体何者だ?」


 「ここは、冥王様が眠る土地。これ以上眠りを妨げるな」


 「文献に残っている眠れるものってのは冥王のことか?」


 「人間達が何を書き残しているかは、知らん。だがここは、古来より冥王様の領土だ」


 「本当に信じていいのか?」


 「撤退するなら、追撃はせぬ」


 すると、一人の指揮官が言う。


 「奴の言う事を信じるのですか、勇者様」


 「あいつは明らかに俺より強い。さっきの打ち合いでこちらは本気だったが、奴には余裕があった。これ以上の損害は確かに認められねえ。このまま戦えば、全滅もあり得る」


 なかなかに話しのわかる勇者のようだ。


 「仮面の墓守さんよ、本当に魔族たちは撤退したのか?」


 「だから私が此処にいる」


 「そういう事か。あんたが遅れて登場したのは、魔族を相手にしていたからか。わかった、俺達も撤退する。カウス王にも手を出さないように進言もしよう。だから追撃はしないでくれよ」


 「撤退するならば、追撃はしない」


 人間側の軍勢も撤退をしていく。


 俺は約束通りにアンデッド達に追撃はさせなかった。


 魔族も人間も完全に撤退を確認した俺は、冥王の町に戻って来ていた。


 「流石冥王様でございます。見事に両軍とも撃退に成功しましたな」


 と、ファミル。


 「ああ、魔族も2度と来ないだろし、人間側も俺の話しを信じてくれたみたいで助かったよ。キリンジもゴズとメズもよくやってくれた」


 「ありがとうございます、グレイ様。しかしこちらも大分あの偽勇者に手勢のアンデッド達がやられてしまいましたがね」


 と、キリンジ。


 「それに関しては異世界の勇者と言えど甘くみていたわけではないが、敵ながら流石としか言えないな。町の方はどうだ、住民達に混乱は起きなかったか?」


 「今回ばかりは、住民達も覚悟決めて戦う気でいたようですが、何事もなく済みましたので、混乱も起きておりません」


 と、ファミル。


 町に入ると住人達がみんな笑顔で出迎えてくれた。


 「冥王様、今度、何かあった時はあたしたちも戦います」


 「私もです、待っているだけがこんなに辛いなんて思いませんでした。次こそは役に立てるようなってみせます!」


 とリリスとアリス。


 この2人が戦わずに済む世界が一番いいはずだ。


 「ありがとう、2人とも。今は、その気持ちだけで十分だよ。だけど、2人がもっと強くならないと俺達と肩を並べて戦うには早すぎる」


 「じゃあ、もっと強くなります!ミコさんやサーラさんのように!」


 「私ももっと強くなりたい!私達もハーデスの準メンバーですから!」


 しかし、リリスとアリスの意思は固いようだ。

 こうなれば、何かあったときにでも対処できるほど強くなってもらうしかない。

 ミコとサーラも2人のハーデス入りを認めていることだしな。

 後3年で2人はどことまで、強くなるだろうか?

 魔王と勇者がパーティーメンバーになるなんてな。


 先の未来も大事だが、今は魔族と人間の問題を何とかしたい。

 一時的にとはいえ、不死の森を攻めるために、お互いに不干渉条約を結んだのだ。

 このまま、和平への道を模索できないだろうか?


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